197話 絆と信頼故に
駆け出すヴァルカン。
どうやらシエルの援護に回ろうとしたようだが、そこに邪魔が入る。
「《ヴェルフェグ・リッパー》!」
そんな声とともにヴァルカンを襲う無数の斬撃。
彼女は咄嗟にサイドステップで躱してみせる。
「んにゃ、確か魔族ヴィレとかいったにゃね?」
「その通りです。激獣姫、次こそはお前を仕留めてみせます。展開せよ、《ヴェルフェグ・アーマー》!」
魔族ヴィレの体に禍々しい紫色をした装甲が。
「なるほどにゃ。ハンマー対策をしてきたにゃね?」
「その通りです。前回の戦いではあなたのそのバカみたいな威力を持つハンマーに手こずりましたからね。しかしこの装甲があれば……さぁ、行きますよ!」
ヴァルカン目掛け走り出す魔族ヴィレ。
装甲を纏ったというもに何というスピードか。
恐らくこの速さもリンドヴルムの力によるものなのだろう。
「小細工はなし! ミョルニルと装甲、腕試しにゃ!」
ブーストハンマー、ミョルニルを振り抜くヴァルカン。
対し魔族ヴィレは腕に纏った装甲で受けてみせる。
「んにゃ!?」
何という頑丈さ、それにパワーだろうか。
全力で放った攻撃を腕一本で防がれるとは。
だが――
「バトルデバイス、展開にゃ!」
バックステップするとともに叫ぶヴァルカン。
するとミョルニルの正面に青白いマナで構成された〝ドリル〟が展開されたではないか。
「なっ――」
何だそれは!?
その言葉を言い切る隙すら与えずヴァルカンは攻撃を仕掛ける。
「喰らうにゃ! ドリル・クラッシャァァァァァ――!!」
ミョルニルから展開したドリルが、ギュイィィィィンッッ!!
と派手な音を鳴らしながら魔族ヴィレに襲いかかる。
突然の出来事に混乱したのか、それとも装甲の防御力に奢ったのか。
敵はドリル攻撃を両腕で受ける。
ズガガガガガガガッッ!!
凄まじい音を上げながら敵の装甲を削るドリル。
そしてついに――
ドパンッッ!!
敵、魔族ヴィレの腕を装甲ごと弾き飛ばした。
「終わりにゃ!」
そのまま無慈悲に、ヴァルカンはトドメを刺すのだった。
◆
「にゃあ!」
今度は我輩も相手するぞ、魔族アモン!
「タマがいれば百人力です!」
《イフリート・エッジ》を発動。
その横でご主人もテンペスト・ブリンガーを構える。
相手は魔族アモン、その横には前回セドリック殿が相手にした魔族カイムとやらが付いている。
「前回のようにはいかぬぞ、小娘! リンドヴルムによって強化された私の力を見るがいい! 《ヴェルフェグ・ノート》!」
ご主人、ここは我輩に任せろ!
敵が放った攻撃に合わせ、《イフリート・エッジ》を――
斬ッッ!!
マナで構成されたビームを真っ二つに切り裂いてみせる。
「なっ!? 馬鹿なっ……」
ふん、驚いているな。
魔族アモンよ。
確かにご主人の《スターライト・ブレイド》だったら受けきれなかっただろう。
だが我輩はベヒーモス。
Sランクの膨大なマナを舐めてもらっては困るのだ。
「くっ! 《ヴェルフェグ・ウェポン》!」
もう一体の強化魔族、カイムが攻撃を放ってくる。
「《アクセラレーション》!」
ご主人は加速し大きく後方へ。
我輩は《飛翔スキル》を発動。
地面から飛び出した凄まじい数の武器を回避してみせる。
我輩たちはセドリック殿やアナ殿と違ってマナの流れを読むのに今の状態ではそこまで長けていない。
ならば敵の攻撃射程範囲から離れて回避するのみである。
「くっ、リンドヴルムの力で強化されたというのに、その上でここまで厄介とは……っ」
苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべておるな。
魔族アモン、それに魔族カイムよ。
このまま押し切ればこちらも大丈夫そうだ。
しかし、問題はシュリ女王だ。
先ほどから上空でリンドヴルム相手に派手に暴れているようだが……
合間合間で様子を窺っているとやはり苦戦している様子だ。
このまま魔族アモンどもの相手を続けるか、或いは……
◆
上空にて――
「――喰らえ、《ヴェルフェグ・ノヴァ》!」
「《ガルガン・バスター》、発射なのじゃ!」
リンドヴルム、ガルガンカイザーに搭乗したシュリ女王。
ともにマナで構成されたビーム攻撃を撃ち合う。
「不完全な状態だというのに何というマナの量じゃ。これだけ撃ち合っているというのに、勢いが衰えることがない……」
コクピットの中、肩で息をしながら機体の操縦をするシュリ女王。
ガルガンカイザーの活動時間は限界を過ぎている。
今はその動力源をシュリ女王のマナによって補っている状態なのだ。
だがそれも限界に近い。
既にアリアにもらったエリクサーも飲み干してしまっている。
「――別の攻撃方法に移行する。発動、《ヴェルフェグ・リンドノヴァ》!」
その刹那、ガルガンカイザーの背後に魔法陣が展開された。
「しまっ――」
回避行動を試みるも背後からのビーム攻撃が直撃。
装甲が吹き飛びコクピットが露わになってしまう。
「くぅっ……っ!」
暴風に煽られながら、何とか機体を制御するシュリ女王。
その好機を見逃すはずもなく、リンドヴルムが急接近していく。
◆
「タマ! ここはわたしに任せて陛下を!」
「にゃあ……!」
しかし、ご主人!
「わたしは大丈夫です。陛下から賜った力を使います! バトルデバイス、展開!」
ご主人が青白いオーラ、マナを纏う。
そして――
「なるほど、これがわたしの為にタマが選んでくれたスキルなのですね。……発動! 《属性操作砲・四精霊》!!」
ご主人の周囲に展開される四つの属性操作砲。
シュリ女王が我輩とご主人に与えてくれたバトルデバイス。
それらにはお互いが選択した自身のスキルをもう片方の相手に使用させることができる効果を持つのだ。
「行きなさい、《ノーム・ビット》! 《ウンディーネ・ビット》!」
さすがご主人である!
初めて使う我輩のスキルを難なく使いこなし、魔族アモンども二体を相手に見事に渡り合っておる。
よし! ご主人の期待に応え、我輩はシュリ女王の元へ!
「にゃん!」
バトルデバイス展開!
今行くぞ、シュリ女王……!
発動、《アクセラレーション》――!!
ご主人のスキルを使い、我輩は猛スピードで上空へと飛翔する。