転生
ユニーク数3桁突破しました!ありがとうございます!
これからも、異世界転生したので、兄になりました。をよろしくお願いします!
「え、え?こ、断るって……言いましたか?今」
「ああ。駄目なのか?」
絶句するアスタに、当然のように答え、さらに何がおかしいのかと逆に聞き返す拓人。
「…………いえ、駄目とかではなく…………。すみません、説明して貰えますか?」
その開き直りとも言える態度に呆然としつつも、アスタはその意図を訪ねた。
「ん?いや、だから、ここではスキルの取得をしたくないって言ったんだが……。もしかして、ここじゃないと駄目なのか?」
「え、いや、だってさっき転生すると拓人さんが……。…………?ここでは?」
途中まで、未だに拓人の言葉の意味が分からず、半泣きになっていたアスタだが、拓人の言葉に違和感を覚え、尋ねた。
「ああ、……当たり前だろ?今から本当に異世界に行くとして、いくら知識があったとしても、こことは完全に別の世界なんだ。あっちでしたいこと、やらなくちゃいけないことが出来た時にスキルを取った方がいいに決まってる。……そういう意味でスキルの設定を断わったわけなんだが……。で、どうなんだ?あっちに行ってからスキルの設定をするのは、ありなのか?」
それを聞いたアスタは、なるほど。と納得した。
たしかに、その方がいいに決まっているだろう。
「……ああ、なるほど。そう言うことですか。……本来なら、管理神が違うのでそういったことはできないのですが、シエルは事情により私たちが管理をしていますので、問題はないです」
特に問題は無かったので、アスタは許可を出した。
「分かった。じゃあ、スキル設定は転生後にするとして…………、どうやってスキルの設定はすればいいんだ?」
「そうですね……。じゃあ、私に連絡が出来るようにしますので、スキルの設定、ステータスやシエルの事で知りたいことがあればステータス画面のコールというアイコンをタップして私に連絡をください。……いつも見ているわけにはいかないので、繋がらない時があると思いますので、そんな時に余程緊急だった場合は、頭の中で直接『コールアスタ』と唱えてください、こちらはなるべく絶対に取るよう努めますので」
それを聞いた拓人がステータス画面を開くと、左下に"コール"の文字が追加されていた。
「……それでは、もうここでしなくてはならないこともありませんし、そろそろ転生して頂こうと思うのですが、いいでしょうか?」
「ああ、分からないことも後で聞けるらしいしな。始めてくれ」
「……はい。それでは拓人さん、良い人生を」
アスタが胸の前で手を組むと、拓人の足下が光りだす。
そうして拓人は、この場所から姿を消した……
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ーー目を覚ました拓人が初めに見たものは、汗だくになりながらも、笑顔で自分を抱えている女性と、息を切らせて自分の元へ近づき、今にも飛び上がらんばかりの嬉しさが詰まった顔をしながらはなしかけてくる男性の姿だった。
「××××××××!」
「×××××××」
「×××ーー」
拓人に言葉の意味は分からなかったが、自分が生まれた事に対して、喜んでくれているのは理解できた。
前世で、拓人が生まれた時には、既に両親に相手がいたため、その頃から拓人には100%の愛は注がれてはいなかった。
そんな自我が芽生える前のことを拓人はもちろん覚えてはいないが、この人生は前世のスタートとは違うことを本能的には理解したのだろう。
拓人には、生まれて初めて、少しではあるが安心という感情をもった。
本人は初めてのことゆえ気づいてはいないが。
ともあれ、意思とは関係なく、呼吸のために泣いて泣いて泣き疲れた拓人は、深い愛情に包まれながら、意識を手放したーー
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その頃神界では。
「やあ、メトちゃん。アスタちゃん。久しぶり」
ある男がメトとアスタを訪ねてきていた。
「ああ、本当にお久しぶりね。##様」
「お、お久しぶりです!##様!」
メトは余裕たっぷりに、アスタは慌てて男に会釈を返す。
「そ、それで、今日はいかがなさったのですか?」
「ああ、いやね?ここで珍しいタイプの転生があったみたいだから、見にきたんだよ」
不安げに尋ねたアスタへの男の答えに、アスタは顔を青くする。
「あ、あのですね。あれはーー」
「ん?(……ああ、アスタちゃんは知らなかっけか……。)いや、別に怒っているわけじゃないんだ。ただ、ちょっとその人についての資料見せてよ」
「……?え、あ、はい。……どうぞ……」
途中で男が小声で話した内容を聞き取れなかったアスタは首をかしげるが、とりあえず言われた通りに、拓人についての資料を渡す。
その資料を読んだ男は、メトに語りかけた。
「…………へえ、なるほど。そうしたんだなるほど、わかったよ。……それじゃあね、二人共、また」
男が去ったあとに残ったのは、何故か不安げな表情をしたメトと、最後の言葉の意味が分からずキョトンとするアスタだけだった。
物語は、本人のあずかり知らぬところで、静かに動き出していたーー