表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/217

17話 絆

「ふふ〜、気持ちいいです……」


 酒瓶片手に。

 虚ろな目でアリアが言う。


 机の上には空いた酒瓶が3本ほど……

 飲み過ぎである。

 よっぽどタマがペットになったのが嬉しかったようだ。


 当のタマはというと。

 アリアの飲みっぷりに呆れ果て。

 相手してられないとばかりに、ベッドでペロペロと毛づくろいをしている。


「もう、ご主人様を放っておいて毛づくろいなんて……タマは冷たいのですね……。そんな態度をとってると、一緒にお風呂に入ってあげませんよ?」


(お風呂……だと……ッッ!?)


 聞き捨てならない言葉に。

 タマの動きがピタリと止まる。


 そんなタマをよそに。

 アリアは、机の上の空き袋を片付けると。

 ベッドの横においてあった籠の中に、着替えやタオルなど詰め込んでいく。


「一緒に行くなら今のうちですよ〜?」


 ちょっとさみしそうな視線で、タマに籠を向けてくるアリア。

 行くなら、この中へ入れ……ということらしい。


(し、仕方あるまい。我が輩はご主人の騎士。いついかなる時であろうと、その身を守るために離れるわけにはいかぬ。そう、これは仕方のないことなのだ!)


 誇りある騎士として、女風呂に入るなど言語道断。

 しかし、絶世の美少女である自分の主人に、いつ劣情を催した男が襲いかかるとも限らない。ならばここはプライドを捨て、ご主人の警護に努めるべき……。


 そんな言い訳で、無理やり自分を納得させると。

 タマはピョンっと籠の中に飛び降りた。


 …………その飛びっぷりは、ずいぶんと軽やかだった。





「あら、アリアちゃん。お風呂かい?」

「はい。ちょっと遅くなってしまいましたが、使っても大丈夫ですか?」


 2階の部屋から降りると。

 料理の載ったトレーを運んでいた女性が、アリアに話しかけてくる。


 この宿屋は2階が宿泊施設。

 1階が、受付兼酒場となっている。

 アリアに話しかけた女性は、この宿の女店主だ。


「ああ、使って大丈夫だよ、ちょうどアリアちゃんで最後だ。ゆっくり使っていいよ。猫ちゃんもしっかり洗ってやんな」

「ありがとうございます!」


 女店主の気遣いに。

 アリアは礼を言うと、宿の奥へと進んでいく。

 ここには交代利用制だが、それなりの大きさの洗い場と湯船が設けてあるのだ。


 アリアが浴場へと向かっていくのを見て。

 酒場で飲んでいた男の1人が、あとを追おうとするが、それに気づいた女店主のゲンコツによって阻止される。





(う……浮いている……)


 脱衣所で、アリアの魅惑の脱衣シーン。

 そして、いちゃいちゃにゃんにゃん洗いっこを堪能したタマ。


 アリアの体は、その体型も完璧であった。

 さらに肌にはシミひとつなく、まさに理想の肌だった。


 だが、そんな光景さえも吹き飛ぶようなことが、タマの目の前で起きていた。


 浮いている。

 アリアのふたつのメロンが湯船にプカプカと浮いているのだ。


 自分も湯船に浮かびながら。

 タマはその光景に目を奪われていた。


「タマ……?」

「にゃっ!?」


 酔いと湯船の温かさで、天井をぼーっと見上げていたアリアが、急にタマに話しかける。

 まさかメロンを見ていたのがバレたのかと、タマは慌てた様子で返事をする。


「タマ……わたしは強くなれるでしょうか?」

「……にゃあ?」


 アリアの問いに。

 タマは心配そうな面持ちで鳴き声を返す。

 彼女の瞳が不安そうに揺れていたからだ。


 すると、アリアはポツポツと語り始めた。


「わたしの住んでいた国はね。昔、魔族の軍勢に襲われたことがあったんです。その時、わたしは小さくて戦うことができなくて、ずっと隠れていたの……でもね、魔族は鼻がいいから、そんなわたしはすぐに見つかっちゃったの……」


 そこまで言うと。

 アリアはその時のことを思い出したのか、身震いしてしまう。


 だが、それも束の間。

 次の瞬間には彼女の顔に笑顔が生まれる。


「でもね、そんな時に現れたの、“剣聖様”が……! 剣聖様は、魔族に追い詰められたわたしの前に現れると、二本の刀で次々と魔族を斬り捨てて、わたしを救ってくれたんです」


(剣聖……。もしや、あの(・・)剣聖か?)


 アリアの言う、剣聖という名に。

 タマは聞き覚えがあった。


 剣聖とは……数年前に、魔族の軍勢がとある国を襲った際に、どこからともなく現れ、たった1人でそれらを屠り、国を救ってしまった伝説の女エルフの通り名だ。


 そんな存在に、アリアは過去に救われていたようだ。

 そしてアリアは、さらに言葉を続ける。


「わたしはその時に決めたんです。いつか、わたしも剣聖様のように強くなって、困っている人々を助けてあげられるようになるんだって……。そのためにナイフの練習をして、修業のために冒険者になったんです」


(ご主人……!)


 高潔なアリアの生き方に。

 タマは心底、心をうたれた。


「ですが……」


 だが、そこまで言って。

 アリアは意気消沈といった様子で、顔を半分ほど沈めてしまう。


 タマはアリアの言わんとしていることを察した。


 たくさんの人を助けるどころか。

 今日は、突然変異種とはいえゴブリン如きに後れをとり、タマに助けられてしまった。

 恐らくそれが悔しくてならないのだ。


(大丈夫だ、ご主人……ご主人はまだ若い。その気概さえあれば、これからどんどん強くなっていくであろう。それに我が輩もついている。ご主人が強くなるまで、決してその命を散らせはしない)


 落ち込むアリアの姿に。

 タマは改めて、この少女を守り抜くことを決意する。


 そして、器用に泳ぎ。

 アリアの側まで近づくと、そのまま爪を立てぬように彼女の肩まで登り、彼女の頬に、自分の頭をスリスリと擦りつける。


「タマ……。ふふっ、君は優しいんですね」


 そのおかげもあってか。

 アリアの顔に笑顔が戻る。


 今宵……1人の少女と一匹のベヒーモスは、絆を深めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ