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99話 召喚獣

「いけません! もし、ヴァサーゴが都市に出現したら……!」


 最悪の事態を想定し狼狽するアリアに、ジュリウス皇子は「落ち着け、アリア! ヤツが転移したのは魔界だ!」と言葉をかける。そして今は目の前の敵に集中しろと注意しつつ、改めてグレートソードを構える。


「にゃん(《獅子王ノ加護》)!」


 皆が武器を構えるのと同時、タマは今まで温存していた固有スキル、《獅子王ノ加護》を発動する。アリアたちの体を黄金色の輝きが包み込み、能力を格段にアップさせる。

 魔王の加護を受け強化されたという、オルトロスとサイクロプスを前に、出し惜しみはなしというわけだ。


「アリアとタマは俺とオルトロスを! ヴァルカンとステラは、サイクロプスを頼む! リリとフェリも基本はヴァルカンたちを援護しろ! その後は臨機応変にいくぞ!」


 指示を出しながら、グレートソードを構えオルトロスに向かって駆け出すジュリウス皇子。アリアたちもそれぞれ応じると、一斉に敵へと攻撃を仕掛ける。


「唸れ、《カリバーン》!」


 オルトロスにグレートソードを振りかぶるジュリウス皇子。彼のグレートソードが眩い光を放つ。神聖属性スキル《カリバーン》――武器に強力な神聖属性を付与する勇者のみが持つスキルだ。


『ゴルルルルルッ! 《ヘルブレイド》!』


 対し、オルトロスも叫び声を上げるとスキルを発動。右の肩から業火を思わせる色をした剣のようなものが生えた。そしてそれでジュリウス皇子の剣撃を迎え撃ち拮抗――否、僅かにジュリウス皇子の体が後退する。どうやらタマの《獅子王ノ加護》の恩恵を受けても、パワーはオルトロスに分があるようだ。


「《アクセラレーション》……!」


 ジュリウス皇子がオルトロスと切り結ぶ最中――


 アリアが固有スキル《アクセラレーション》で加速する。目にも留まらぬ速さに、オルトロスは思わず『ゴルルルルッ!?』と驚愕したかのような声を漏らす。


 この強大な敵を相手に、長期戦は不利。全盛期に比べて弱体化してしまったジュリウス皇子の体力を考えれば尚のこと。

 そう判断し、アリアは最初から全力の攻撃を仕掛けるべく、トップスピードでオルトロスの側面へと回り込み――


「《セイクリッド・ブレイド》ォォォォッ!」


 ――彼女の有する奥の手、神聖属性古代スキル《セイクリッド・ブレイド》を発動する。


 しかしその刹那、オルトロスはアリアから迸る膨大なマナを感じ取ったのか『グルッ……! 回避……ッ!』と短く言葉を吐くと、とんでもない速さのバックステップで《セイクリッド・ブレイド》を回避してしまう。


「にゃん(読んでいたぞ! 喰らえ《ウォーターハウリング》)っ!」


 タマが愛らしい声で叫ぶと、水属性の《属性咆哮》を発動。高圧縮された水の咆哮がオルトロスの左肩に直撃した。


『グルルルルルルルァァァァァ……!? 傷……俺ニ傷、ユルサナイ!』


 肩を撃たれ、怒り心頭といった様子で呪詛を吐くオルトロス。しかしタマは敵の傷を見て(くっ……《ウォーターハウリング》でもこの程度か……!)と悔しげに顔を歪める。


 直撃したというのに、そして《獅子王ノ加護》で強化していた《ウォーターハウリング》だったというのに、オルトロスの肩からは僅かに血が滲む程度の傷しか確認できなかったのだ。


 そんなタマにオルトロスが咆哮を上げ真っ直ぐに向かってくる。どうやら傷を負わせたタマに標的を絞ったようだ。

 

 一方――少し離れた場所でも激戦が繰り広げられていた。


「にゃぁぁぁぁぁ! 喰らうにゃん!」

「我の新たな力、見せてやるのだ! 《ドラゴニックパワー》ァァァァ!」


 ヴァルカンがミョルニルによる攻撃を繰り出す。そしてステラがジュリウス皇子との特訓で習得した新たな派生スキル、《ドラゴニックパワー》を発動しながら、サイクロプスへとチャージアタックを仕掛ける。


《ドラゴニックパワー》は、ステラの奥の手である《ドラゴニックパワー・フルドライブ》から派生したスキルだ。


 後者がマナのほとんどを使い果たし、瞬間的に爆発的なパワーを発揮するスキルであるのに対し、前者はほどほど……といってもドラゴン級のパワーを授け、マナの消費量を抑えて発動する長期戦向けのスキルだ。


 サイクロプスがヴァルカンの一撃を拳で迎え撃ったのを見て、ステラは短時間での決着は難しいと判断した。


 そこで二つのスキルのうち、《ドラゴニックパワー》を使うことを選択したわけである。


『……ヌゥ……ッ、先ホドヨリモ、パワーガ上ガッテイル……!』


 ヴァルカンの一撃を拳で受け止めながら、サイクロプスが唸りを上げる。その横っ腹に、ステラが強化した膂力で放つチャージアタックを叩き込んだ。


『ヌゥゥゥゥゥゥゥ……ッッ!』


 と、僅かにバランスを崩すサイクロプス。そしてその隙を逃さない者が二人いた。


「いくわよ! 《フェアリーバレット》!」

「今です! 《ブランチュウィップ》〜!」


 リリとフェリだ。二人同時にスキルを発動し、サイクロプスに仕掛ける。リリの《フェアリーバレット》はサイクロプスの目玉に、フェリの《ブランチュウィップ》は脚や腕に襲い掛かる。


『遅イ……ゾォォォォッ!』


 しかし、僅かにサイクロプスが動くのが早かった。二人の攻撃が当たるその刹那――敵はバランスを崩しつつもその場から跳躍した。そしてあろうことか、後衛であるリリとフェリのいる方に着地しようとしている。


「させないのだ! クラウソラスッ!」

「にゃん(《エーテルミサイル》)……ッ!」


 やらせてなるものか! 着地しようとするサイクロプスに、ステラはチャージアタックの際に吸収した衝撃を。


 オルトロスを相手にしつつも、全体の状況を把握していたタマは、新たに手に入れた固有スキル《属性弾》が一つ、《エーテルミサイル》を放ち、敵を大きく吹き飛ばすことに成功する。


 空中で完全にバランスを崩したサイクロプスは、派手な音を立てて近くにあった大岩に体を打ち付けた。


 しかし……それでも僅かなダメージしか与えることができなかった。サイクロプスも、オルトロス同様に異様なほど強靭な体を有しているようだ。


 戦いはさらに激化する――

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