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循環


 第一封止設備の制御が回復したあとも、私はしばらく谷に残った。


 最後の番人が消えた場所。


 破裂した六角形外壁。


 青白い光。


 すべてが目の前にある。


 それでも、起きたことを一度の表示だけで確定させるべきではない。


《PRIMARY CONTAINMENT》


《MANUAL OVERRIDE》


《STABLE》


《CONTROL RESTORED》


 第一封止設備。


 手動オーバーライド。


 安定。


 制御回復。


 十分後。


 三十分後。


 一時間後。


 表示は変わらない。


 粒子流量。


 一定。


 施設外周の濃度。


 二一パーセントから一八。


 さらに一六。


 谷の下流では一四パーセント。


 低下は急激ではない。


 風で一時的に薄まっただけでもない。


 施設から外へ出る量そのものが、世界樹ネットワークの処理能力内へ抑えられている。


 装置表示。


《OUTPUT BALANCE》


《WITHIN ECOSYSTEM CAPACITY》


 出力均衡。


 生態系処理能力内。


 粒子は止まっていない。


 川へ入る。


 地下網へ送られる。


 世界樹と銀脈根へ渡る。


 生命へ戻る。


 危険だったのは、粒子が存在することではなかった。


 制御を失い、世界が扱える量を超えて流れ続けたこと。


 最後の番人は、粒子を消さなかった。


 世界が受け取れる流れへ戻した。



     *



 私は施設の外壁へ近づかなかった。


 制御が戻っても、内部には高濃度領域が残っている。


 装置の地図では、未制御粒子の範囲が建物内部へ縮小している。


 だが、内部が安全という意味ではない。


《UNCONTROLLED PARTICLE ZONE》


《CONTAINED:LOCAL》


 局所封じ込め。


 封じ込められた危険は、消滅した危険ではない。


 設備の状態。


 世界樹群の処理量。


 地下ネットワークの復旧率。


 どれかが崩れれば、再び外へ広がる可能性がある。


 私は亀裂。


 根。


 水路。


 粒子流。


 すべてを記録した。


 最後の番人については、事実だけを書く。


 ――第一封止設備へ進入。


 ――物理的衝突音なし。


 ――残留物なし。


 ――設備制御、回復。


 ――装置表示「帰還完了」。


 彼が生物だったのか。


 古代文明が作った生体装置だったのか。


 第一封止設備から切り離された中核だったのか。


 確定できない。


 言葉を話し。


 痛みを持ち。


 世界樹を気にかけ。


 私へ礼を告げた。


 それだけで、生きていなかったとは言えない。


 同時に。


 世界の種と一致し。


 中央樹園を起動し。


 環境が整うまで眠り。


 最後に設備へ戻った。


 それだけで、単なる動物とも言えない。


 生物か、設備か。


 その二つを分ける必要がない文明だったのかもしれない。


 世界樹も同じだった。


 植物であり。


 粒子フィルターであり。


 地下ネットワークの一部であり。


 空を守る設備でもある。


 最後の番人もまた、生きることと機能することを分けない存在だった。



     *



 温室へ戻ると、四眼の民たちは入口で待っていた。


 私の後ろに、最後の番人はいない。


 空にもいない。


 最初に出会った一人が、上流の方角を見る。


 次に私を見る。


 私は地面へ第一封止設備を描いた。


 破裂した中心。


 そこへ飛び込む最後の番人。


 光。


 穏やかになった粒子流。


 装置の文字も見せる。


《LAST WARDEN》


《STATUS:RETURNED》


 最後の番人。


 帰還完了。


 四眼の民は、長い間動かなかった。


 悲しんでいるようにも見える。


 安心しているようにも見える。


 彼らにとって、最後の番人が何だったのか。


 名前を知っていたのか。


 過去の物語として伝わっていたのか。


 尋ねる言葉を、私はまだ持っていない。


 最初の一人は胸へ手を置いた。


 それから上流へ頭を下げる。


 ほかの者たちも続く。


 私は同じように頭を下げた。


 死を悼むためか。


 役目を終えた者を送るためか。


 帰還を認めるためか。


 意味を一つへ決める必要はなかった。



     *



 第一封止設備の制御回復から、七日が過ぎた。


 谷の粒子濃度は安定している。


 世界樹群の葉に、過剰な青白い光はない。


 黒光実の内部容量にも余裕がある。


 地下ネットワーク。


 流量、正常。


 温室。


 粒子安定化、正常。


 中央樹園。


 生体中核、一〇〇パーセント。


 最後の番人の反応は表示されない。


 代わりに、第一封止設備の中心へ新しい識別が加わった。


《BIOLOGICAL CONTROL CORE》


《ONLINE》


 生体制御中核、稼働中。


 それが最後の番人そのものなのか。


 彼が残した機能なのか。


 装置は答えない。


 中央樹園では、新しい世界樹の芽が育っている。


 最後の番人が横たわっていた場所。


 胸の下にあった地面。


 そこから伸びた一本だけは、ほかより葉脈の光が濃い。


 世界の種が残したもの。


 最後の番人が育てた最初の樹。


 私はそう仮称した。


 正式な識別は出ない。


 それでよかった。



     *



 変化に最初に気づいたのは、宇宙服の警告音だった。


 ピッ。


 墜落直後から、何度も命の残り時間を知らせてきた音。


 外気浄化フィルター。


 流量低下。


 粒子濃度。


 生体フィルター容量。


 警戒する身体が先に反応する。


 私は作業を止め、表示を見る。


 赤ではない。


 黄色でもない。


 緑。


《ATMOSPHERIC ANALYSIS》


《RECALIBRATING》


 大気分析。


 再校正中。


 故障かもしれない。


 粒子流が変化し、センサー基準がずれた可能性。


 すぐ結論を出さない。


 宇宙服を温室の外へ持ち出す。


 αの世界樹。


 川。


 湖畔前線基地β。


 白柱平原の外縁。


 場所を変えて測定する。


 最初の表示。


《OXYGEN:WITHIN HUMAN TOLERANCE》


 酸素。


 人間許容範囲内。


 次。


《TOXIC GAS:NOT DETECTED》


 有毒ガス。


 検出なし。


《UNCONTROLLED PARTICLES:BELOW EXPOSURE LIMIT》


 未制御粒子。


 曝露限界未満。


 最後。


《ATMOSPHERE:BREATHABLE》


 大気。


 呼吸可能。


 私は、墜落二日目の大気分析記録を呼び出した。


《微量有害成分を検出》


 当時は、それ以上の分類ができなかった表示。


 現在の装置で、保存されていた検出波形を再解析する。


《ARCHIVED HAZARD SIGNATURE》


《MATCH:UNCONTROLLED PARTICLE AEROSOL》


 過去の危険反応。


 未制御粒子の浮遊成分と一致。


 最初の簡易センサーは、この惑星の粒子に対応する識別情報を持っていなかった。


 そのため、フィルターを劣化させる未知の浮遊粒子を、既知の名前ではなく「微量有害成分」と一括表示していた。


 別の有毒ガスが、制御回復と同時に都合よく消えたわけではない。


 少なくとも保存記録の範囲では、序盤に検出した危険反応と未制御粒子は同じものだった。


 そして、大気が七日間だけで最初から浄化されたわけでもない。


 世界樹群は、設備の制御が戻る何か月も前から粒子を捕らえ続けていた。


 谷の濃度は、すでに一四パーセントまで下がっていた。


 最後の番人が戻したのは、漏れ続ける供給源の制御。


 新しい未制御粒子が処理能力を超えて補充されなくなり、残っていた浮遊分を世界樹網が七日かけて曝露限界未満まで減らした。


 長い浄化の最後の工程が、ここで終わった。



     *



 私は表示を消した。


 再起動。


 もう一度測定。


《ATMOSPHERE:BREATHABLE》


 別の場所。


 同じ。


 時間を置く。


 同じ。


 装置を信じないのではない。


 一度の正常表示を、安全の証明にしないだけ。


 外気採取用の容器を用意する。


 乾燥させた透明容器。


 外気を入れる。


 密閉。


 温室の作業台へ戻す。


 粒子濃度。


 酸素。


 未知ガス。


 時間変化。


 一時間。


 三時間。


 六時間。


 異常なし。


 外気を通した白灰土の試験片。


 変色なし。


 銀脈根の小片。


 過剰反応なし。


 保水繊維。


 青白い粒子の急速な蓄積なし。


 生体フィルターを外した状態で、外気浄化フィルターだけへ短時間流す。


 流量。


 正常。


 性能低下。


 なし。


 次に、生体フィルターも外さず、外気取り込み口の一部だけを開く。


 宇宙服内部へ直接入れない。


 独立した試験区画へ送る。


 結果。


 同じ。


 翌日。


 測定を繰り返す。


 天候。


 風向き。


 雨の前後。


 温室。


 森。


 川。


 すべてで呼吸可能判定。


 第一封止設備の近傍だけは除く。


 そこは今も管理区域。


 世界全体が均一に安全になったわけではない。


 だが、私が生活している地域の大気は、少なくとも装置の基準では人間が直接呼吸できる状態へ戻った。



     *



 最初の日。


 ポッドの自己診断は、外気浄化フィルターの残りを七十二時間と表示した。


 植物がある。


 ならば酸素があるのか。


 そう考えた。


 同時に、酸素があることと、ヘルメットを外して安全であることは別だと判断した。


 その判断は正しかった。


 酸素は、最初からあった可能性が高い。


 動物。


 四眼の民。


 森。


 水中生物。


 呼吸する生命が存在した。


 私に危険だったのは、酸素不足ではなかった。


 第一封止設備から漏れ続ける未制御粒子。


 外気浄化フィルターを劣化させ。


 高濃度地域で身体を重くし。


 空気を、人間が直接吸えない状態へ変えていたもの。


 粒子そのものが毒だったわけでもない。


 制御された粒子は、植物を育て。


 水を巡り。


 世界樹を動かし。


 四眼の民や動物の生命を支えていた。


 多すぎた。


 流れが壊れていた。


 それだけで、生命を支えるものが生命を脅かすものへ変わった。



     *



 外気浄化フィルターは、七十二時間で尽きなかった。


 保水繊維の交換式カートリッジ。


 粒子フィルター。


 生体フィルター。


 黒光液タンク。


 銀脈根の安定化成分。


 それらをつないだことで、地球製のフィルターだけへ負担を集中させずに済んだ。


 使用済みの繊維は捨てない。


 温室の水路へ接続する。


 粒子を黒光液と銀脈根へ渡す。


 洗浄。


 乾燥。


 再び使う。


 残り時間を減らし続ける消耗品は、循環する部品へ変わった。


 そして今。


 外気そのものが安全域へ戻りつつある。


 最初の七十二時間。


 あれは単なる装備の寿命ではなかった。


 この世界と自分の間に残された、最初の距離。


 私は、その距離を素材と理解で少しずつ縮めてきた。



     *



 それでも、ヘルメットを外す手はすぐには動かなかった。


 表示は呼吸可能。


 検証も繰り返した。


 理屈では問題ない。


 だが、墜落してから一度も、この星の空気を直接吸っていない。


 宇宙服の吸気音。


 フィルターを通る空気。


 顔の周囲を覆う透明な壁。


 それが生きている状態になっていた。


 外すことは、安全装備を一つ減らすだけではない。


 この世界へ、自分の身体を直接つなぐこと。


 私は場所を選んだ。


 第一封止設備ではない。


 温室の中でもない。


 仮拠点α。


 最初の夜を越えた木。


 今は世界樹となり、巨大な枝で空を覆っている場所。


 ここで最初に黒光実を見つけ。


 保水繊維を作り。


 雨をしのぎ。


 生き残るための拠点を作った。


 始まりの場所。



     *



 世界樹の下には、四眼の民が数人いた。


 四つ目モグラも、一匹だけ土から顔を出している。


 彼らを証人にするつもりはなかった。


 ただ、世界樹の根と地下網の状態を確認しに来ていた。


 私は宇宙服の表示を見る。


《ATMOSPHERE:BREATHABLE》


 粒子濃度。


 九パーセント。


 未制御粒子。


 検出限界付近。


 制御粒子。


 安定。


 酸素。


 許容範囲。


 有毒ガス。


 検出なし。


 生体フィルターを停止しない。


 外気浄化フィルターも残す。


 まず、ヘルメットの外気弁を最小まで開く。


 空気が一部だけ入る。


 匂い。


 初めて、フィルターを通さない情報が届く。


 湿った土。


 水。


 樹皮。


 葉。


 遠くの花。


 黒光実の、わずかに金属を思わせる香り。


 機械の中では分からなかった世界。


 弁を閉じる。


 呼吸。


 異常なし。


 目。


 喉。


 胸。


 変化なし。


 五分。


 生体モニター。


 正常。


 もう一度、今度は半分。


 外気。


 異常なし。


 十分。


 正常。


 私はヘルメットの固定具へ手をかけた。



     *



 右。


 左。


 後部。


 一つずつ解除する。


 気密が解ける音。


 シュッ。


 内部と外部の圧力差は小さい。


 警告なし。


 ヘルメットを持ち上げる。


 顔へ風が触れた。


 冷たい。


 強くない。


 ただの風。


 私は反射的に息を止めていた。


 肺は、フィルターから送られる空気を待っている。


 だが、もうヘルメットは頭の上にない。


 目を閉じる。


 鼻から、少しだけ吸う。


 土。


 葉。


 水。


 次に、深く。


 胸が広がる。


 痛み。


 なし。


 咳。


 なし。


 身体の重さ。


 なし。


 空気が肺へ入り。


 出ていく。


 それだけ。


 当たり前の動き。


 この星へ来てから、最も遠かった当たり前。



     *



 目を開く。


 空は、最初にポッドから見た時と同じ青紫色。


 遠くには巨大な輪を持つ惑星。


 風に揺れる世界樹の葉。


 だが、見え方は違う。


 透明なヘルメット越しではない。


 警告表示もない。


 数値もない。


 直接。


 世界樹の葉が音を立てる。


 川の音。


 鳥。


 虫。


 四眼の民の呼吸。


 四つ目モグラが土を払う音。


 すべてが一つの空気の中にある。


 最初に出会った四眼の民が、私を見ていた。


 彼は自分の口元へ触れる。


 次に私。


 空。


 短い言葉。


 銀色装置は腰にある。


 だが、翻訳表示を見なくても、意味は分かった。


 同じ空気。


 私はうなずいた。



     *



 外気を吸っても、私は宇宙服を捨てなかった。


 第一封止設備の内部。


 未調査地域。


 粒子濃度が再び上昇する事故。


 装備が必要な場所は残っている。


 生体フィルターも外さない。


 それは生存のためだけではなく、この世界の素材から作った最初の呼吸装置。


 保水繊維。


 黒光液。


 竹導管。


 銀脈根。


 失敗を重ね、流れを真似して作ったもの。


 必要がなくなったから捨てるのではない。


 必要になった時、再び使えるよう維持する。


 世界の循環も同じ。


 一度直れば、永遠に壊れないわけではない。


 世界樹を育てる。


 地下網を点検する。


 蒼輝石を作る。


 第一封止設備の流量を測る。


 四眼の民と四つ目モグラの働きをつなぐ。


 修復の次には、維持がある。



     *



 私は研究ノートの最後のページを開いた。


 最初の記録。


 ――外気浄化フィルター、七十二時間。


 ――非常食、二食。


 ――飲料水、二リットル。


 ――通信、圏外。


 ――大気、安全性不明。


 そこから始まった。


 水を探した。


 木へ登った。


 黒光実を拾った。


 川の粒子を調べた。


 魚を捕った。


 骨を針へした。


 湖畔前線基地βを作った。


 四つ目モグラと出会った。


 蒼輝石を受け取った。


 四眼の民と出会った。


 温室を直した。


 粒子が危険であると知った。


 同時に、生命へ必要だと知った。


 生体フィルターを作った。


 第一封止設備を見つけた。


 世界樹を回復させた。


 地下ネットワークをつないだ。


 世界の種を運んだ。


 最後の番人を起こした。


 第二世代を育てた。


 蒼輝石を作った。


 そして最後の番人は帰還した。


 私は世界を作ったのではない。


 世界樹を設計していない。


 地下網を築いていない。


 四眼の民へ生き方を教えていない。


 四つ目モグラへ役割を与えていない。


 最後の番人を生み出していない。


 やったことは。


 見つける。


 確かめる。


 壊れた場所を直す。


 足りない部品を再現する。


 別々に残っていた流れを、もう一度つなぐ。


 それだけだった。



     *



 世界を救ったのは、私ではない。


 黒光実が粒子を吸い続けた。


 黒光木が世界樹へ育った。


 銀脈根が粒子を生命へ渡した。


 四眼の民が温室を守った。


 四つ目モグラが地下を掘り続けた。


 最後の番人が、動ける時を待った。


 古代の者たちは、自分たちの時間で事故を終わらせられなかった。


 だが、未来へ続く仕組みを残した。


 世界は、完全には止まっていなかった。


 長い時間。


 見えない場所。


 小さな流れ。


 それらが残っていた。


 私は最後の一つをつないだだけ。


 その結果。


 世界は自分で回復を始めた。



     *



 ノートへ、最後の観測結果を書く。


 ――第一封止設備、制御回復。


 ――粒子流、生態系処理能力内。


 ――世界樹ネットワーク、稼働。


 ――中央樹園、生体中核一〇〇パーセント。


 ――第二世代、生育継続。


 ――蒼輝石製造、再現可能。


 ――外気中酸素、人間許容範囲。


 ――有毒ガス、検出なし。


 ――未制御粒子、曝露限界未満。


 ――大気、呼吸可能。


 その下へ、数値ではない一文を加える。


 ――この世界の空気を、初めて吸った。


 ページを閉じる。



     *



 世界樹の枝から、黒光実が一つ落ちた。


 地面へぶつかる前に、四つ目モグラが前脚で受け止める。


 実を見る。


 私を見る。


 以前と同じように、何かを交換しようとしているのかもしれない。


 私は笑った。


 モグラは鼻を鳴らし、黒光実を土の中へ運ぶ。


 種を守るため。


 新しい根を作るため。


 あるいは、ただ巣へ持ち帰るため。


 理由は一つではない。


 その行動が、また次の何かへつながる。


 川から水が流れる。


 水から粒子が運ばれる。


 粒子は世界樹へ入る。


 世界樹は空を浄める。


 根は地下へ渡す。


 銀脈根が生命へ変える。


 動物と人が生きる。


 落ちた実が、新しい木になる。


 木はまた、空を浄める。


 始まりと終わりを分けられない流れ。



     *



 風が吹く。


 世界樹の葉が揺れる。


 遠く。


 第一封止設備の方向から、低い振動が届く。


 約八秒。


 次の鼓動。


 安定している。


 最後の番人の翼の音にも聞こえる。


 巨大な設備の正常な周期にも聞こえる。


 どちらでもよかった。


 彼は帰った。


 世界は動いている。


 私はヘルメットを脇へ置き、もう一度深く息を吸った。


 青紫色の空。


 湿った土。


 水。


 葉。


 この星の空気。


 終わったのではない。


 一つの流れが、本来の場所へ戻った。


 そして、その流れは次の命へ渡っていく。


 循環は、続いていく。



                    The Cycle 完


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