58話 王都炎上
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「どうしたんだ?オセ」
泣きそうな勢いで三人を探していたオセに
リーンは声を掛ける。
オセは魔の領域の魔獣だ。
ここまで三人の匂いを辿って来たのだろう。
急な事でも無ければ、こんな時間に自らが
やって来る事はないだろう。
「リーン様!!
王都が…王都が民衆の暴動で…!」
三人は遠くに辛うじて見える
王都へ目をやった。
本来なら…こんな暗い時間に
目視など中々できる距離ではないのだが…
王都周辺は明るく浮き立っていた。
日の出ではない。
これは…
「火事⁈ 王都が燃えてるの⁈ 」
イルが信じられない、という風に声を上げる。
「…愚かな…」
フィアロアは低く呟き、
そっと手を握り締める。
「とにかく、急ぎ向かうぞ!」
リーン達が走りかけた時…
オセが背後で三人に声を掛ける。
更に涙声で…
「暴動と同時にミュランダも…
行方不明になったんです!」
オセはこの数百年間…
ずっと王家の人間を見守ってきた。
元々はフィアロアの側近として
召喚され…
フィアロアが水晶に封じられてからは、
リーンの言付けもあり、
水晶を守護しつつも…
フィアロアの血族である
王家を見守り…時には指導もしてきた。
オセにとって、王家の者は
我が子同様の感覚でいたのだろう。
現王の産声も妃と共に聞き、
よちよち歩きだった現王も支え、
成長を喜んだ。
ミュランダにも密かに会いに行き、
彼女が幼子の時は添い寝もしたものだった。
オセにとって、王家とは…
敬愛するフィアロアの生きている
証のようなものだったのかもしれない。
大切に育んできた
フィアロアの血族の危機に
取り乱しつつあったオセだったが…
「オセちゃん、僕も一緒だからね!」
イル様…暖かいお言葉…
今は不憫な体ながらも、
主の盟友であった心強いお方がいた。
「一人ではない、皆がいる」
リーン様…
尊いお方…彼女の存在は
何故か周囲に絶対の安心感を齎す…
そして…
「行くぞ、オセ」
そこには…
コピー体ながらも、最も敬愛する主がいた。
貴方様が存在するから、私はここにいる…
「はい!!」
夜中、ミュランダを探し回り
クタクタになったオセの体だったが…
勇者一行…
暖かな仲間達の存在で再び力が湧いてきた。
「皆さま、私の背にお乗り下さい!
一気に王都へ走ります!」
久々に魔獣へ変身を解いたオセは
三人を背に乗せ走る。
王都が近づくにつれ、
焼けた匂いが鼻に纏わりついてきた。
煙は城より高く上がり
火の粉が飛び散る様が非常事態を
現実のものとして、一行に緊張を齎した。
街門を守衛する門番の姿はなく、
代わりに方々から怒声が鳴り響いている。
「こりゃ、酷いね…」
イルが炎の強さに目を眇めながら呟く。
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