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164話 夜の都市を駆ける

 深夜――


(さて、出かけるとするか)


 ベッドの中から顔を出し、窓の方を見つめるタマ。


 魔族の軍勢と戦うには第三形態になる必要がある可能性がある。

 しかし、今のタマは異世界アークでの戦いで、第二・第三形態ともに使ってしまっており進化ができない。

 であれば、今のうちにモンスターと戦うことで経験値を稼ぎ、進化できる状態にする必要がある。


 幸いなことに、この王都サカズキの中にも迷宮都市同様に迷宮が存在することを、アリアたちの会話の中で、タマは事前に掴んでいた。

 皆が寝静まったこの時間に、迷宮に赴き、経験値を稼ごうというわけである。


 アリアたちを起こさぬように、ベッドの中から抜け出すタマ。

 いつもならステラが気付いたりもするが、今日は疲れているのかぐっすり眠っている様子だ。


(よし、出発だ!)


 窓の隙間から一気に飛び出すタマ。

 宿屋の庭を駆け、夜の街を駆ける。

 昼間のうちに、迷宮のある区画の場所はある程度把握済みだ。


(ふむ、夜も活気があり、美しい都市だな)


 道を駆けながら、そんな感想を抱くタマ。


 盛夏祭も近いということもあり、夜だというのに観光客と思しき者たちが飲み歩いている姿が散見できる。

 ほとんどの飲食店が夜遅くまで営業しているようで、表通りは提灯と街灯の光で明るく照らされている。


 いくつかの区画を駆け抜け、ようやく迷宮区へとたどり着いたタマ。

 迷宮区の中心には地下へと続く階段が設けられており、そこから迷宮に潜る仕組みになっているようだ。

 深夜ということもあり、さすがに迷宮に近づく者はいない様子だ。


(さぁ、攻略を開始するとしよう)


 タマが迷宮の入り口に向かって一歩踏み出そうとした……その時だった――


「タマよ、妾も一緒に行くのじゃ」


 ――後ろから、そんな声が聞こえてきた。


「んにゃ!?」


 自分の名前が呼ばれたことで、びっくりしながら振り返るタマ。

 するとそこには、外套のフードを深く被った人物が一人で佇んでいた。

 タマが振り返ったところで、その者はゆっくりとフードを上げる。


(な!? シュリ女王……!)


 さらに仰天といった表情を浮かべるタマ。

 そう、その正体は鬼人族の女王、シュリだったのだ。


「妾のスキル《鬼神ノ千里眼》で、断片的にではあるが、お主がこの迷宮を攻略しに現れるという情報を知ることができたのでの、面白そうだから妾も同行させてもらうのじゃ」


 幼く、それでいてどこか妖艶な笑みを浮かべながら、タマに向かってそんなことを言うシュリ。


(まさかそんな情報まで知ることができるとは……恐るべき固有スキルだ)


 シュリの言葉を聞き、戦慄するタマ。

 それと同時に、面白そうだからという理由で、一国の女王が夜中に城を抜け出してきたことに、少し呆れてしまう。


「に、にゃ〜……」


 どうしたものかと、戸惑った鳴き声を漏らすタマ。

 さすがに一国の女王を連れて迷宮に入るというのも気が引ける。


 しかし、シュリはそんなことお構いなしとばかりにタマを持ち上げると、その豊かな胸の中に抱っこし、そのまま迷宮へと続く階段を降り始めてしまう。


(むぅ、こうなれば仕方ないか……。よし、《獅子王ノ加護》発動っ!)


 シュリの胸に揺られながら、意を決してスキルを発動するタマ。

 タマとシュリの体が、黄金色の輝きに包まれる。


「これは……! あらゆるステータスが上昇、それにいくつもの耐性効果が付与されていく感覚……。タマよ、お主は子猫だというのに、凄まじいスキルを持っておるの。さすがは魔王を倒すだけのことはある!」


 タマのスキルの加護を受け、興奮した声を上げるシュリ。

 何やら少々頬を桜色に染めており、タマを見つめて小さな舌で唇を舐めている。


 彼女の様子に、タマは「んにゃ?」と不思議そうに首を傾げる。

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