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85話 民は空を仰ぐ


◇◇◇◇◇



夜が明けた。



あれだけ恐怖し、

逃避しようとする衝動が

意識を占拠していた筈が…


日の光を浴びるうちに

街のあちこちで上がっていた火の手が

燻る煙になり空へ還るように…


人々の荒ぶる感情は鎮まっていった。


四柱の守護者が街を破壊し…

その守護者を…突如現れた

黒き者が恐ろしき力で葬った…


そして、

その黒き者も光に飲まれ消えた…


その後の静寂…


民衆は…

悪い夢でも見ていたかのように

逃げる事を忘れ立ち尽くした。 



「あれは…何だったんだろう…」



民衆の一人が呟く。



周囲の誰もが

その答えに反応ができなかった。


だが…



「始祖さまが、助けに来てくれたんだよ」



どこからか、

そんな答えを返す幼子の声が聞こえた。


父親に抱かれ、顔を煤にそめた

その子供は空を見つめ

濁りない眼で続ける。 



「おばあちゃまから、聞いたんだよ

始祖さまは、怖い魔物から

たくさん、みんなを守ってくれた、

とっても偉い人なんだって!


今でも、ずっと

みんなを守ってくれてるんだって」



周囲は、息をのむ…



こんな…

幼子の話しなぞ、

真剣に聞く必要があるのか?


だが…

だが、


皆、知っていた。

この幼子の話は…

自分らが先祖代々から

語り継いできた話だからだ。



「黒衣の大魔術士、三度の大襲来を

その大いなる魔術で退け

民を悉く守る、我らが神なる存在…」



古くから伝わる詩歌を

誰かが口遊む…


ー我々は…

何か大きな間違いを犯したのではないか?



「始祖様…」



誰かが呟けば、次々と声が続く。



「始祖様!」

「始祖様…!」

「始祖さま…」



その声には涙が滲んでいた。

その声には後悔が浮かんでいた。

その声には感謝が込められていた。


誰も彼も皆

空を仰いでいた。


この度の擾乱は


平穏過ぎる日々に

胡座をかき、忘却した事への

罰だったのだろうか?


ずっと、いつだって、

始祖様がこの国を

守って下さっていたのに…



◇◇◇◇◇


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