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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第一章

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29話 祝杯

「あらん? ヴァルカンちゃんにアリアちゃんじゃないの〜、おかえりなさ〜いん♪」


 ミノタウロスの討伐成功後――


 ギルドへと戻ってきたアリアたちへ、アーナルドが声をかける。

 その際に、バチンッとウィンクを飛ばし、気色の悪さでタマは内心、(おえっ)と悪態を吐く。


「アナさん、さっそくだけど鑑定を頼むにゃん。よっと……」


 ヴァルカンは背負っていたバックパックをズシンとおろすと、中身を取り出しカウンターへと並べていく。

 腕に脚……解体、そして血抜きをされたミノタウロスのもの。

 そして、ローパーの触手やゴブリンの耳などだ。


 ミノタウロスのツノや爪は剥いである。

 ヴァルカンが自分の店の商品の加工に使うからだ。


「あら、この傷……ヴァルカンちゃんの攻撃によるものじゃないわね?」

「んにゃあ。それはアリアちゃんの新しいスキルでつけた傷にゃん。実はクエスト中に派生スキルに目覚めたにゃ」

「まぁ、派生スキルに? すごいじゃない。やったわねアリアちゃん♪」


 ヴァルカンの話を聞き、アーナルドが再びウィンクを飛ばす。

 アリアはそれに笑顔で応えた。


「それじゃあ、鑑定してくるからいつもどおり時間を潰しててちょうだいな」

「了解にゃ! アリアちゃん、この後は何か予定はあるにゃ?」

「いえ、特には。強いて言うならタマとにゃんにゃ……こほんっ、夕飯の買い出しくらいでしょうか?」


(ああ……これは、あの噂(・・・)は本当っぽいにゃね……)


 言い淀むアリアに。

 ヴァルカンは近頃耳にした噂を思い出す。

 実はアリアの趣味は……というアレだ。


 だが仮にそうだったとして、ヴァルカンにアリアを非難するつもりは毛頭ない。

 そもそも、彼女自身が先祖に虎の血を引いている亜人なのだし。

 稀ではあるが、あえて同じ人間ではなく、異種交配可能な動物と子を儲ける者もいるのだ。


「それならせっかくパーティを組んだんだから、打ち上げも兼ねて酒場で一緒に軽く飲まにゃい? 今日は店も休業日だし、ヒマなのにゃ」

「あ、いいですね、それ」


 ヴァルカンの提案を聞き、アリアのエルフ耳がぴこぴこと上下する。

 ギルドの酒場の料理はアリアのお気に入りだし、誰かと一緒であれば、1人の時みたいにナンパで食事どころではない……ということにもならなそうだから嬉しいのだ。


「んじゃ、さっそくいくにゃん」





「ん〜〜! やっぱりここのお料理は美味しいです!」

「んにゃあ。ほんと、ギルドの料理とは思えない出来にゃ〜!」


 運ばれてきた料理の品々を口にし、アリアもヴァルカンも喜びの声を上げる。

 タマもアリアの手もとで無心に料理にかぶりついている。


 メニューは主に海鮮類が多い。

 至るところに水路が張り巡らされたこの都市は、近くに海がある。

 ゆえに新鮮な魚介が食卓に並ぶことが多いのだ。


 白身魚のカルパッチョ、いくつもの魚介を使ったブイヤベース、貝類のスープパスタ……どれも実に美味。


 そんな中でも、アリアたちが特に気に入っているのが、“ホバール海老”の姿焼だ。

 ホバール海老とは、この地域の名産の海老のことだ。大きさは成長すれば大人の腕ほどにもなり、形は地球で言うところのロブスターに近い。ただ少し違うのは、色は青で少々エッジの利いたフォルムをしているところだ。


 そして、味は芳醇。独特の甘さがあり、身はプリプリとした歯ごたえがある。

 そんなホバール海老をこの酒場では半身に切り分け、グリルして提供している。

 一緒にバターソースやチリソース、ガーリックソースもついてくるので、色々な楽しみ方ができるのだ。


 余談だが――料理が運ばれてきた時に、アリアがバターソースとタマを交互に見て、若干息を荒くしていたのだが……タマもヴァルカンも、気づかなかったことにした。


(それにしても……実に良い風景だ)


 アリアにフォークで「あ〜ん」されながら、タマは思う。


 清楚系美少女エルフのアリア。

 活発系ケモ耳美少女のヴァルカン。


 以前にも思ったことだが、この2人が仲睦まじくしていると、それだけで絵になる。

 加えて今日は2人ともアルコールが入り、頬が紅潮していて可愛さ倍増だ。


 アリアが気にしていたナンパも今日は声がかからない。

 ヴァルカンという一緒に飲む相手がいるというのもあるが、近づいてくる男どもを見ると、タマがテーブルの上から威嚇するからだ。

 先日のカスマンとの決闘で、タマの秘めた力は噂になっていた。

 触らぬ神になんとやら……というヤツだ。


「んにゃ〜なんだか気分がよくなってきちゃったにゃ! もう一杯飲んじゃうにゃん♪」

「ふふ〜、ではわたしも……」


 ヴァルカンもアリアも酒を追加する。


(どうやら、今夜は長くなりそうだな……)


 酒を追加しながら、愛おしげに自分の頭を撫でてくるアリアに。

 タマは内心、苦笑する。

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