60話 擾乱は繰り返される
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民衆の暴動を真っ先に
止めるのは軍の仕事の筈だ…
そう、イルは首を傾げるも
それを可能にできない理由を
老ぼれ皺深いフィアロアの
指が指し示していた。
指が指す方向には…
王立軍と、王立軍が…
王宮の攻防戦を繰り広げていた。
「なっ⁈ 軍同士で争い⁈」
驚くイルに、フィアロアは
苦い顔をして唸るように説明する。
「クーデターじゃ…」
フィアロアは…自身の幼い頃の記憶を重ねる。
自分が国を興す前…
両親が王位に立っていた頃の国…
その両親の国もまた
クーデターにより滅亡した。
生き延びたフィアロアと弟は、
後に国を取り戻し、新しい国を興すのだが…
今でも…
両親の無念に死にゆく顔が忘れられない。
穏やかで、平和な国だったのだ
…刺激が無い、ただそれだけで。
「軍の上層部の誰かが反乱を企て
賛同した兵らが
王宮の占拠へ乗り出したのじゃろう」
「そんな…それじゃ…王宮の人達は…」
しかし、リーンは冷静に話しに割り込む。
「王宮へ急ぐぞ!
まだ終わってはいない。
我らは、我らのやる事をやるのだ!」
周囲から怒声の響く擾乱の中にありながら…
清らかな鈴の音のような、リーンの声音は
怒りと憎しみを灯しかけた
フィアロアの赤い瞳を
鎮め、悲しみを呼び出した。
そんなフィアロアの心中を知ってか知らずか…
リーンはそっと、フィアロアの肩に手を乗せ
先へ進むことを促す。
「行くぞ、王を目覚めさせよう!」
リーンと、そっと手を繋ぎ
誘われるように走るフィアロア。
暗く澱むフィアロアの
過去の記憶の中に…
貴女の存在だけは清らかな光りを齎す。
そして現在も
その光りと共に在ることに、
繋がった手の温もりを通じて、
フィアロアの澱む闇は静かに眠りに就いた。
「は〜、急がないとな〜
おっと、ごめんよ?通らせて貰うよ〜」
リーンとフィアロアの間に割って入り
繋いだ手を強制的に離していく
イルの後ろ姿に
再び闇の殺意を滾らせることになるのだが。
「このクソ豚が!!」
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