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147話 雷の魔剣

「後方部隊、矢を放て!」


 前衛部隊が駆け出したタイミングで、ミナがさらに指示を出す。

 指示を受けた後方部隊が、敵の前衛部隊に向けて一斉に矢を放つ。


 だが――


「敵の攻撃がくるぞ! 〝雷剣〟の力を解放しろ!」


 エレボル族の前衛部隊の指揮官と思われる者が、声を張り上げる。


 すると敵の前衛部隊は一斉に禍々しい紫に染まった剣を掲げた。

 そしてその切っ先から、一斉に紫電が飛び出したではないか。


 放たれる紫電、それらが天高く伸びると、ホロの民が放った矢を焼き尽くしてしまう。


「……ッ!?」


 思わず息を漏らすミナ。

 しかし、その間にも両軍の前衛部隊は突き進み、激突を開始する。


「ぐあぁぁぁぁぁぁ――ッ!?」


 最初に敵と切り結んだホロの里の戦士が絶叫する。

 その体には、バチバチ……ッ! と紫電が纏わりついている。


 エレボル族の持つ剣、それ自体が電気を纏っているらしい。


 ホロの戦士はそのまま倒れてしまった。

 絶命してはいないようだが、小刻みに痙攣しており、とても戦える状態ではない。


 それと同じような光景が、前衛部隊の間で広がっていく。


「ステラちゃん! あの剣に触れたらマズいにゃん!」


「わかっているのだッ!」


 敵の攻撃を避けながら、やり取りを交わすヴァルカンとステラ。

 ベルフェゴールがエレボル族に与えた思われる力……思った以上に厄介だ。


「《フェアリーバレット》っ!」


「《ブランチュウィップ》〜っ!」


 後方から声がする。


 このままでは不利と判断し、ミナが中衛部隊を前線に向かわせたのだ。

 リリの光弾、そしてフェリの蔓の鞭が、敵の体を貫いてゆく。


「敵の魔法部隊が出てきた! モンスター部隊で応戦しろ!」


 エレボル族前衛部隊の指揮官が叫ぶ。

 すると後方から、T―R E Xをはじめとする恐竜型モンスターの群れが駆けてくる。

 どうやらテイムしたモンスターたちを、魔法攻撃から自分たちを守るための壁に使うつもりのようだ。


「パートナーであるモンスターを戦いに使うなど……なんて卑劣なッ!」


 怒りに震えるシエル。彼女は動物が大好きな優しき勇者だ。

 パートナーとなったモンスターを、戦いの手段として使ったことは一度もない。

 それ故に、怒りが抑えきれず、その場を勢いよく飛び出してしまった。


 だが、それは正解だった。


 なぜなら――


「凍りなさい! 《セルシウスサークル》……ッ!」


 ――敵の恐竜型モンスター部隊の中心部に、移動スキル《八艚飛び》で高速移動すると、さらにスキルを発動。


 凍てつける氷の魔法陣で、モンスターたちを氷漬けにし、その動きを奪う。


「ごめんなさい、あとで解放してあげますからね……」


 寂しげな表情で、モンスターたちに言うシエル。


 そして静かに目を瞑ると……ギン――ッッ! アクアマリンの瞳を鋭く細め、敵の前衛部隊を見据える。


「《八艚飛び》ッ!」


 移動スキルを発動し、敵の前衛部隊の中心部へと飛び込むシエル。

 そのまま先ほどと同じように、《セルシウスサークル》を発動。

 刹那のうちに、敵の前衛部隊の一部を氷漬けにする。


 ……しかし――


 バチッ……バチバチバチッ……バチッッ!


 ――氷漬けにした敵たちの体から、紫電が迸る。


 パキン……ッ!


 そんな音ともに、体に纏わりついた氷が砕け散ってしまったではないか。


「くっ……厄介な剣ですね」


 苦い表情を浮かべながら、移動スキルで後退するシエル。


 その間にも、氷結状態から解放されたエレボル族が、再び動き始める。

 よく見れば、彼らが手にした剣が、禍々しい紫の光を放っているではないか。どうやら状態異常を解除するような能力も秘めているらしい。


 シエルの言うとおり、厄介な剣だ。

 雷精霊ボルトの力を手に入れたベルフェゴールによって授けられただけの力はあるということである。


「敵の態勢を崩したぞ! 一斉に雷剣の力を解放しろ!」


 敵の前衛部隊の指揮官が叫ぶ。

 それに従い、エレボル族たちが剣を前に構える。

 そしてその切っ先から、一斉に紫電を放った。


 戦場を駆け抜ける紫電――


 このままではホロの里側の前衛部隊が壊滅してしまう……そう思われた時だった。


「闇魔力――解放……ッ」


 そんな声とともに、セドリックが前線へと着地する。

 そして漆黒に染まった長剣を横薙ぎに振るう。


 するとどうだろうか。

 敵の放った攻撃が、全て漆黒の剣身に吸い込まれてしまったではないか。


 闇属性の〝奪う〟という特性を利用し、ギュドラ戦の時のように、敵の攻撃を吸収したのだ。


「さて、今の攻撃をお返しするとしよう」


 そう言って、剣を軽く振るうセドリック。

 先ほど吸収した雷の攻撃を一つにして、敵の前衛部隊の中央へと放つ。


 自分たちの放った攻撃をその身に受け、エレボル族たちが絶叫する。


「いくのだッ!」


「今のうちに攻撃を仕掛けるにゃん!」


 掛け声とともに、ステラとヴァルカンが飛び出した。


 この期を逃す手はない。


 敵の前衛部隊を殲滅すべく、全力で武器を振るう――

【コミカライズのお知らせ】

8月3日より、マンガアプリ『マンガUP!』にて姉妹品「転生魔導王は、底辺職の黒魔術士が、実は最強職だと知っている」のコミカライズがスタートします! ぜひよろしくお願いいたします!

挿絵(By みてみん)

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