211話 夜遊び?
翌早朝――
う、うぅ……朝か……って、む?
何やら柔らかな感触が……
「おはようございます。タマ様♡」
――エクシア? なぜ我輩はお前に抱かれて……
「タマ様、覚えてらっしゃらないのですか? まぁ、昨夜はずいぶんと飲まれていましたし、当然でしょうか」
お、思い出したぞ!
あまりにも牡蠣が美味くて気分が乗ってきてしまい、《収納》スキルに入れていたマタタビ酒を飲んで……
――そのまま気持ちよく寝てしまったわけであるか……。
「おお! 主人が起きたぞ!」
む、ホムラたちがわらわらと近づいてきた。
可愛い眷属、相手をしてやりたいところだが、すまぬ!
――ご主人が目覚める前に帰らねば! また近いうちに来る!
「かしこまりました。タマ様。とても可愛い寝顔と……ふふっ、色々と堪能させていただきありがとうございました♡」
色々ってなんだ、エクシア!?
いや、そんなことを気にしている場合ではない!
――《飛翔》スキル発動!
空に舞い上がる我輩をホムラたちが手を振って見送っておる。
後ろ髪引かれる思い出はあるが、今はご主人のもとに迅速に戻らねば……!
◆
とりあえず家にたどり着いたぞ。
窓からこっそり中の様子を……
よし、どうやらご主人含め誰も起きていないようだ。
忍び足でベッドの上へ。
このまま何事もなかったかのようにご主人の横で丸くなって寝たフリを……
「タマ、夜遊びは楽しかったですか?」
ひっ!
ま、まさか……
恐る恐る後ろを振り返ると、ジト目でこちらをみるご主人が……!
ま、まずい! 目覚めておったのか!
「それに他の女の匂い……。タマ、どうやら本当に夜遊びしていたようですね??」
ほ、他の女の匂い!?
あ! エクシアに抱かれて寝ていたのを忘れておった!
ご主人の瞳がどんどんと冷たいものに!
「にゃ、にゃ〜……!!」
ち、違うのである、ご主人!
確かに夜遊びというか……
配下と牡蠣を食べながら酒を楽しみはしたが、決してやましいことはしていないのである!
「む〜、まぁその様子では本当にやましいことをしていたわけではないようですね?」
よ、よかった!
わかってもらえたのである!
「それはそれとして、子猫ちゃんなのに夜遊びなんて……めっ! ですからね?」
うお!?
一瞬のうちにご主人の豊かな膨らみの間に仕舞われてしまった。
相変わらず安心する、良い匂いだ。
いかん。
まだ酒が残っておったのか、また睡魔が……
「ふふっ、眠そうですね。夜遊びなんてするからですよ? まったく……ちゅっ♡ です」
むぅ……?
今何か額に柔らかな感触がしたような?
しかし、もう眠気が限界である……
◆
ふむ……
さすがは二度寝、スッキリとした目覚めである。
しかし、ご主人を放っておいて朝帰りをしてしまうとは……
騎士としてあるまじき行為であった。
本当に反省をせねば……。
ちょうどそんなタイミングでご主人も目覚め始めたようだ。
どうやらシャロはすでに起きていたようで、一階の方からベーコンなどが焼けるいい香りが漂ってくる。
「肉の匂いなのだ!」
ガバッ! とステラが起き上がる。
おお、偉いではないか。
朝食にありつくべく一階に駆けて行くと思ったらリリとフェリを起こしてやっているぞ。
◆
「おはようございます。ご主人様、みな様」
料理をテーブルへと運びながら我輩たちに頭を下げるシャロ。
「にゃあ〜!」
「おはようございます。シャロさん」
挨拶を交わしテーブルの上へと。
ほう、今日もどれも美味そうだ。
さっそくいただくとしよう。
このあとはギルドへ行き久しぶりのクエストだ。
戦いの前にしっかりと腹ごしらえである。
「そういえば、シャロさんの装備を用意しなければですね。クエストに同行してくれるという話ですし」
「アリア様、それでしたら大丈夫です。とても限定的ですが私は収納系のスキルを持っておりまして、装備はその中に入っております」
なんと、シャロもそのようなスキルを持っておるのか。
さすがは元Sランク冒険者である。
家事全般はお手のもの、気遣いもできて、強く、有用なスキルも所持……
非の打ち所がないのでは?
「ふふ……っ♡」
そんなことを考えてシャロを見ていたら、妖艶な笑みを浮かべ舌なめずりを……
また何か我輩に対して良からぬ感情を抱いておるな?
非の打ち所――どうやらあったようである……。
それはさておき。
今日も美味い朝食だった。
特にシャロお手製のドレッシングを使ったサラダが見事である。
リリとフェリも野菜がそこまで得意ではなかったはずだが、美味さのあまりペロリだったな。
相変わらずステラは肉類ばかり食べておったが。
食べ終わったところで出かける準備をば。
皆それぞれいつもの装備を見に着けていく、のだが……
む? シャロが着替える様子がないぞ。
どうしたというのだ?
「不思議そうな顔をしていますね、ご主人様?」
どうやらシャロが我輩の疑問に何となく気づいたようだ。
「にゃあ〜?」
お前は着替えないのか?
「もしかして……私が装備を見に着けないことを気にしてらっしゃいますか?」
お、すごいな。
そこまで気づくとは。
「私はご主人様に仕えるメイド。このメイド服こそが戦闘服なのです」
なに!? まさかその格好で戦うつもりなのか?
「ご心配はいりません。自己防御力強化系のスキルは使用しますので。それに、魔王クラスの攻撃などの前には普通の装備では役に立ちませんからね」
さ、さすがは元Sランク冒険者……
防御する前提となる攻撃の規模が桁違いである。




