69話 オセ
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制服は破られ、暴行されたのだろう…
体のあちこちに痣ができていた。
そして、長く美しい
焦茶のおさげ髪は…無残に根元から
切り取られていた。
ぐったりしているミュランダを
囲むように、
四方には魔法陣が敷かれ
既に、四柱復活への
発動準備が完成しているのだろう、
魔法陣は…王家の血を欲するかの如く、
ドクンドクンと脈打つように
点滅していた。
オセは、魔獣特有の聴力で
ミュランダの心拍と呼吸音を聞く。
幸い、浅い呼吸だがまだ生きてはいる!
「ミュランダー!!」
オセは叫びながら中央へ駆け寄る。
「な、なんだお前⁉︎ 」
当然、オセの周りに
新興勢力の兵士が集まる。
だが、関係ない…
オセの怒りは頂点に達していた。
「王族を傷付けて…ただで済むと思うな!!」
人間への危害は極力与えぬよう、
ずっと自身を戒めていたが…
王家へ仇す逆賊に対し
もはや、躊躇する気はなかった。
武装した兵士らを
次々にその鋭い爪で斬りつけていく。
十人ほどの兵士を石畳へ
沈ませた時だったろうか…
不意に魔素が凝縮していく気配を感じる。
出所を見れば、少し離れた所から
魔導士が呪文を唱えていた。
オセはいち早く察知し、
発動直前で飛び掛かり魔導士を爪で切り裂く。
ここは、魔導王国だ。
兵士とて、魔術を使える。
近接攻撃が不利だと
察した連中は、遠距離からの
魔法攻撃をオセに仕掛けるつもりのようだ。
魔術士を一人斬り、
振り向いたオセに次の魔法が襲いかかる。
オセは、呪文をしかけた
魔導士を一人斬るも…
既に複数の魔導士が詠唱を開始していた。
ーー火炎ーー
ーー嵐風ーー
ーー雷撃ーー
複数の魔法がほぼ同時にオセへ襲いかかる。
全て中級以上の呪文だ。
一種類だけでも直撃すれば、
並の人間なら即死する威力だった。
王都の街の広場と呼ばれる空間は広い。
中心の…ミュランダが磔に
されている場所を
囲むよう、人垣はできていたが
その凄まじい威力の魔法
三種がオセを中心に爆ぜ、
人垣を飲み込んでいく。
「きゃあぁぁぁ!」
「逃げろ!!」
魔法の脅威に逃げる者…
既に倒れ、動かなくなった者…
広場は混乱を極めた。
しかし…
そんな魔法の脅威の中…
渦中にいたオセは、
魔法の直撃を回避していた。
人間では到底、真似できぬような
素早さで三種の魔法を避け、
更に発動者の魔導士へ向かって飛び掛かる。
「に、人間じゃ…ない…」
魔導士の最期の言葉だ。
当然だろう。
オセはフィアロアが召喚した
魔の領域から来た魔獣なのだから。
特に魔獣オセは、素早さも
特筆能力だったのだ。
新興勢力に組み入った魔導士らも
決して脆弱ではない。
寧ろ魔導士としては、超優秀な
部類なのだ…
しかし…
本気を出したオセの敵では無かった。
オセは、新興勢力の兵士や
魔導士へ次々と襲いかかった
爪を血で赤く染め、返り血で、
その美しい黒髪まで汚し…
怒りと憎しみと悲しみを燃やしていた。
だが、その時…
「オセ!!ミュランダだ!!」
リーンの鋭い声が聞こえた。
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