36話 禁呪
◇◇◇◇◇
不遜な学生らに、
暗い怒りを覚えたオセだったが…
低い、しゃがれた声で朗々と
詠唱するフィアロアに
気付き、一気に我に返る。
…どころか、背筋を凍らせる。
ーー大気を司る風神の、狂気に満ちた
狂乱の宴、凶風を友に舞い降りしは、
龍の御姿の神風なりーー
フィアロア様、その詠唱は…!
この呪文が放たれたら…
ここら周囲がどんな被害が出てしまうのか…
知り得るだけに…
暗い怒りが込み上げていたオセさえも、
さすがに肝が冷えた。
「げっ⁉︎
その詠唱…教科書で見たことがある!!
教官ですら使えない禁呪だよな?」
学生の一人がオセに代わり詠唱を指摘する。
「まさか…な!
超最上級魔法だぜ⁉︎
てか、消費魔力量多過ぎて誰も使えないだろ⁉︎」
無知だと思っていた学生だったが…
一応、魔導学の知識くらいはあるらしい。
超最上級魔法とは…
この国の始祖、フィアロアが
自ら編み出した呪文である。
フィアロアの超超魔力があってこそ
発動できた呪文であり…
開国以来、
この呪文を発動できた魔術士は
誰一人としていない。
もはや、
卓上理論での呪文となっていた。
しかし、そんな学生らの
懐疑的な会話など払拭するかのように、
フィアロアの突き出した手のひらに
魔素が集まり始める。
周囲の木々は騒めき、
空気は緊張するかのように
張り詰めていく気配を感じる。
ーー乱舞嵐龍ーー
詠唱が成った!
手のひらの空気は膨張し…
「ちょ…⁉︎ 待っ…」
さすがに、不遜だった学生らも慄く。
防御魔法を使用する…という
基礎対策も忘れ、
腕を顔の前にかざし、
物理防御の構えを取るだけだ。
本当に魔法攻撃が来たら…
そんな防御は全く意味がないのだが。
「お、おい!フィアロア!
それ…その魔法はヤバいだろ⁉︎ 」
さすがにイルもギョッとする。
グリフォン戦での下級魔法でさえ
あの威力なのだ。
上級…いや、超最上級魔法なんて
発動したら…
目の前の学生どこか、
街の半分が消滅してしまう…
しかし、イルの静止も
間に合わず…詠唱は成り、
フィアロアの手のひらの魔力は
学生らに向かって放たれた!
「う、うわぁぁぁ!!」
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