7話 聖女のその後
◇◇◇◇◇
「リーン様?おーい?
起きてください!リーン様〜!」
『誰の声だ?
俺…いや、我の…この世界での名を呼ぶのは?
ああ、そうか…
我は夢を見ていたのだ、過去の出来事を』
零人は記憶を辿っていく。
『我は…
前世は異世界の人間で…
49歳のおっさんだったけな』
色々な出来事が嵐のように頭をよぎっていく。
堕天してこの世界へ降りて来て…
聖女として、成長し…
更に気が遠くなる時を経て…
今…ここにいるのだと。
魔王の魅了の呪により闇落ちした仲間を止める為、
自分の全ての魔力を注ぎ、仲間を封じた。
そして自らもそれにより、魔力を全て使い果たし…
無能術者と言われるようになった…と。
『そうだ、今は…
瀕死で逃亡した魔王の行方を追い
旅をしているんだっけ』
零人…いや、リーンは過去の記憶から、
目を移し、この目の前の小太りな少年を眺める。
『此奴は、我の大事な仲間の一人だったな』
勇者の一人、光の剣士…イル。
現在の姿からは想像もできないが。
…と、リーンは密かに苦笑いする。
最近になって彼もまた転生し、封印から復活したが…
彼も彼で今は苦労している。
「リーン様!さぁ、起きてください
今日もダンジョン行きますよ〜!」
未だ、魔王討伐も仲間全員の復活もできていない。
それでも、一度失敗したからと言って、諦める訳にはいかないと、リーンは改めて決意を固める。
この世界を破滅から守る為に!
「ああ、今起きる」
リーンは、気合いを入れ
ベッドから勢いよく起き上がる。
その反動で胸が揺れる。
未だ慣れてはいない、女の身体。
目の前の少年イルが
目のやりどころに困っているみたいだ。
『さすがにランニングシャツに、トランクス姿はまずいか?』
ちょっと気まずくなり、
俯きながらランニングシャツの隙間から見えてしまいそうな胸に、手を当て隠す。
「これで、大丈夫か?」
「…まだ太ももが丸見えです…」
「むうぅ…見るな!向こう向け」
ブカブカのトランクスから、
透き通る白い肌の太ももの全容が見えていたようで、リーンは慌ててシーツで隠す。
『中身おっさんなのに、理不尽だなぁ』
リーンは慣れない体を持て余し、ため息を吐く。
聖女はカリスマというパッシブスキルを持っていて、
一般的な女よりも、ずっと
周囲から魅力的に見られるらしい。
長い、生糸のようにキラキラと虹に輝く
銀髪をかき上げる。
雪のように白く透明感のある肌と、
見た者を吸い寄せるような、琥珀色の瞳…
『まぁ…我ながら美少女だとは思うが』
『何度も言うが中身おっさんなんだけどな?』
戦場で血と泥と硝煙に塗れた汚い髭面の中年が
中身なのだと、心の内で叫ぶのだが…
『まぁ、前世の姿の事は秘めておこう、うん。
決して説明が複雑で面倒な訳ではない!』
「リーン様…そんな無防備な格好してると…
変態男に襲われちゃいますよ〜?」
イルは呆れたようにため息を吐くが…
どちらかと言えば、貞操の危機を感じた方がいいのは
キサマの方だとリーンは胡乱気にイルを見上げる。
「我はこう見えて、ジャイアントヘビーベアにも素手で勝てるくらいは腕力があるのだ!心配無用だぞ?」
「うわ…見た目ギャップが凄〜い…」
イルは嘘臭い演技で怖がる身振りをするが…
「本当に怖いのは…魔王が未だにキサマ達の貞操を狙っている事だぞ?」
リーンの言葉にイルは演技ではなく身震いする。
「いや、本当!切実に魔王は早く倒すべきですね!」
リーンとイル、二人の脳裏に…
かつて対決した時の…
(厳つい、いぶし銀の男が内股気味に腰をクネらせる)
…魔王の姿が浮かぶのだった。
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