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180話 強化魔族④

「んにゃ〜! あれはリリちゃんとフェリちゃんのスキル! 暴れてるにゃね〜!」


 戦場の左陣にて、遠くの方で発動したリリたちのスキルの輝きを見ながらハンマー型のアーティファクト――ミョルニルで敵を粉砕しつつ興奮した声を上げるヴァルカン。


 その近くではセドリックも凄まじい剣技を繰り出し、敵をバッタバッタと切り伏せていく……その最中であった――


「ヴァルカンさん!」


 セドリックが叫ぶ。

 どうやらヴァルカンも気づいたようでその場から二人同時に飛び退く。

 その直後、二人が立っていた場所に剣や槍、斧が突き刺さった。


「今の攻撃に反応数するとは、あの二人……侮れませんね、カイム」


「肯定、私の攻撃タイミングは完璧だったはず……ヴィレ、警戒を」


 そんな声とともにヴァルカンたちの前に現れた女魔族が二体……

 カイムと呼ばれた魔族は右手に槍、左手に剣を持ち、ヴィレと呼ばれた魔族は右手に長剣、左手に短剣を持っている。

 そしてガープたちと同じく、その額には水晶の欠片が嵌め込まれている。


「この雰囲気……」


「うにゃ、どうやら厄介な魔族みたいにゃ、セドリック様」


 二体の容姿、それに先ほどの攻撃にセドリックとヴァルカンは警戒心を高める。


 そこから少し離れたところではアーナルドが氷の魔剣を乱れ撃ち、モンスターたちを排除しながらセドリックたちに心配そうな視線を送っている。


 アーナルドは生命が持つマナの特性を見抜くことに長けた人物だ。

 だからこそ二人の前に現れた二体の魔族の放つ異様な波動に警戒しているのだ。


 アーナルドの視線に気づいたのか、セドリックは彼女(?)の方へといつもの優しい笑顔を送る。


(……! そうよね! どんな敵が相手だってセドリックちゃんが負けることなんてないもの!)


 愛すべき男の余裕の笑みを受け、アーナルドは目の前の敵に集中。メタルオーガナイツとともに周囲の敵を魔法スキルで射抜いてゆく。


 それを見た魔族カイムが「あの男、私が殺る……」と言って、その場をゆらりと歩き出した。


「まったく、普段は静かなくせに相変わらず沸点が低いですね」


 魔族カイムの後ろ姿を見送りながら呆れたかのような表情を浮かべる魔族ヴィレ。そのままヴァルカンの方へ視線を向けると――


「まぁ、いいでしょう……それでは私は虎耳族の女の方を始末しましょう。武器の相性的にそっちの方がやりやすそうですし」


 そう言って左右の剣を構えてその場を飛び出した。


(とんでもない速さにゃん!)


 目にも止まらぬ速さで距離を詰めてきた魔族ヴィレ、その長剣による一撃をミョルニルでガードするヴァルカン。さらに時間差で放たれた短剣による突きを顔を逸らすことで回避してみせる。


 アリアの《アクセラレーション》に迫ろうかという速さ、それをスキルも発動せずに繰り出してきたことに驚きを隠せない。


 そして気付く。魔族ヴィレが武器の相性と言っていたその意味に。

 敵の動きはあまりにも速い、得物が長剣と短剣と言うこともあって攻撃が読みにくい……

 超重量武器を使うヴァルカンにとって相性が悪い相手なのだ。


「これも防がれるとは、想定外です」


 攻撃を防がれたことで一度距離を取りながら言うヴィレ。


「それにしても今のその判断力、動き、虎耳族で巨大ハンマー使い、あなた……もしかして激獣姫なのでは?」


「にゃ……ッ!?」


「おや、当てずっぽうでしたがどうやら当たりのようですね。まさか先の魔神ノ黄昏ラグナロクで大魔導士の元に居た者と相対するとは……。面白い、魔神――イルミナス様の仇というわけではありませんが、ますます殺すのが楽しみになってきました」


 ヴァルカンの正体を知り先ほどまでのクールな表情からは一変、血走った目を見開くと再びその場から飛び出すヴィレ。


 ザン――!!


 空を切る音とともにヴァルカンへと距離を詰め両手の剣を繰り出す。


 対しミョルニルで防御するヴァルカン。


 しかし攻撃を防いだ次の瞬間、敵はその場をステップしてヴァルカンの右に回り込むと今度は蹴りを放ってくる。その爪先から鋭いナイフが飛び出した。


「にゃっ!!」


 咄嗟にミョルニルのブースト機能を駆使するヴァルカン。

 蓄積したマナを炎と風に変え爆風を起こすことでその場から大きく距離をとることで敵の搦め手を回避してみせる。


「さすがは大魔導士パーティの元一員、忌々しいですね」


 目を地走らせながらも静かにヴァルカンを見据えるヴィレ。


「このまま攻められ続けたらジリ貧にゃ!」


 ミョルニルのブースト機能を駆使してヴィレへと距離を詰めるヴァルカン。


 大きく振りかぶった上段からの渾身の一撃。

 しかしヴィレの速さには追いつかず回避されてしまう。


「これが本当に大魔導士のパーティの一員だったのですか……?」


 回避とともにヴァルカンに憐れんだ視線を向けるヴィレ。

 そのまま虎耳娘の背中に短剣を突き刺そうとした……その直後だった――


 ドゴォォォォォンッッ!!


 凄まじい音が鳴り響く。


 それと同時にヴァルカンを中心に周囲が大きく揺れる。


「な!?」


 思わずバランスを崩すヴィレ。


 その土手っ腹に――ドパンッッ!! とヴァルカンが横薙ぎに繰り出したミョルニルが直撃する。


 ぐああぁぁぁぁぁ……ッッ!! とその場から大きく吹き飛ぶヴィレ。


 なんとかバランスを取り着地したところで彼女は気付く。

 あの揺れ……攻撃を外したと見せかけて地面を打ちその衝撃で超局所的な地震を起こしたのか! と。


 忌々しげな表情を浮かべるヴィレに、ヴァルカンは「にゅふふ!」と笑いミョルニルを構える。


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