128話 V Sエンシェントゴーレム
「力比べなのだ! 《ドラゴニックパワー》ッッ!」
迫りくるエンシェントゴーレムに、ドラゴニュート化、さらに派生スキルを発動し、チャージアタックを仕掛けるステラ。
そんなステラに、エンシェントゴーレムは巨大な拳を振り下ろす。
ガゴン――ッッ!
と、鈍い音が響き渡る。
ステラのカラドボルグと、エンシェントゴーレムの拳が激突したのだ。
カラドボルグの性能のおかげで、ステラに衝撃によるダメージは通らない。
だがしかし、エンシェントゴーレムの絶大な膂力により、ステラの体が大きく後ろへと後退する。
「ぐぅぅぅぅ! 我が力負けするとは、なんてモンスターなのだ!」
苦しげな声を漏らすステラ。
しかしその言葉とは裏腹に、表情は楽しげだ。
自分の力を超えるモンスターの存在に、闘争本能が燃え上がった、といったところだろうか。
「喰らうにゃん!」
ヴァルカンが急接近し、ミョルニルを横薙ぎに振り払う。
咄嗟に反対の腕で防御するエンシェントゴーレム。
さすがはSランクモンスターだ。
頑丈ボディ、そして巨体を誇るというのに、機敏な動きをしている。
「いくわよ! 《フェアリーバレット》!」
「ここです! 《ブランチュウィップ》〜!」
後方から、リリとフェリがスキルを放つ。
リリは光弾を連発で、フェリは木の鞭を四本だ。
曲がる四つの光弾がエンシェントゴーレムの側面に襲いかかり、バランスを崩そうと衝撃を与える。
そして木の鞭が四肢に絡みつき、同じくエンシェントゴーレムのバランスを崩す。
四人の攻撃に、とうとうその場で大きな音を立てて転倒するエンシェントゴーレム。
「今にゃん!」
「喰らうのだ!」
ヴァルカンとステラが跳躍し、ミョルニルとクラウソラスを振り上げる。
ヴァルカンはエンシェントゴーレムの胸を、ステラはモノアイを狙い、それぞれ武器を振り下ろす……が――
『グゴゴ……《エンシェントシールド》……ッ!』
――呻くような声で、その名を口にするエンシェントゴーレム。
するとエンシェントゴーレムとヴァルカン・ステラの間に、金属と思われる大盾が現れ、それぞれの攻撃を防いでしまったではないか。
「くっ……攻撃を防がれたのだ!」
「浮遊する二つの大盾、厄介にゃん……」
攻撃を防がれたと見るや、ヴァルカンとステラは大盾を蹴り、バックステップで距離を取る。
『グゴゴゴゴ……』
と唸り声を上げ、立ち上がるエンシェントゴーレム。
そしてその周りを、二つの大盾がエンシェントゴーレムを守るように浮遊する。
「少し戦い方を変えるのだ!」
そう言って、ステラがエンシェントゴーレムに向かって駆け出した。
やはりというべきか、敵は大盾を操作し、ステラの行く手を阻もうとしてくる。
エンシェントゴーレムの大盾と、ステラのカラドボルグが激突する。
僅かに押されるステラ。
するとそのまま、彼女はバックステップで距離を取り、再び突撃を仕掛ける。
『グゴゴ……ッ!?』
ステラの奇怪な行動に、戸惑った声を漏らすエンシェントゴーレム。
「なるほど、そういうことにゃね!」
エンシェントゴーレムとは反対に、ヴァルカンはステラの行動の意味を理解したようだ。
そして――
「リリちゃん、フェリちゃん! ステラちゃんの攻撃を徹底的にサポートするにゃん!」
――と、妖精二人に向かって指示を出す。
「了解よ、ヴァルカン!」
「全力でサポートするのです〜!」
ヴァルカンに応えると、リリとフェリはスキルを駆使して、エンシェントゴーレム本体に攻撃を仕掛ける。
『グゴォォォォォォ――ッッ!』
二人の攻撃を受け、エンシェントゴーレムが雄叫びを上げる。
そして浮遊するもう一つの盾を操作し、二人に叩きつけようとしてくる。
「させないにゃん!」
ヴァルカンが飛び出した。
そしてリリとフェリに襲いかかる大盾を、ミョルニルで弾き飛ばす。
リリとフェリが攻撃を仕掛ける。ヴァルカンが二人を守る。
そしてその間に、ステラがもう一つの大盾に何度も何度も、カラドボルグによるチャージアタックを仕掛ける。
『グゴォォォォォォォ――ッッ!』
逃走にしびれを切らしたのか、エンシェントゴーレムが大盾の操作を止めて、そのままステラに全速力で接近する。
リリとフェリによる攻撃も無視するつもりのようだ。
「ぐはははは! かかったのだ!」
高らかに笑うステラ。
そして自分も、エンシェントゴーレムに向かって駆け出した。
再びエンシェントゴーレムの拳と、ステラのカラドボルグが激突する。
……しかし、結果は先ほどとは違った。
ステラは敵の拳を受け止めず、タマに教えてもらった盾捌きを活かし、そのまま弾いた。
『グゴッッ!?』
驚愕の声を漏らすエンシェントゴーレム。
そして次の瞬間だった――
「喰らうのだッッッッ!」
――敵のガラ空きになった胸元に向け、ステラがクラウソラスを突きつけた。
クラウソラスの剣身が輝く。
そしてその剣身から、今まで溜めた分の衝撃波を一気に開放した。
『グゴァァァァァァァァァァッッ!?』
悲鳴を漏らすエンシェントゴーレム。
その胸元には、いくつもの亀裂が走っていた。
この一撃を与えるために、ステラは何度もチャージアタックを仕掛け、カラドボルグに衝撃を蓄積させていたのだ。
「フェリちゃん、頼むにゃん!」
「了解です! 《ブランチュウィップ》〜っ!」
ヴァルカンの言わんとすることを理解したフェリは、四つの木の鞭を操作し、敵の四肢の自由を奪う。
「私の全力全開を喰らうにゃん!」
ヴァルカンが跳躍する。
そして亀裂の入ったエンシェントゴーレムの胸元に、ブースト機能を全開にしたミョルニルを振り下ろした。
ズドン――ッッ!
という轟音と共に、エンシェントゴーレムの胸元は砕け散った。
そしてその胸の奥に、紅色に輝く宝玉のようなものが覗く。
この宝玉のようなものこそ、エンシェントゴーレムの動力源――〝核〟だ。
「リリちゃん!」
全力の一撃を放った衝撃で、後方へと吹き飛びながら、ヴァルカンが叫ぶ。
「任せなさい! 《フェアリーバレット》――ッッ!」
狙いを定め、光弾を放つリリ。
ベルゼビュートによる座学で、その精度を高めた一撃が見事にエンシェントゴーレムの核を撃ち抜いた。
『グ、ゴォォォォォォ……ッ』
静かに、その動きを停止するエンシェントゴーレム。
それを見届けたところで――
「やったのだ!」
「わーい! 勝利よ!」
「Sランクモンスターに勝っちゃったのです〜!」
ステラ、リリ、フェリが喜びの声を上げる。
ヴァルカンも「みんな、お疲れ様にゃん!」と、皆に労いの声をかけるのだった。
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