108話 母との再会
「おお! アリアちゃんじゃないか、久しぶりだな!」
「そ、そこにいるのは! 剣聖様ではないですか!?」
夕刻――
数時間の会議を終えた後、アリアはタマを抱っこしながら、ヴァルカンにステラ、リリとフェリ、そしてアリーシャを連れ里の中を歩いていた。
里の中のあちこちから、知り合いのエルフたちに声をかけられる。里の恩人であるアリーシャの存在にも、皆すぐに気づいたようだ。
アリアもアリーシャも、皆に笑顔で手を振りながら応え、とある場所へと向かっていく。
そして数分後――
「あら……まぁ、アリア!」
「ただいま戻りました! お母様!」
――とある民家へとたどり着いたアリアたち。
そんなアリアたちを一人の美しいエルフが出迎えた。
彼女はアリアを見るや否や、腕を広げてアリアを優しく抱擁する。
「んにゃ〜〜〜〜!?」
と、ここで、タマが驚いた声を上げる。
タマはアリアの胸に抱っこされたままだった。
そしてアリアを抱擁した美しきエルフも、アリアに負けないくらいの豊かな胸の持ち主だった。前と後ろから柔らかメロンに挟まれて、びっくりしてしまったのだ。
「あらあら、ごめんなさいね? 子猫ちゃん」
エルフの女性は慌てて離れると、タマの頭を優しく撫でる。
タマは(ふぁ……何だ、このなでなでテクは……とても落ち着く……)と、あまりの心地よさに目を細める。
そんなタマを見てエルフの女性は「ふふふっ……」と優しい笑みを浮かべる……その最中であった――
「え……っ? け、剣聖様……!?」
タマを撫でながら、アリアの後ろに立っていた皆に視線を向けた彼女が驚いた声を上げる。その場にアリーシャがいたのだ。その反応は当然である。
「久しぶりですね。たしか、アリアちゃんのお母さん……〝レオナ〟さん……でしたっけ?」
「まぁ! 私の名前を覚えていてくださったのですね!」
「ええ、アリアちゃんはとても印象的な子でしたし、そのお母さんの名前くらいは覚えてます。それに……私の母と同じ名前でしたからね」
アリーシャは優しい笑顔で、目の前の女性――アリアの母、レオナにそう答えるのだった。
(ほう……剣聖アリーシャの母と、ご主人の母君は同じ名であったか。二人とも容姿が何となく似ている上に、母の名まで同じとは……面白い偶然である)
白磁の肌、プラチナの髪、アイスブルーの瞳、そして柔らかな雰囲気……いくつかの同じ特徴を持ったアリアとアリーシャではあるが、母親の名前まで同じであることに、タマはそんな感想を抱く。
レオナ――アリアと同じ白磁の肌、プラチナの髪、それと……アリアよりも深い青……マリンブルーの瞳を持った色気のある美女エルフだ。
「へ〜! あなたがアリアのママなのね!」
「とっても綺麗な人です〜!」
リリとフェリが、アリアの母、レオナを見てはしゃいだ様子を見せる。
さすがアリアの母だ。邪悪な存在に敏感な妖精族の二人が、警戒するそぶりを一切見せず、彼女に近づいてくる。
「まぁまぁ! 可愛い妖精さんたちね! 他にもお友達の方がいるみたいだし、紹介してもらってもいいかしら?」
「はい、お母様! まず、この子はタマ。私のペットであり冒険のパートナーであるエレメンタルキャットの赤ちゃんです!」
「にゃ〜ん(よろしく頼む、ご主人の母君よ)!」
「まぁまぁ、可愛いパートナーさんね。よろしくね、タマちゃん?」
そう言って、レオナが再びタマの頭を撫でると、タマは「ふにゃ〜」と心地良さげな声を上げ、喉をゴロゴロ鳴らす。
「私はヴァルカンにゃ! アリアちゃんの冒険者仲間をしてるにゃん!」
「我はステラ! アリアに拾ってもらった同じく冒険者仲間なのだ!」
「私はリリ! アリアのお友達よ!」
「私はフェリといいます〜! 同じく、アリアさんのお友達です〜!」
タマの紹介が終わったところで、順番に自己紹介し始める四人。
それぞれに感じよく応えるレオナ。
そんなレオナが疑問を口にする。
「ところで、どうして剣聖様がアリアと一緒にいらっしゃるのでしょうか……?」
と――
「レオナさん、それは私がアリアちゃんの師匠をやっているからです」
「え? ……え!? 剣聖様がアリアのお師匠様!? いったいどういう……」
予想だにしない答えに、レオナは動揺した様子を見せる。
そんな彼女に、アリーシャが苦笑しながら、アリアと一緒にこれまでの経緯を説明していく。
アリアが魔族に打ち勝ったこと、グラッドストーンを救いAランク冒険者になったこと、その実績が認められ帝国勇者団に加入したこと、その後アリーシャに鍛えられ、四魔族ヴァサーゴの呼び出した召喚獣の討滅に成功した事実を。
「アリア…………この短い期間に、そんなに成長していたのね……」
全てを聞き終わったレオナが、信じられないような娘の成長ぶりに、そして感動のあまり、瞳を潤ませながらアリアの頭を撫でる。
「お母様……」
アリアはそれに、皆の前で恥ずかしい……といった様子を見せつつも、やはり嬉しいのは隠せず、表情を綻ばせて大人しく頭を撫でられるのだった。




