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185話 消えぬ闘志の炎

「くっ、取り逃してしまいました……」


 悔しそうにテンペストブリンガーを握り締めるアリア。

 ステラも「クソォ!!」と地面に拳を打つ。


 そんなタイミングであった――


「どうやら間に合わなかったようですね……」


 そんな声とともに、T―R E Xに乗った氷の女勇者――シエルが現れた。

 その髪は大きく乱れており、ここまで全速力で向かってきたであろうことが窺える。


「シエル様、申し訳ありません。魔族を……それとその魔族が作り出した強力なモンスターに鬼神ノ涙を奪われてしまいました」

「アリア、こちらこそ間に合わず、すみません。……一度他の仲間やシュリ女王と合流し、どうするかを決めましょう」

「はい、シエル様……」


 悔しそうに俯くアリアの肩を抱くシエル。

 そんな彼女が上空――聖獣の姿となったタマの姿を見つめ、察する。


(あの状態のタマちゃんがいても倒せないほどの強敵……魔王ベルフェゴール以上に厄介な相手だったようですね……)


 と――。


 ◆


 数間後……シュリの別荘である屋敷、その応接室にて――


「皆、すまない。妾の予想が外れこのような結果になってしまった……」


 アリアたちに頭を下げるシュリ。

 女王が頭を下げるなどあってはならないことだと、アリアたちは慌ててそれを止める。


「じゃが、皆の奮闘もあって被害のほとんどはメタルオーガナイトであり、城の方もある程度避難が済んでおったので負傷者はいるものの死者は出ずに済んだのじゃ」

「それは……不幸中の幸いでした」


 シュリの言葉を聞き、少しだけ安心した表情を見せるアリア。

 彼女の胸の中でタマもほっと息を吐く。


「陛下、この後はどうするつもりでしょうか? 鬼神ノ涙を持ち去り、さらには強力なモンスターを作り出してしまった魔族たち……また動き出すことでしょう」

「氷の女勇者シエルよ、そなたの言うとおりじゃ。そしてそれに関しては妾のスキル……鬼神ノ千里眼である程度の動向は掴めておる」


 シュリの言葉は続く。


 どうやら魔族アモンどもはここから魔導列車で数日の距離にある廃都――〝ガルガンチュア〟に転移したらしい。


 都市ガルガンチュアは数十年前までは堅牢な要塞機能を擁した首都として栄えていた。

 しかし都市の防衛機能を動かしていた特殊な核――リンドウの鬼神ノ涙のようなもののエネルギーが尽きたためその機能を失い、今は廃都となっているそうだ。


「要塞都市ガルガンチュア、その機能のエネルギー源となっていた核……嫌な予感がしますね」

「氷の女勇者シエルよ、そなたも同じことを考えておったか」

「シュリ女王、やはりあなたも同じ考えですか」


 二人の会話を聞き。タマもアリアも(なるほど……)(そういうことですか……)と何となく理解する。


 魔族アモンはベルフェゴールの封印されていた水晶の破片を使いあれほどまでに戦闘力を向上させ、挙げ句の果てにリンドヴルムのような恐ろしい存在を創り上げた。

 そんな存在が魔界ではなく廃都に転移した。その目的は都市を機能させる程のエネルギーを失ったとはいえ、その核でまた何かをしでかすことではないか……と、想像することができる。


「シュリ様、こちらはどう動きますか?」

「アリアよ……こちらはメタルオーガナイトの半数を自立防衛モードに移行させこの都市に残す。そして残りの半数を連れ妾、そしてそなたたちとともに廃都ガルガンチュアに向かい、次こそ魔族アモンどもを討つ! ……協力してくれるか?」


 決断、そして再びタマやアリアたちの助力を要請……否、願うシュリ。

 それに対しタマやアリアは大きく頷く。


「もちろんです! このような事態……聖刃と聖獣の名において放っておくことはできません! そうですよね、タマ?」

「にゃ〜ん(もちろんだ、ご主人)!」


 それを見ていたシエルは少々呆れた様子で、そして小さな声で言葉を漏らす。


「まったく、国に指定された勇者というわけでもないのに本当に高潔なのですから……まぁ、そんなあなたたちだからこそ最強の剣聖……アリーシャは二つ名を与えたのでしょうね」


 メタルオーガナイトの数はかなり減ってしまったが、それでも今度は氷の女勇者であるシエルもいる。

 敵も何かを企んでいるようだが、今度は防衛戦ではなく攻め込む戦いになる。後ろに守るものがなければタマたちは先ほどまで以上に戦いに集中できるし、完全に守りに徹していたシュリ女王もその膨大なマナと魔法スキルを遺憾なく発揮することができるだろう。


 強大な敵に遅れを取り、鬼神ノ涙を奪われはしたものの、タマやアリアたちの瞳の中にある闘志の炎は消えてはいない。高潔な英雄の少女、そしてその誇り高き騎士の人々を守りたいという思いが消えるはずもないのである。


 ステラにリリ、そしてフェリも気合い十分に声を上げる。


「グハハハ! 今度こそアイツらを叩きのめしてやるのだ!」

「そうよ! でっかい龍さえ現れなければこっちが押していたんだから!」

「そうです〜! 次こそ勝つのです〜!」


 続けてセドリックやアーナルドも「そうだね、逃げられたままじゃつまらないもんね」「うふふ、セドリックちゃんったら、また嗜虐的な笑みを浮かべちゃって! ドキドキしちゃうわん♪」などと盛り上がり……もとイチャイチャし始める。


「そうと決まれば準備が出来次第、廃都――要塞都市ガルガンチュアに向かうとしましょう!」

「「「了解!」」」


 シエルの声で一向は動き始める。


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