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羽根刃  作者: 蒼赤羽根
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第八章「虚無」5


「ふっ...あははははははははははっ!お前っ!毎回毎回ロイに惚れすぎなんだよっ!クソ天使っ!」

悟理の高笑いは止まらない。

「けどなんですかぁ?!ロイがダメだって知ったら、次はエレナに乗り換えたんですかぁ?ほんとお前ってやつはっ...!」

「悟理...達也...」

そんな彼とは正反対の落ち着いた声音でレイルは声をかける。

「俺を、ディセンションさせろ...」

悟理は笑い声を止める。

「こんくらいじゃ、満足しないだろ?もっと俺を苦しめたいんだろ?なら、ディセンションさせろ、そうすればお前が唯一やり残したことを成し遂げられる...」

その言葉を待っていたかのように悟理は濃い笑みを浮かべた。

「言われなくてもやってやるよ」

真っ暗闇だった背景が一転した。

うめき声と叫び声が耳を支配し、ガラス張りの床の下からオレンジ色の明かりがレイル達を照らす。

下を見ると、悟理が生きていた頃創ったままと、ほとんど変わらないディセンション部屋で、地獄絵図が展開されていた。

ここはレイルが転生していた気の遠くなるほどの歳月の間も休まず、拷問と虐殺が繰り返されていた。

「最初から俺にとって都合のいい設定だったら、俺、けっこういい人間のままだったと思うぜ」

レイルの横でディセンション部屋を見下ろしながら、悟理がつぶやく。

「少なくても、こんなもん見て悦に浸るようにはならなかったかもな...お前がもっとちゃんとしてれば...ー」

「ロイ!」

悟理のセリフをレイルの動揺した声がさえぎった。

視線の先で、ロイが複数の男に囲まれていた。

「悟理達也!早く俺をディセンションさせてくれ!」

エレナの亡骸を抱いたまま、必死に訴える。

そんなレイルを悟理は冷めた目で見つめ、

「やだね」

と一言言い放った。

「お前、俺の言葉さえぎっただろ、ロイ!って、その後ディセンションさせてくれって命令してさー...すっげーうぜぇ。神に向かってその態度、どーにかしろよ」

啞然とするレイルにかまわず、さらに言葉を続ける。

「罰として俺がムカついたさっきのお前の言葉一文字につき、24時間、ロイが拷問虐殺されてるとこ見続ける刑にしてやるよ。ロイ!で三文字、悟理達也!早く俺を~は漢字をひらがなに変換してビックリマークも含めて26文字。計29×24時間。お前が体感する時間ずっとあれ見続けろ。目ぇそらすなよ。目ぇそらしたり一瞬でも瞬きした0.1秒ごとに、さっきの29×24時間さらに付け足し~。あ、今俺の方向いてロイから目ぇそらしてるからその分も付け足し~」

悟理の言葉にレイルは素早くロイに視線を戻した。

悟理は椅子を出現させ、そこに座りワインや食べ物も出し、くつろぎはじめた。

途中、レイルの気を引こうとワインを彼の頭の上にかけたり、目の前で手を振ったりした。

しかしレイルはずっと苦痛に歪むロイを見続けた。





沢山の男たちが群がってくる。

また嬲り殺される。

ピンク色の髪の少女は恐怖に怯え逃げ惑う。

彼女の周りでは同じように拷問虐殺される人々がうごめき、叫び、見悶えていた。

何度も何度も途方もなく生を与えられるたびに目にしてきた光景だ。

なぜ自分が、こんな所でこんなめにあい続けているのか分からない。

いや、その疑問すら考える余裕は与えられない。

汚く錆びれた路地裏に追い詰められた少女に向かって、狂ったように男たちの腕が伸ばされる。

胸元が乱暴に裂かれる。

あらわになった乳房すら隠す暇もなく、次に来るであろう地獄に少女は固く目を閉じた。


バサッと羽ばたくような音がしたのはその時だった。


風切り音が耳元を鋭く疾走する。

予想されていた痛みも苦しみもおとずれず、少女ロイは恐る恐るまぶたを上げた。

全身真っ黒な後ろ姿の男がそこに立っていた。

彼の周りにはついさっきまでロイを追いまわしていた男達の首と胴が距離を置いて倒れている。

黒いローブの男がゆっくりとこっちを向いた。

整った冷たい表情、首筋にかかったさらりとした黒髪。

血だまりの中たたずむ死神のような彼に、ロイは目を奪われた。


「ロイ」

目の前で放心しているピンク色の髪の少女にゆっくりと近付いていく。

今の彼女は、エレナに殺されたほうの彼女よりも年上のような風貌をしていた。

髪型も少し違っている。

そんな彼女にレイルは手を差し伸べる。

ロイはそっとレイルの手を取った。

じっとこっちを見つめる青ピンク色の瞳から、透明な涙があふれ出した。

レイルは彼女を抱きしめる。

自分の腕の中で少女は声を殺し泣き続けた。


「お前の愛は偽物だよ」

バサッと黒いローブを悟理はひるがえした。

「俺に言われるままロイの苦痛を見続けてたのがその証拠。意地でも何でもさっさと助けに行けよ。けど、ロイ以外は助けようとしないんだな」

立派な王座に座りながら、ディセンション部屋を見下ろし意外そうにそうつぶやく。

彼は彼に悪意を抱いた他の人間をレイルが助けようとしたら、羽根刃の能力を奪い、周りと同じように拷問虐殺ループコースさせるつもりでいた。

しかしレイルを許したわけでも、許す予定もない。

悟理は、潜在意識の中から別の魂の過去性の自分をディセンション部屋に次々と出現させる。

モデルとしてではなく、自分と同じように神の創造力を持つ魂だ。

窮屈な制限やいらない設定を創り出した憎き存在達。

その制限や設定がなかったら、悟理は悟理ですらいられなかっただろう。

今のように無敵の天使にもなれなかった。

しかし、そう理解していても、前の自分に対する憎悪を減らすことは出来なかった。

彼らは、神の創造力を持っていても悟理に危害は加えないよう、ディセンション世界から出られないよう設定してある。


その中には羽根刃の衣装をまとう銀髪の女の姿があった。


「過去性の俺(お前)と戦え、クソ天使」

悟理は、次にロイが死んだら彼女の魂の完全消滅、レイルが死んだら今度こそ拷問虐殺ループコースにさせることにした。


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