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183話 強化魔族⑦

「にゃん《ウンディーネハウリング》!!」


 空を駆り、属性咆哮を放つタマ。

 敵のワイバーンどもは瞬時に散開しその攻撃を回避する。


 なんとう速さ。やはり特殊個体、あるいは何らかの強化を施されているようだな……とタマは理解する。


(ここは属性咆哮で牽制しつつ隙を突いて属性剣尾で斬り伏せるか……)


 タマが頭の中でそんな作戦を模索している最中であった――


「「「「ギャオオ――ンッッ」」」」


 四方へ散開したワイバーンどもが一斉に鳴き声を上げる。

 その口の中から……ギュン――ッッ!! とレーザービームのようなものが飛び出したではないか。


「にゃ(な)っ!?」


 思わず声を漏らすタマ。


 咄嗟に急上昇することにより四方から飛んでくる敵の攻撃には回避するものの驚きを隠すことができない。

 ワイバーンは強力なモンスターだ。しかし通常は爪や牙を使った攻撃を得意としており遠距離攻撃の手段を持っていないからである。


 上空から地上のご主人たちを狙い撃ちされたらひとたまりもない、何としてもここで我輩が仕留めねば……! タマはそう判断しスキルを発動する。


「にゃあ(《属性操作砲》)!!」


 四属性の砲門を持ったオールレンジユニットがタマの周りに展開する。


「にゃん(いけ)!!」


 ヒュンヒュン! と音を立て、超高速移動するユニットたち。


(まずはコイツだ!)


 タマの意識と連動してユニットの一つ《ノームビット》が地属性の散弾をズガンッッ!! と放つ。


 二体のワイバーン回避を試みるもそれぞれ片翼にダメージを負い大きくバランスを崩す。

 しかしバランスを崩しながらも口からレーザービームを放ち反撃する……がそのような体勢で放った攻撃にタマが当たるはずもなく、危なげなく回避してみせる。


 そのままタマは《シルフィーネビット》を操りその砲門から大気を圧縮した極大の風弾を放つ。


 不可視の砲弾ではあるが二体のワイバーンどもは野生の勘でそれを察知したようだ。

 グオォォォォ……!! と唸り声を漏らしながら左右に距離を取る。

 しかし直撃は免れたものの風弾が通り過ぎた後の余波でこちらも大きくバランスを崩した。


「にゃあ(今だ)!!」


 タマは残りの《属性操作砲》を同時に操る。


 最初にバランスを崩した二体の敵に向け《ウンディーネビット》が海のように澄んだ……それでいて高圧縮された水のレーザービームを横薙ぎに放つことでその体を腹から一文字に両断する。


 そして反対の二体には《イフリートビット》がその砲門から紅蓮の業火を放ち、その体を焼き尽くす。


(よし、予想外の攻撃に驚きはしたものの無傷で倒すことができた。このままご主人に加勢するとしよう、どうやら厄介な敵のようだからな)


 目を鋭くし眼下の敵――アリアと対峙する魔族アモンを見据えるタマ。

 強化したワイバーンたちが撃破されたことでアモンは忌々しげな表情を浮かべる。


 タマは急降下、そしてタンっ……と軽やかにアリアの隣に着地する。


「さすがタマです! あんなに強力な敵たちを無傷で倒してしまうなんて……!」


「にゃあ!」


 アモンを見据えながらも称賛の言葉を贈るアリア。

 タマはそれに嬉しそうに応えながらも自分と彼女の周囲に《属性操作砲》を展開する。


「くっ……」


 傷口を押さえ、焦った表情を浮かべるアモン。

 急襲を仕掛け、しかもベルフェゴールの力の一端を取り込んだ自身や他の魔族、そしてモンスターたちを駆使して上でこのような展開になるなど予想していなかったのだ。


 シュリの未来予知の能力、彼女の従えるメタルオーガナイツ、強くなるために努力を惜しまなかった仲間たち、そして異世界アークでの試練を乗り越え新たな力を手に入れたタマとアリア、これらのピースが組み合わさったからこそこの結果に繋がったのだ。


「仕方あるまい、当初の予定通りとはいかぬが作戦を発動するとしよう」


 唐突に、そして先ほどとは打って変わり冷静な表情でそんな言葉を口にする魔族アモン。


「作戦……?」


「にゃあ(この戦況から一体何をするつもりだ)……?」


 不思議そうに声を漏らすアリアとタマ。


 二人の反応を見てクツクツと小さな笑いを漏らす魔族アモン。


 そして――


「来い! モンスターどもよ!!」


 高らかに叫ぶ。


 すると戦場の後方に巨大な魔法陣が浮かび上がり、その中からまたもや膨大な量のモンスターが召喚されたではないか。そのどの個体の額にも水晶の破片が埋め込まれている。


「ここに来てあんな量のモンスターたちを……でも!」


「にゃあ(たとえ数を召喚したところで結果は同じ、皆で連携して殲滅するのみだ)!」


 数に驚きはしたもののそれで心が折れるアリアとタマではない。

 モンスターが加勢に加わったところで戦力的にはこちらが上。さらにこの後シュリの従える鬼人族の戦士たちも加勢に来るのだから。


「クククク……勝ちを確信しているな?」


 不適な笑みを浮かべるアモン。

 その右手には禍々しい紫色をした水晶が握られている。


(まずい、さらに何かするつもりだ!)


 タマはそう判断し咄嗟に《属性操作砲》たちに攻撃を仕掛けさせるが――


「もう遅い! 発動せよ! 《サクリファイス・リーンカーネーション》!!」


 その言葉とともに、戦場が禍々し色をした閃光に包まれた。

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