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102話 束の間の休息と再び動き出す四魔族

「なるほどにゃん、アリアちゃんが最後に放ったスキルは派生スキルだったにゃ〜」

「はい。《セイクリッド・ブレイド》の派生スキル……《エクスキャリバー》。まさかあのタイミングで、目覚めるとは思ってもみませんでした。それも無意識で発動してたなんて……」


 オルトロス、そしてサイクロプスとの激戦を終え、ひとまずアリアたちは都市のギルドへと戻ってきた。

 最後にアリアが放ったスキル……それが派生スキルであることと、あのタイミングで目覚めたことをアリアがヴァルカンたちに説明する。


「派生スキルに目覚める条件は元となるスキルの習熟、そして感情の爆発などが挙げられる。今の習熟度で言えば、危機に追い込まれた時、派生スキルに目覚めるかもしれないとアリーシャは言っていたな」


 同じ席で酒を飲んでいたジュリウス皇子が、思い出しながら言う。


「アリーシャ様……わたしが今回の戦いで派生スキルに目覚めることも読んでいたのでしょうか?」

「まぁ、あいつならありえる。何せ舞夜の嫁だからな。何でもありだ」


 アリアの質問に、ジュリウス皇子は苦笑しながら答える。

 そんなジュリウス皇子の視線が、アリアの胸に抱かれるタマへと移る。

 アリアの目覚めた力も気になるところではあるが……それ以上に気になるのはタマのことだ。


 エレメンタルキャットは、たしかに成体になれば二メートルを超える大型のネコ科動物だ。

 しかし、そこまで育つには長い年月を要する。タマのように突然変身するようなことはありえないのである。


「タマ、あなたはエレメンタルキャットではなく、もしかして聖獣様なのですか……?」


 胸の中で目を細めてうつらうつらしているタマの頭を撫でながら、アリアはそんな風に問いかける。

 しかし、タマは(何のこと?)とでも言いたげな表情で「にゃ〜ん?」と小首を傾げるのみだった。


「まぁ、何はともあれ、今回はアリアとタマのおかげで全員無事だった。今それを祝うとしよう。猫と少女に頼りきってしまうとは、勇者として情けないがな……」


 少し自嘲気味に笑いながら、ジュリウス皇子はグラスを掲げる。

 それに応じながらも、ヴァルカンとアリアは――


「そんなこと言わないにゃん、殿下」

「そうです。ジュリウス殿下が敵の攻撃から私たちを庇ってくれたからこそ、今回の勝利はあったのですから」


 ――と、彼を励ます。


(まっすぐなヤツらだ。これからこいつらはもっと強くなるだろうな)


 ジュリウス皇子は、アリアたちを見つめそんなことを思うのだった。


「グハハハハハ! 戦った後の肉は最高なのだ!」

「はわ〜、パンケーキも最高よ!」

「ほっぺが溶けちゃいそうです〜!」


 同じ席で、ステラは両手の骨つき肉にかぶりつき、リリとフェリはパンケーキやフルーツポンチといったスイーツの数々に夢中になっている。


 命がけの激戦を必死に戦いぬいたご褒美として、好物を好きなだけ食べさせてもらっているのだ。

 戦場では凛々しく歴戦の戦士のように戦っていたのに、好物を前にすれば幼い少女のようである。


 ヴァサーゴを魔界に逃してしまったのは痛手だった。

 しかし、ヴァサーゴが配下を揃え、再び動き出すには時間がかかるだろう。ジュリウス皇子には、ヴァサーゴが次にする行動がある程度読めている。


 そしてこの都市で待機していれば、いずれ、ベルゼビュートによる新たな情報がアリーシャ、もしくはその使いの者によりもたらされるだろう。それらを照合し、次の行動へと移るつもりだ。


 だが、今は目の前の少女たちに、勝利の余韻を楽しませてやるべきだ。

 ジュリウス皇子はあと一杯だけ彼女たちに付き合うと、用意していた高級宿へ一人戻り、限界を超えて酷使したボロボロの体を癒すべく、ベッドに倒れ込むのだった。



 魔界のとある城の一室で――


『オルトロスとサイクロプスとの繋がりが途絶えた。まさかあの程度の者たちにやられてしまうとは……』


 ――四魔族が一柱、ヴァサーゴは忌々しげな表情を浮かべながら鏡の前で呪詛を吐いていた。召喚獣と術者には魔力による絆が存在する。そして、それを感じられなくなったということは、召喚獣が息絶えたということに他ならない。


 弱体化した勇者と、特に何の力も感じることができなかった少女たちによって、自分の生み出した召喚獣がやられたであろう事実に、ヴァサーゴは動揺を隠せずにいた。


『まぁいい。私さえ生き残れば、そして〝アレ〟さえ手に入れば……魔王マモン様を復活させることは可能だ。見ておれ人間どもめ……』


 ヴァサーゴは壮絶な笑みを浮かべると、静かに動き出すのだった……。

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