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159話 鬼人族の女王

 城の通路を抜け、謁見の間へと通されたタマたち。


 玉座には一人の少女が足を組んで腰掛けている。

 青紫の長髪、紫の切れ長の瞳、額からは二本の角が生え、胸元と太もも周りが大きく開いた大胆な着物を着ている……そんなとんでもない美少女鬼人族だ。


「妾の名は〝シュリ〟――鬼人族の国、リュウドウの女王じゃ。皆、よく妾の呼び出しに応じてくれた、感謝する」


 幼く、それでいて凛とした声で、アリアたちに語りかける女王――シュリ。

 幼い見た目とは裏腹に、優しく、それでいて威厳を感じさせるオーラを纏っている。


 彼女の言葉を聞き、片膝で跪いていたアリアたちが深く頭を下げる。


「カエデよ、この者たちと妾だけで話したい。お前も護衛たちも外で待機しろ」


「へ、陛下!? 何を……っ」


 シュリの言葉を聞き、素っ頓狂な声を漏らすカエデ。

 一国の女王が護衛を全て外し、他国の冒険者たちと話したいと言い出したのだ、そんな反応も無理もない。


 しかし、シュリが「これは命令じゃ」と一言伝えると、渋々といった様子でカエデを始めとした護衛たちは謁見の間から出ていくのであった。


「さて、まずは楽な姿勢を取るといいのじゃ」


 アリアたちに姿勢を解くよう伝えるシュリ。

 その言葉を聞き、アリアたちは立ち上がる。

 シュリは、立ち上がったアリア、その次にタマ、そして他の皆の顔を見渡す。


「さて、まずはそなたたちに感謝の言葉を伝えるとしよう。先の魔王ベルフェゴール討伐の件、誠に大義であった」


「「「……ッッ!?」」」


 シュリが口にした言葉を聞き、アリアたちが思わず息を漏らす。


(い、いったいどういうことだ! なぜ鬼人族の女王が、魔王ベルフェゴールの件を知っている!?)


 戦慄するタマ。


 魔王ベルフェゴール討伐は、未来から現れた少女マイによってもたらされた情報をもとに、タマたちが秘密裏に行った。

 それがなぜ、一国の女王がその情報を掴んでいるのか、全くもって意味がわからないのだ。


「安心するのじゃ、この件を知る部外者は妾のみじゃ」


 同様するアリアたちに、シュリはそんな風に語りかける。


「失礼ですが、陛下……なぜそのことを陛下がご存知なのでしょうか?」


 慎重な様子で、シュリへと問いかけるセドリック。

 当然だ、事と次第によってはタイムパラドックスが起きてしまいかねないからだ。

 今、魔王ベルフェゴールの件を話していること自体も、それに繋がりかねないのである。


「安心するのじゃ、英雄セドリックよ。タイムパラドックスとやらが起きぬように、人払いを済ませたのじゃからな」


「……っ! そこまでの情報を掴んでいらっしゃいましたか」


 冷や汗を流すセドリック。


 まさか、魔王ベルフェゴールが秘密裏に討伐されたことだけでなく、マイによってもたらされた情報まで掴んでおり、その上で人払いまでしていたとは……。

 ますますもって、彼女――女王シュリが底知れなくなってきた。


「それにしても、まさかこのような少女と子猫で、魔王を倒してしまうとはのう……」


 そう言って、アリアとタマに視線を送るシュリ。

 どうやら、異世界アークでアリアとタマが、魔王ベルフェゴールにトドメを刺したことまでお見通しのようだ。


 シュリの視線と言葉に、タマとアリアがどう反応すべきか困っているその時であった――


「タマといったか、こちらまで来るがいい」


 ――シュリがタマに、そんな指示を出してきた。


「にゃっ!?」


 思いもよらぬ言葉に、思わず鳴き声を漏らすタマ。

 しかし、一国の女王の命令とあっては拒むわけにもいかず、てちてちと彼女の足元まで歩いていく。


「ほう、言葉を理解するか。賢い猫じゃのう」


「にゃあ〜っ?」


 思わず声を漏らすタマ。

 シュリが玉座から立ち上がり、タマの体を抱き上げたからだ。

 彼女はタマをそのまま自分の胸の中へと抱きしめてしまう。


(や、柔らかい……)


 そんな感想を抱いてしまうタマ。

 シュリは幼い顔に反して、なかなかのものを持っていた。

 アリアとまではいかないが、ヴァルカン以上……といったところだろうか。


「ふむ、それにオスのようじゃな、素晴らしいではないか」


 自分の腕の中で、タマを仰向けにすると、そんな言葉を漏らすシュリ。

 何が素晴らしいのかはわからないが、タマは彼女のお気に召したようだ。

 満足げな表情を浮かべると、そのままタマの頭を撫で始めてしまう。


(む、むぅ……なんだか、嫌な予感がします……)


 タマを慈しむかのようなシュリの行動を見て、アリアはそんな感想を抱くのであった。

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