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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第四章

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141話 氷の勇者の過去

 翌早朝――


「シエル様、どこへいかれるのですか?」


 シエルが一人屋敷から出かけようとしたところで、アリアが声をかける。


「アリア、少し昔を懐かしもうと思って、思い出の場所に出かけようかと。よければ一緒についてきますか?」


 そう言って屋敷の扉を開くシエル。


 彼女の思い出の場所……。

 それがどんなところなのか気になったアリアは、タマを胸に抱き、シエルのあとについていく。


 ホロの里の中を歩くことしばらく――


 アリアたちの視界の先に、遺跡のようなものが見えてくる。


「ここです」


 そう言って、遺跡に中へと入っていくシエル。


 中は不思議な光を放つ鉱石が咲き乱れ、それらが幻想的な色に通路を染めていた。

 壁には人や、恐竜型モンスターたちがともに暮らす様子が描かれている。


 どうやら本当に何かの遺跡のようだ。


 遺跡の中を歩くこと少し――


 広大な空間が広がる区画へと辿りついた。

 そこには恐竜型モンスターの象られた鉱石の彫刻のようなものが、至る所に設置されており、その中央には祭壇のようなものが確認できる。


 祭壇らしき場所へと続く階段を登るシエル。

 アリアとタマもそのあとへとついていく。


 祭壇の中央には、幾何学的な文様が描かれていた。

 この世界の魔法陣のようなものだろうか……?


「シエル様、これはいったい……」


 なんとも言えない表情を浮かべて、紋様を眺めるシエルに、アリアが声をかける。


 するとシエルから、こんな答えが返ってきた。


「アリア、これは〝サモンゲート〟と呼ばれる、この世界の特殊な技術によって作られた、とある儀式に使う代物です」


 ――と……。


「サモンゲート……ですか?」


「ええ、これはこの世界が危機に見舞われた際に、異世界の勇者を召喚するために使われる代物です」


「え……それってつまり……」


 シエルの言葉に、アリアはとある想像をする。


「ええ、あなたの想像通り、私はこのサモンゲートによって、過去にこの世界――アークへと強制的に召喚されました」


 苦笑しながら、衝撃の事実を口にするシエル。


 彼女の言葉に、アリアもタマも絶句してしまう。

 今までアリアたちは、シエルが自主的に異世界に渡り、英雄として功績を挙げたと勝手に思い込んでいた。


 しかし、事実は違った。

 彼女はこの世界、アークに何らかの危機がもたらされた時に、この世界の住人たちによって強制的に召喚されていたのだ。


「ああ、勘違いしないでくださいね。確かに私は強制召喚されましたが、この世界の人々を恨んでなどいないですよ」


 アリアたちの反応を見て、改めて言葉を紡ぐシエル。


 彼女はむしろこの世界に召喚されたことに、感謝の念すら覚えているという。


 この世界を救うために、六精霊が一柱セルシウスと契約し、勇者としてさらなる力を手に入れることができた。

 そしてその力を手に入れ帰還することで、元の世界で魔神の黄昏が起きた時に、ジュリウス皇子などと協力し、七大魔王が一柱ベルフェゴールを封印することができたのだと……。


(ふむ。さすが、勇者の器……といったところか)


 シエルの言葉に、心のそこから感心するタマ。


 普通であれば、わけもわからない場所に強制召喚などされ、その世界の住人の都合によって戦わされなどすれば、憎しみの感情で心が満たされてしまうであろう。


 しかし、シエルはそうはならなかった。


 この世界の人々の平和のために尽力し、見事危機を救ってみせた。

 元の世界に帰還した後も、魔王封印という大きな功績を残した。


 そして、この世界にベルフェゴールが転移してしまった今、放っておくこともできたというのに、再び舞い戻ってきたのだ。


「アリア、この祭壇を使えば、いつでも元の世界に帰ることができます」


 たった一言、シエルが言う。


 この先、ベルフェゴールとの戦いで生き残れる保証はない。

 無事に元の世界に帰るなら、今のうちだと暗に忠告しているのだ。


「シエル様、わたしは剣聖……アリーシャ様に憧れて冒険者になりました。そして一人の戦士として、彼女に認めてもらうことができました」


 言葉を紡ぐアリア。


 自分の憧れた、強さと優しさを持つ剣聖アリーシャ。

 彼女の名を背負う以上、人々を守る戦いから逃げ出すなど、自分の心が許さない――


「そうですか、あなたは本当に高潔な心を持っていますね」


 優しい笑みを浮かべながら、アリアの頭に手を置くシエル。

 そのままアリアの頭を、優しく撫でてやる。


「え、えっと……」


 突然のことに戸惑うアリア。

 しかし、なぜかシエルに撫でられていると、アリアは心地よさを覚える。


「高潔といえば……タマちゃん、あなたも素敵な騎士(ナイト)です。アリアを守ってあげるのですよ?」


 アリアを撫でる手を止めると、シエルはタマに向かって言う。


「にゃん!」


 タマは(任せろ!)と、いった様子で、元気に鳴いてみせる。


 高潔な心を持つ二人と一匹は、改めて絆を深めるのだった――

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