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158話 女王陛下の呼び出し

 その日の夕刻――


「はぁ……とっても綺麗ですね」


 宿屋のテラスから、都市の景色を眺めながらアリアが感嘆の息を漏らす。

 夕闇色の中に街のオレンジの街頭や、店に吊るされた提灯の明かりがよく映える。


(ふむ、景色もそうだが、何よりご主人の方が美しい)


 アリアの胸の中で、そんなことを思いながら、彼女の顔を見上げるタマ。

 街の明かりが彼女のアイスブルーの瞳に映り込み、なんとも幻想的な色に染まっている。

 普段見慣れない浴衣姿も相まって、タマは改めてアリアの美しさを思い知るのだった。


「んにゃ〜、みんなよく寝てるにゃん♪」


 室内でのほほんとした声を漏らすヴァルカン。

 その視線の先にはベッドの上で可愛らしい寝息を立てるステラ、リリ、フェリの姿が……。

 長旅の上に、昼間に思いっきりはしゃいだせいで、皆おねむになってしまったらしい。


 仕方ないので、夜ご飯の時間は少し遅めにして、このまま眠らせておいてあげよう……アリアがそう考えた時であった。


 コンコンコンッ――


 部屋のドアから、そんなノック音が響いてきた。


「アナさんたちですかね?」


 そんな疑問を口にしながら、ドアに向かうアリア。

 しかし、そこに立っていたのは、武者甲冑姿の鬼人族の少女だった。


「夜分に失礼する。Aランク冒険者のアリア殿はここにいらっしゃるか?」


「えっと、私がそのアリアですが……」


 鬼人族の少女の質問に、戸惑いながらも答えるアリア。

 すると鬼人族の少女が自己紹介を始める。


「私の名は〝カエデ〟、この国の女王である〝シュリ〟様の側近だ」


 と――。


「え? 女王陛下の側近……?」


「いったいどういうことにゃん?」


 とんでもない人物の登場に、理解が追いつかないアリアとヴァルカン。

 タマも「にゃ〜ん?」と、不思議そうに首を傾げる。


「ここで詳細を伝えることはできないが、女王陛下があなたたちに用があるそうだ。急で申し訳ないが、城まで一緒にきてほしい」


「じ、女王陛下がわたしたちにご用ですか!?」


「ますます意味がわからないにゃん!」


 武者甲冑の少女――カエデの言葉に慌てふためくアリアとヴァルカン。


 しかし、詳細は伝えることはできないと言われ、その上この国の女王が呼んでいるというのであれば行くしかないと、ステラたちを起こすと出かける準備を始める。

 全員で来るようにとカエデに言われたので、セドリックとアナにも声をかける。


「女王陛下自らの呼び出しか、何か嫌な予感がするね……」


 アリアたちの話を聞き、小声でそんな感想を漏らすセドリック。


(ふむ、やはりセドリック殿もそう思うか。それにしても……どうやってこの国の女王は、ご主人たちがここにいると掴んだのであろうか?)


 セドリックの言葉を聞き、タマはそんな疑問を持つ。


 この国でタマやアリアたちのことを知る者は少ないはずだ。

 そもそも、今回の旅は完全なプライベートであり、女王にまでアリアたちの情報がいく意味がわからないのである。


 眠たそうに瞳を擦るステラたちを連れ、外出るタマとアリアたち。

 すると外には既に馬車が待機していた。

 カエデの指示で、一行は馬車に乗り込む。


 馬車は宿屋外を駆け、やがて巨大な城に繋がる大通りへと移動してゆく。


 馬車に揺られること少し――

 タマたちは城の庭、その門の前へとたどり着いた。


 城の門の両脇に、二メートル程度の身長と機械的な体を持つ、槍を持った兵士のようなものが一体ずつ佇んでいる。

 それを不思議そうに眺めながら、タマたちはカエデによって庭の中へと案内される。


 庭の中に入り、タマたちはその光景に度肝を抜かれる。

 先ほどの機械的体を持つ兵士が、ずらりと並んでいたからだ。


 機械兵の並ぶ道を抜け、タマたちは城の中へと入っていくのであった。

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