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136話 アリアの成長

「あれ? おかしいの!」


 迷宮三層目へと足を踏み入れたところで、マイが声を上げる。


「どうしたんだい、マイちゃん?」


「セドリックおじさま! ベルフェゴールの……ベルフェゴールの反応が遠ざかっていくの!」


 セドリックの問いに、コンパス型の魔道具を見ながら答えるマイ。

 それを聞き、皆、驚愕に目を見開く。


「この迷宮は今いるこの場所が最終階層です。なのに反応が遠ざかっていくとは、いったいどういう……」


 顎に指を当て、考え込むシエル。


 ここまでの道のりで、他に抜け道などのルートはなかったはずだ。

 だというのに、最終階層まできてベルフェゴールの反応が遠ざかっている……。

 理解できない事象だ。


「とりあえず先に進むにゃん。そうすれば何かわかるかもしれないにゃ」


「……そうですね、ヴァルカン。ちょうど敵も現れたことですし」


 ヴァルカンの言葉に頷きつつ、視線を迷宮の奥へと向けるシエル。


 すると奥から、またもや二体のモンスターが現れた。


 一体は巨大なハサミような足と、先端が針のように尖った尻尾を持つ……いわゆるサソリ型のモンスターだ。


 もう一体は、先ほどのサイバテックR E Xのような形をしている……が、その頭は二つあり、臀部からは尻尾の代わりに大蛇のようなものが生えている、何とも不気味なモンスターだった。


「〝スコーピオノドン〟と〝サイバテックキメラ〟ですか。面倒ですね」


 シエルが《セルシウスブレイド》を構えながら、敵を見据える。


「面倒とは、どういう意味ですか、シエル様?」


「アリア、あの二体は毒を持っています。即死性の毒なので気をつけてください」


 アリアの問いに、敵を視線で牽制しつつ答えるシエル。


 スコーピアノドンは尻尾の針に、サイバテックキメラも、同じく尻尾型の大蛇の牙の部分に毒があるとのことだ。ちなみに二体ともこの世界のAランクモンスターらしい。


「タマ、お願いします!」


「にゃん(了解だ、ご主人)っ!」


 可愛いらしい声で咆哮するタマ。


 すると皆の体が黄金色の輝きに包まれる。

 固有スキルが一つ《獅子王ノ加護》を発動したのだ。


 これで毒への耐性はついた。

 敵二体の毒攻撃を恐れることはないだろう。


「この力、やはり素晴らしいスキルですね」


 微笑を浮かべると、シエルが《セルシウスブレイド》を手に飛び出した。

 狙うはスコーピオノドンだ。


「それでは、わたしはもう一方の敵を……!」


 アリアもテンペストブリンガーを構え、サイバテックキメラに襲いかかる。

 タマもアリアをサポートできるように、彼女のあとを追う。


「《セルシウスネイル》!」


 横一閃――


 シエルが氷の斬撃を繰り出す。


 鋭い攻撃がスコーピオノドンを襲うが、見た目に反してその動きは素早く、攻撃は掠る程度だった。


 しかし――


『ギュル……ッ!?』


 ――驚愕の声を漏らすスコーピオノドン。


 ハサミの形をした片腕部分がみるみるうちに氷結していくではないか。

 シエルの攻撃――《セルシウスネイル》には、触れただけで対象を氷結させる効果があるのだ。


 このままでは全身を凍らされてしまう……ッ!


 スコーピオノドンはそれを理解したようだ。

 もう片方のハサミの腕で、今まさに氷結しようとしている方の腕を、根元からバッサリ切り捨てたではないか。


 その判断力、さすがAランクモンスターというべきだろうか。


「ハァァァァァァ――ッ!」


 声を張り上げ、サイバテックキメラへと跳躍するアリア。


 敵の頭上に達すると、テンペストブリンガーの風操作能力を活かして一気に急降下。

 二つあるうちの片方の脳天に、左手のテンペストブリンガーを突き立てようとする。


『シュルルルッ!』


 その刹那に響く唸り声、サイバテックキメラの大蛇型の尻尾が、アリアに向かって牙を剥く。


「にゃあ(やらせるか)っ!」


 既にタマは動いていた。


 新たに手に入れた《属性操作砲》を発動し、そのうちの一つ――《ウォータービット》を操作し、大蛇の顎門の中を撃ち抜いた。


『ピギャァァァァァァッッ!?』


 甲高い声を上げる大蛇。

 そしてそのまま、ダランと地面に落ちてゆく。

 どうやら活動機能を失ったようだ。


「ナイスです、タマ!」


 タマのサポートに称賛の声を送るアリア。


 そして敵が怯んだ隙を突き、空中で身を捻り、落下するとともに二つの斬撃を放つ。

 二つの頭の喉笛を掻っ切ることに成功。


 そのまま着地すると、バックステップで距離を取る。


『グル……ッ!?』


『ギ、ガ……ッ』


 苦しげな声を漏らす、サイバテックキメラの二つの頭。

 やがて出血により、その四つの眼から生命の光が失われた。


「初めての敵……それもAランクモンスターを相手に、よくやりますね」


 カツカツと足音を響かせ、アリアへと近づいてくるシエル。


 その後ろでは、スコーピオノドンが完全に氷結し、氷の彫刻のようになっていた。


(ふむ、やはりご主人の戦闘センスは格段に向上しているな。初めての敵相手にここまで戦えるのだからな)


 初めはゴブリンメイジ相手に、命の危機に晒されることすらあったアリア。


 それが今では《アクセラレーション》や《セイクリッドブレイド》などを使わずとも、Aランクモンスターを倒してしまえるほどになっている。


 その成長が、タマは心の底から嬉しいのであった。

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