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羽根刃  作者: 蒼赤羽根
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第二章「恋心」1


ピンク色の髪の少女は草木のクッションの上で、レイルのローブに包まれすやすやと寝息をたてていた。

その様子を木に寄りかかりながらレイルは見つめる。

二人は森の中で休んでいた。

レイルは寝ずの番をしていた。

人目はないが、野生動物が潜む危険な森である。

少女はロイ・ラントと名乗った。

しかし名前は小さい声で教えてくれても、どこが彼女の故郷なのか、どこに彼女の帰る場所があるのかは、たずねても顔をこわばらせるだけで答えてはくれなかった。


これからどうするか...


レイルは息を吐いた。





朝日がのぼる。

小さい村に足を踏み入れる。

「おい...あれ...」

まばらにいた人々がこちらに視線を向ける。

「あの黒いローブ...羽根刃じゃ...ねぇのか...?」

かまわず歩を進めるが、腕が後ろに引かれる。

レイルの手を握りついて来ていたピンク色の髪の少女ロイ・ラントが身をすくませ足を止めていた。

「おい羽根刃!この村から出てけ!」

「ここは羽根刃が来るところじゃねぇ!」

「平和を壊すな!」

そんな彼女に人々が遠巻きから言葉を投げつける。

今、羽根刃のローブを着ているのはレイルではなくロイである。

しかし羽根刃に対しこんなに敵意を向けられるのは、大鳥国の敷地内から出た証拠だ。

大鳥の民や羽根刃の事をよく知っている人間は、黒いローブを目にしただけで震え声も出なくなる。

「早く出てけっ!」

村の一人がロイに向かって石を投げる。

しかし彼女に届く前にレイルがその石をつかみ取った。

手のひらに石を持ったまま彼は人々に視線を向ける。

羽根刃の衣装を着ているロイではなく、レイルのほうにただならぬ気配を感じたのか人々は罵声を止めた。


「宿を提供しろ」


レイルの言葉に人々の間が開け、そこから年老いた老人が姿を現した。

「お主らはいったい何者じゃ?その娘は羽根刃ではないのか?」

「羽根刃は俺だ。彼女は普通の人間だ」

レイルが答えると人々はどよめいた。

「分かった。事情は知らんが空き家を提供しよう...じゃからこの村にはいっさい手を出さんでくれ...」

「約束する」

老人の言葉にレイルはうなずいた。


ロイとレイルは提供された民家に入る。

部屋は二つあり、そのうちの一部屋に台所が付いており庭に風呂があった。

「あっ...」

ロイがか細い声をあげる。

風呂は塀に囲まれ外からは見えないが、部屋二つの小窓からは覗ける仕様になっていた。

「しばらく外出する。俺が戻るまでこの家から出るなよ。鍵も掛けろ」

レイルはローブを身に着ける。

提供されたドレスに着かえたロイは、心細そうに彼を見る。

「俺がいない間、風呂に入ればいい」

レイルはそう言うと部屋を出た。

提供された食料はしばらく分ある。

村人も一般人である彼女には手を出さないだろう。

羽根刃の衣装を身にまとった事により、さらに人間離れした空気を放つ彼に、村人たちは道を開けた。


「何か仕事はないか?」


レイルは長老の家に訪れていた。

さっき人々の中でレイルと対面した同じ老人が、椅子に座りテーブルに肘をつけながら困ったようにうなっている。

本当は殺しの仕事がないかどうか聞きたかったが、さすがのレイルもそこは避けた。

彼は一文無しである。

このままロイを故郷に帰したとして、彼女をここまで助けてしまった自分は大鳥国には戻れない。

だからその後の生きる金が必要だった。

少女の故郷もすぐに見つかるとはかぎらない。

今回は運良く民家を提供してもらえたが、ずっとこのままというわけにもいかないだろう。

「残念ながらお前さんができるのはないねぇ...仕事を探すなら隣の村に行くしかないのぅ...」

長老は息を吐いた。

「隣街の場所を教えてくれ」

レイルは椅子から立ち上がった。


立派な石畳を身なりのいい一市民が歩く。

路地裏からぬっと手が出てその一市民の口元が覆われる。

有無を言わさず路地裏に引き込まれる。

「質問に答えろ、大声出す素振りを見せたら即殺す」

背後から若い男の声が耳元でささやいた。


キイと店の扉の錆びた音が鳴る。

その音に店の主人が顔をあげる。

その顔が青ざめた色に染まっていく。

「なっ...あんた...まさかっ!」

「殺しの仕事を紹介しろ」


フードで顔を隠しローブを身にまとった男が静かに口を開いた。





「遅くなった」

レイルが家に戻ると明かりのない暗い玄関が出迎えた。

部屋をのぞくとロイがベッドに横たわりかすかに寝息をたてていた。

なんとなく様子を見ようと彼女のそばに立った。

かすかにはだけた布団から彼女の寝間着が覗いていた。

寝間着は胸が大きく開いた仕様になっており、そこから谷間が見えていた。

なんとなく目線をそらす。


ぐすんっ...


少女の寝息がすすり泣きに変わった。

レイルは床に膝をつき彼女の顔をのぞき込む。

少女の頬から涙が伝っていた。

怖い夢でも見ているのだろうか。

気が付いたら少女の涙を指先で拭っていた。

「んっ...」

少女がうっすらと瞼をあげる。

レイルは指をどけた。

ロイは目をこすりながら、のそのそと起き上がり彼のほうをぼうっと見つめた。


起こしてしまった...



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