44話 愛をとるか、立場をとるか…
◇◇◇◇◇
そんな一連の状況を
眉間に手をあて、やり過ごした
オセは、霊体の王に声を掛ける。
「ミュコフ…
お前の不在が…民の不安を増幅させ、
国の滅びへと繋がっても良いというのか?
始祖、フィアロア様が
これを見たら…なんとお嘆きになるか…」
「別にどうでも良いがのぅ」
「こら!」
まだ怒りの収まらない
フィアロアは小さく悪態を呟くが
リーンのゲンコツで口を閉じる。
『確かに…あの方の…
失望するお姿は見たくない…
愛するお方の築いた国を…私は守らなければ…』
歯の浮くような王の台詞に、フィアロアは
終始唸り声を上げていたが…
オセは苦笑いしつつも、王を導いていく。
「ならば、肉体へ帰れ。
お前の意識が戻る事を皆は
待っているのだぞ?」
『しかし、身体には…戻れないようなのです…
どうやら、胸に呪いの印を
刻印されてしまったらしく』
霊体の王は、
申し訳無さそうに、項垂れる。
◇◇◇
霊体になった王が
当時の様子を語るには…
中庭に突如として、
黒髪の飾り帽を目深に被った
吟遊詩人風の男が立っていたという。
その男は、自分を一夜買ってくれと
王を誘い…その美しい黒髪に
魅せられた王は、男に近づいた…
その時…
男は王の胸に手をあて、魔法陣が浮かんだ…
マズイと思った時には…
王は気付いたら幽体離脱していたという。
「本当にバカじゃな!情け無い!」
「まぁまぁ、フィアロア?
お前の面影を追って黒髪好きに
なってるんだろ?
健気な王様じゃないか」
完全に面白がるイルは
笑いを堪えてフィアロアを諭す。
「チャーシューにしてやろうか?白豚!!」
漫才を始めた二人を捨て置いて、
リーンはオセと今後について話す。
「して…
どうするかだな、
王の胸の呪いを解かねばなるまい?」
「はい…
とにかく、急いで
聖者を探して、解呪を試みようかと」
民衆の動き…王の昏倒…
急がなくては。
魔王がまた暗躍し、次の手札を切る前に…!
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