168話 女王の求愛(?)
(ふむ、それにしても数が多いな)
廃墟から出てくるスケルトンを、バッタバッタと《イフリートエッジ》を駆使してなぎ倒していくタマ。
タマの後ろでは近距離型のメタルオーガナイトのうちの一体が槍を振るい、中距離型のメタルオーガナイトが魔法スキルを使って援護している。
残りの近接型と遠距離型のメタルオーガナイトは、シュリの護衛を徹底している様子だ。
(さて、ステータスを覗いて見るか)
膨大な数のスケルトンを倒したところで、タマは試しに自身の視界にステータスを展開してみることにする。
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名前:タマ
種族:ベヒーモス(幼体)
固有スキル:《属性咆哮・四精霊》《スキル喰奪》《属性剣尾・四精霊》《獅子王ノ加護》《属性弾》《属性操作砲・四精霊》
喰奪スキル:《収納》《ポイズンファング》《飛翔》《ファイアーボール》《アイシクルランス》《アイアンボディ》《触手召喚》《粘液無限射出》《異種交配》《ドラゴンファング》《ドラゴンクロー》
進化可能:▷ベヒーモス第二形態
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(ふむ、とりあえずベヒーモス第二形態への進化は可能になったか。この調子で戦闘を繰り返せば、夜中のうちに第三形態への進化も可能になるだろう)
ベヒーモス第二形態の文字が刻まれていることに、満足げに頷くと、タマはステータスを閉じる。
そんな時であった……
『グオォォォォォォォ――ンッッ!』
……階層の奥の方から、雄叫びのようなものが聞こえてきた。
炎精霊の《属性剣尾を》構え、警戒態勢を取るタマ。
メタルオーガナイトたちもシュリを守るために、それぞれ武器を構える。
ズシン! ズシンッ! という音と振動とともに、霧の中から〝ソレ〟は現れた。
「ほう、アンデッドトロールか」
興味深そうに瞳を細めながら、小さく呟くシュリ。
現れたのはその名の通り、体がアンデッドと化したトロールだった。
それぞれの手に、巨大な鉈と棍棒を持っている。
「にゃあ〜!」
可愛らしい声とともに、タマがその場から飛び出した。
凄まじいスピードでアンデッドトロールへと迫ると、《イフリートエッジ》を振るう。
それを迎え撃とうと、アンデッドトロールが巨大な鉈を振り返す。
しかし――
スパンッッ!!
――そんな音とともに、アンデッドトロールの持っていた鉈は刃の真ん中から、二つに切り裂かれた。
異世界の精霊、イフリートの加護を受けた《属性剣尾》を前にすれば、ただの鉈など紙切れ同然である。
『ゲバァァァァァァァァ――ッッ!』
自身の得物を破壊されたことにより、怒りを露わにするアンデッドトロール。
そのままタマに向かって、棍棒を振り下ろしてきた。
「にゃん(遅い)!」
大きくサイドステップすることで敵の攻撃を軽々と回避するタマ。
今度はスキル《ドラゴンファング》を発動。
タマの目の前に具現化したドラゴンの顎門が、アンデッドトロールの腕を棍棒ごと噛みちぎった。
『ゲバァァァッッ!?』
思わず悲鳴を上げるアンデッドトロール。
アンデッドなので痛覚はない。
しかし、自身の頑強な体がいともたやすく破壊されたことに、驚愕してしまったのだ。
「にゃん(これで終わりだ)!」
一瞬の隙を突き、その場から回転斬りを繰り出すタマ。
炎精霊の《属性剣尾》は、アンデッドトロールの硬い体を一文字に切り裂いた。
『ゲ……バァァ……ッ』
戦闘不能となったアンデッドトロールが、小さく呻き声を漏らす。
その頭にタマはトドメの斬撃を撃ち込み……アンデッドトロールは完全に沈黙する。
「まさか、アンデッドトロールさえも易々と倒してしまうとは。通常のトロールのように再生能力がないにしても、ここまでとは驚きじゃ」
タマの戦いぶりを見て、改めて驚愕するシュリ。
何やら「ますますお主の子種がほしくなってきたのじゃ……♡」などと呟いているが――これもタマは聞かなかったことにする。