78話 フィアロア【挿絵付き】
◇◇◇◇◇
光となったオセが
フィアロアに全て吸収された
直後…
ドクン、ドクン、と
脈打つように、大気は伸縮して
いくような現象が
フィアロアを中心に巻き起こる。
キイィィン…
と、耳鳴りのように大気は音を立て、
脈動は速さを増し…
そして…
歪んだ空間と共に
フィアロアの身体は闇に呑まれ…
凝縮された闇が爆ぜ散るように
突如、闇は膨張しだし…
圧風と共に
その存在は顕現する。
黒き衣を纏う
黒き髪の男…
長いその髪は、圧風に乱れながらも
深淵の闇の如き漆黒と
艶やかな煌きを魅せる。
だが、その黒き姿の中で
一際目を惹くのは真紅の瞳であった…
赤き宝石の輝き?
赤い星々の煌めき?
いや…
鮮血が滴るような瞳だ。
淡く発光し、まさに血飛沫を
流すように…
その瞳の中心には、十字の瞳孔が
全ての闇を吸い込むように
見る者を魅了していく…
「…ふむ…
儂の存在を具現化していられる
時間は、余り無いようじゃの…」
「フィアロア…」
イルは懐かしい友の姿に
嬉しさと、しかし
複雑な心境を…どう表現して
いいのか…分からなかった。
◇◇◇
新興勢力の一味、軍を裏切った
元副軍士長の男と、その部下らは
動けなかった。
突如、空間から現れた…
いや、
弱々しい老人が突如変貌を遂げた
あの…
黒き存在の威圧に。
美しい男だった。
この世にこんなにも…
美しい存在がいるのか?
性別なぞこの者の前では、
意味を為さないと思った。
だが…
だが…
それ以上に恐ろしかった。
底知れぬ魔力…
きっと、この国中の魔導士が
全て束になり戦っても…
この男には全く敵わないだろう。
ガチガチと、全身が震え、歯が鳴る。
フィアロアは、そんな
下郎共を睥睨しつつも捨て置き、
ふわりと無詠唱魔術で体を浮かせ
高みへ上がる。
そして、凛と響く美しい声で言葉を紡ぐ…
「クソ虫共が…!!
いい気になるでないぞーー!!」
高貴な顔立ち
(実際生まれは高貴だが)
からは、想像できないような
口の悪さで怒りまくるフィアロア…
「ああ…完全キレてるな…あれ」
深いため息を吐き、
どうしようかと、呆れるイルだった。
◇◇◇◇◇




