176話 防衛戦
「第一陣、矢を放つのじゃ!」
敵の前衛部隊が射程に入ったところで、シュリが後衛型のメタルオーガナイトたちに指示を飛ばす。
一糸乱れぬ動きで、一斉に矢を放つメタルオーガナイトたち。
放たれた矢が弧を描き、敵の魔族やモンスターどもを穿つ。
だが敵の数は多い。
盾でガード、あるいはステップを踏むことで矢を避けた者どもが、仲間の死体を踏み越え駆けてくる。
「第二陣、矢を放て! 中距離部隊、魔法を放て!!」
シュリの指示で、さらに後方の後衛型のメタルオーガナイトが矢を放ち、中衛型のメタルオーガナイトが一斉に火属性の中級魔法 《フレイムランス》を発動させる。
『盾を上に構えろ!』
『馬鹿言え! 前から魔法スキルが飛んでくるんだぞ!?』
降り注ぐ矢の雨と、前方から飛んでくる炎の魔槍に、魔族どもの統率が乱れる。
矢と炎の魔槍によって、前衛部隊の数を三割ほど減らすことに成功した。
「今じゃ! 前衛第一部隊、突撃ッ!!」
敵の統率が乱れ、数が減ったところで、シュリが叫ぶ。
その声に応え、槍を持った前衛型のメタルオーガナイトたちが一斉に駆け出した。
「私たちも行くにゃん!」
「了解なのだ!」
前衛型のメタルオーガナイトたちに合わせ、ヴァルカンとステラも飛び出した。
二人の圧倒的なパワーと防御力をもって、敵の前衛部隊――その第一陣の数をとことん減らすつもりなのだ。
前衛型のメタルオーガナイトたちが敵の前衛部隊の最前列と激突する。
同時に槍を突き出すことで、敵の魔族、そしてホブゴブリンやオークといったモンスターどもを刺し穿つ。
敵も負けじと剣や槍を突き出してくるが、メタルオーガナイトたちは巨大であり、槍のリーチも長くて攻撃がなかなか届かない。
いくつかの攻撃が通ったとしても、メタルオーガナイトの持つ鋼鉄の体にダメージを負わせることができない。
敵の前衛部隊が槍によって刺し貫かれる中、ヴァルカンとステラが突貫する。
ヴァルカンはミョルニルのブースト機能を、ステラはカラドボルグの重さ駆使して、次々に敵の魔族やモンスターを叩き潰していく。
「やるわね、二人とも!」
「私たちも負けてられないのです〜!」
ヴァルカンとステラの活躍を見て、リリとフェリが興奮した声を上げる。
ヴァルカンとステラ、前衛型のメタルオーガナイトたちの防衛網を突破してきた敵に向かって、それぞれデファイヨンリングで出力を高めた、《フェアリーバレット》と《ブランチュウィップ》を発動し、その体を撃ち貫く。
「さすがは高位の妖精族、相変わらずやるわねん♪」
リリとフェリに合わせ、アーナルドも手にした長杖を振るい、氷の中級スキル《アイシクルランス》を連続で放ち、敵を次々に沈めていく。
(ふむ、実に連携が取れている。何より後衛型のメタルオーガナイトたちの放つ矢の飛距離がピカイチだ)
アリアたちとともに、後方で戦況を見守りながらタマは思う。
以前よりもさらに連携力を高めたヴァルカンたちも素晴らしいが、目の前に広がる圧倒的有利な戦況は、後衛型のメタルオーガナイトたちによる弓矢の飛距離があってこそだ。
機械の体と機械で出来た弓を使ったその攻撃は、通常の弓よりも飛距離がある。
その証拠に、敵の中衛部隊や後衛部隊による攻撃は、まだ一撃もこちら側に届いていない。
敵よりも先に遠距離から攻撃ができる……それだけで、戦いというものは圧倒的に有利になるのだ。
しかし、そんな時だった――
「敵の矢が飛んできます!」
――アリアが空を見上げて叫ぶ。
どうやらこのタイミングで、敵の遠距離攻撃部隊が射程距離に迫ってきたらしい。
「ステラちゃん!」
「我に任せるのだ! ヴァルカン!!」
ヴァルカンの掛け声に合わせ、前方上空にクラウソラスを振り上げるステラ。
するとその剣身から、ドゴウ――ッッ!! という凄まじい音ともに、衝撃波が飛び出した。
衝撃波は敵の放った矢のほとんどを飲み込み、あらぬ方向に吹き飛ばしていく。
ステラは敢えて敵にカラドボルグで攻撃を仕掛けていた。
カラドボルグに衝撃を溜め込むことで敵の遠距離攻撃に備え、今この瞬間にクラウソラスから衝撃を放ち、無効化したのだ。
「今じゃ! 敵の遠距離攻撃部隊に矢を放つのじゃ!」
後衛型のメタルオーガナイトたちにシュリが鋭く指示を飛ばす。
ステラというたった一人の少女の存在に、矢による攻撃のほとんど無効化されたことで、混乱する矢を持った敵の部隊に向け、後方で控えていたメタルオーガナイトたちが一斉に矢を放つ。
敵の遠距離攻撃部隊――その第一陣がなす術もなく、矢の雨に撃ち貫かれていく。