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152話 旅の幕開け

 翌週早朝、港にて――


「んにゃ〜! みんなおはようにゃん〜!」


 ヴァルカンがアリアやタマたちに向かって手を振りながら駆けてくる。

 久しぶりの休み、そして旅行ということで、その表情にはワクワク感が溢れている。


「おはようございます、ヴァルカンさん!」


「あ、アナさんたちも来たのです〜!」


 アリアがヴァルカンに挨拶を返す横で、フェリがアーナルドとセドリックの姿に気づく。

 アーナルドはいつものボンデージ姿であり、珍しくセドリックは気品がありつつもラフな格好をしている。


「おはよう、みんな♪」


「旅行に誘ってくれてありがとう、久しぶりの休暇だから楽しみだよ」


 朗らかな笑みを浮かべながら、皆に挨拶をするアーナルドとセドリック。

 ちなみに、二人は恋人繋ぎで手を握り合っている。


「んにゃ〜! 二人とも朝からお熱いにゃん!」


「やだ、ヴァルカンちゃんったら♪」


「はははっ! 茶化さないでくれよ」


 ヴァルカンに茶化されて、アーナルドとセドリックは嬉しそうな表情を浮かべている。


(ふむ、慣れてしまえば微笑ましい光景だな)


 仲睦まじいアーナルドとセドリックに、タマも喉を「ゴロゴロ」と鳴らしながら、穏やかな表情を浮かべる。


 ちなみに、タマは現在ステラの胸に抱かれている。

 アリアと一緒に、朝ごはんを作るのを手伝ったご褒美に、タマを抱っこする権利を獲得したのだ。

 ゴロゴロと喉を鳴らすタマの頭を撫でることができて、ご満悦だ。


 リリはまだおねむなのか、フェリの頭の上で「すぴーすぴー」と船を漕いでいる。


「アレが今回の船にゃね、なかなか立派な船にゃん!」


 港に停泊している一番大きな客船を見て、ヴァルカンが瞳を爛々とさせる。


 今回はこの客船に乗り、まずはリラン王国と呼ばれる島国に向かい、その島で船を乗り継いで、リュウドウに到着する予定となっている。


「出発の時間も近いですし、さっそくに船に乗り込みましょう」


 アリアもワクワクした表情で歩き出し、それに皆も続く。


 船のクルーにチケットを渡し、乗船する一行。


 外からの見た目同様に、内装もなかなかに立派なものであった。


 確保した客室は三つ、それぞれ荷物を置くと、アリアたちはさっそく甲板へと向かう。


「また船の旅!」


「楽しみです〜!」


 甲板から海を眺めながら、きゃっきゃっ! とはしゃぐリリとフェリ。


「うふふん、セドリックちゃんと旅行なんて初めてねん♪」


「そうだね、アナ。思いっきり楽しもう」


 甲板の手すりに体を預けながら、手を繋ぐアーナルドとセドリック。

 二人の表情は幸せそのものといった感じで、見ているアリアたちまで幸福感に包まれる。


「ぐふふ……お祭りで美味いものをたくさん食べるのだ!」


「ステラちゃんは本当に食べるのが好きにゃね」


 盛夏祭ではどんな美味しいものが食べられるのだろう……。

 そんなことを想像しながら、ニコニコとした表情を浮かべるステラとやり取りを交わすヴァルカン。


 最前線で一緒に――タンクとアタッカーとして共闘する機会が多いためか、この二人は自然と仲良くなっている。


(ふむ、皆も……そして何よりご主人の表情が柔らかい。今回の旅はいい休養になるだろう。我が輩も少し羽を伸ばさせてもらうとしよう)


 皆を微笑ましい表情で眺めるアリアの足元で、伸びをしながらそんなことを思うタマ。

 前世で、そしてベヒーモスに転生してからも激闘続きだった彼にとっても、今回の旅は安らぎを得られるものとなるだろう。


 少しすると、出航を知らせる汽笛が鳴る。


 ゆっくりと動き出す客船に向かい、港から漁師や地元の子どもたちが手を振っている。


「あはは〜! 行ってきまーす!」


「楽しんできます〜!」


 船の上から手を振り返すリリとフェリ。


 こうして、アリアたちの旅行は幕を開ける――

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