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一話:プロローグ:緊張感のない始まり。


一人称視点についてのご説明。

あくまで浅葱灯夜の視点、思考での文章なので、特定の宗教、団体、文化を貶める意図を持っていないことをご理解いただきたい。

 赤い液体と赤い液体が垂れた。

 静かに流れてゆくそれは、地面でマーブル模様を描き出してる。

 あたりには俺の手首から出た赤い液体――血が異臭を放っている。その鉄臭い匂いは正直我慢ならない。

 とっととこの穴倉あなぐらから出して欲しいんだけど、悲しいことに周りにゃ誰もいない。誰も来ない。それどころかもうずいぶん長い時間ここに入れられたままだ。その間、一度も人が尋ねてきたこともない。

 一日か、一週間か。一ヶ月か。一年か。

 時間の感覚が凄い狂ってるんでまったく掴めやしない。腹時計は三日ぐらいしか経ってないって言ってくるけど、かなり疑わしい。それに食べなくても問題がない。点滴のせいか物を口にする気はないから。

 もちろん食べる物もないんだけど。


 と、事態は比較的深刻だった。

 いやホントはそれほどでもないんだけど深刻風にしてみる。

 言うなれば俺は正体不明で意味不明の謎の秘密組織に拉致監禁されて、さらに人体実験っぽいことを受けつつ放置されているわけだ。

 俺ってこんなに説明上手かったっけ? 自画自賛だろうとなんだろうと今ならやってやれないことはないような気分だった。それは暇すぎるから。

 ちなみに俺自体に価値はそんなに無いと思われる。

 いわくつきの一族の最後の一人でもなければ、国一つを滅ぼせるようなキメラウィルスの保菌者キャリアーでもない。

 監禁ンなことされるような理由は全然分からないのが現状で。

 と言っても危機感ゼロ。

 拳銃や機関銃を突きつけられたワケでもないし。この点滴は……まぁ、気にしないことにしてる。

 詰まるところゆっくりまったりと無駄な時間が流れてゆくだけなのさ。大欠伸あくびぐらいは普通に出るね。

 もちろん非日常か、というならこれは非日常に違いない。人攫いひとさらいが日常的なワケないから。

 まぁ、特別な自体が起こるワケでもないんですが。


 というか当事者なのになんにも教えてくれないってのは誰の陰謀かね? あと点滴のように宙に吊られている液体の入ったパックからチューブを流れてくるこの液体はなんなんだろう。誰か教えてくれよ。

 俺は手首を見る。

 そのチューブから伸びる針は荒療治かなにかのように垂直に刺さっている。

 注射された当初は頭がかち割れるほど痛かったのに今じゃすっかり馴染んでた。痛みにって意味じゃなくて赤い液体が身体にって意味な。

 で、それが今また痛み出してる。

 椅子に縛り付けられたままだけど腕自体は自由なので、それで調べてみたところ、どうやらチューブに付いた針が血管からずれたみたいだった。

 んで、適度だった痛みがどんどん増幅してくるんだけど……これやばいかもしれない。人はさっきから誰も来ないし、というか監禁した相手を助けに来てくれるほど優しい奴なのかも不明なんだけど。

「はぁ……」

 現状は色々と絶望的。

 溜め息が出るのも当然と言っちゃ当然だった。

 そしてもうひとつ、そろそろ輸血パックが空っぽになりそうだったのだ。ということはまた誰かがリセットボタンを押してくださるようだ。

 まぁこれも繰り返されてきたことだけどさ。


 ――散々言ってきてなんだけどそんなこと、本当はどうでもよかった。

 ここが地下室で、いくら絶叫を上げようと誰にも気付いてもらえないことも。

 定期的に投与される血のような液体も。

 俺をここに連れて来た何者かも。

 全部どうでもいい。

 いい加減に飽きたんだ。


 この部屋では特別なルールが支配している。

 つまり、輸血パックに液体がなくなると俺が気絶するって仕組み。起き上がるとまたいつもの光景。

 変わらない地下室、相変わらずの輸血パックに、椅子に縛り付けられた俺。

 もう何度も気を失ったがそれを数える気も起こらない。

 俺が気付くとその輸血パックは、いっぱいになってやがるのだ。

 紅い風船みたいにパンパンに膨れ上がってるそれを見るだけでまたかという気分になる。


 そして今回の残り時間はそんなにないらしい。今、チューブに残ってる液体が俺の体内に入ったところで終了。

 気絶して眠りにつく。

 じゃあね皆さん。良い一日を……。

 俺の意識は、再び飛び始めた。

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