32話 オセは王家に関わる偉い人?
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門を潜った先にある華やかで、大きな通りが
旅人の目を惹く。
通り沿いには大小様々な店が軒を並べ、
見栄えを競い、
店先には、花や豪奢な看板など彩りに溢れ、
通りがかった人々を魅了していく。
今世でのイルは
食いしん坊欲が未だに残っており…
通りの左右に連なる
珍しい食べ物屋をキョロキョロと
見回しては、物欲しそうな顔をしていた。
「ねえ、リーン様!
僕ら所持金も少ないし…一度、冒険者ギルドで
仕事探すのも必要かなって思うんだけど…」
顔は、食べ物屋へ向きながら
提案を持ち掛けるイルだったが…
「いえ…
恐らくですが…この王都へ滞在中は
王家の賓客として、お二人は
おもてなしされると思います…
衣食住は心配なさらなくて良いかと」
オセが苦笑いしつつ、イルへ、そう話す。
「オセちゃんは、今でも王家の人と仲良がいいの?」
と、不思議そうにイルは質問する。
「はい、
私は、この数百年間…
フィアロア様のお側に居ると同時に
王族の相談役も務めてまいりましたから」
所謂…
王族には顔が効く…どころか、
王城内では、かなり特別な存在として
扱われている…と、いった様子だった。
オセが直々に賓客だと、
紹介するのであれば…
ここに滞在中の金銭の心配は
必要無さそうである。
「だが…
我らは王都へ遊びに来た訳ではない、
魔王の影を追わなくては」
リーンの一言で
皆の弛緩しかけていた空気が引き締まる。
道中の…森の中での
フィアロアとの邂逅など…
色んな出来事があり
うっかり忘れがちだったが…
我らは魔王出現の情報により、
急ぎ、この王都までやって来たのだ。
のんびりしている時間はないのだった。
「先ずは、冒険者ギルドへ行き
旅の吟遊詩人…等、
不審人物の情報を集めたいな」
リーンの言葉に頷き、
続けてイルもオセに聞く。
「オセちゃんも…魔王の気配を
察知して…僕らへ報らせに
来てくれたんだよね?
…今は…気配とかある?」
「…それが…
漠然とは感じるのですが…
明確には分からないのです…
この王都のどこかには
潜伏しているとは思うのですが」
オセは申し訳なさそうに
俯き、眉を顰める。
「ふむ、
魔王め…気配を消しているか…
やはり、聞き込みを先に
しなければ、ならないな」
リーンは目を鋭くし、周囲を見渡す。
「冒険者ギルド…
私、王城外へはほぼ出たことがなく
…お恥ずかしいのですが、
ギルドの場所が分からないのです」
オセは、更に申し訳ないとばかりに
身を縮める。
そんなオセの髪付近から
もぞりと、影が落ち
老人の姿をしたフィアロアが現れる。
「儂が創設した、魔道兵団が
周辺の睨みを利かせているからのぅ、
冒険者の力を借りずとも、
魔物なぞ殲滅できるのじゃ!」
「その割に…魔王に王都侵入を
許しちゃってるじゃん?」
イルに痛いところを突かれ
逆上するフィアロア
「うるさい、この冒険者レベル1め!
これから魔王を叩きのめせば
済む話しなのじゃ!」
「残念でした〜!
もう僕、冒険者レベル5だもん」
「ほぼ変わりないじゃろ!
このデブモブが!」
どこに仕舞っていたのか、
木の枝の杖をまたしてもイルに
振り上げるフィアロア。
「ああ、もう、痛いって〜!
ほ、ほら!フィアロアも…
久々ギルド行ってみたいだろ?」
「…う…まあ、儂とて冒険者じゃったからのぅ」
イルとフィアロアが歩み始め、顔を上げれば…
…
とっくに、リーンとオセは先へと進んでいた。
「あ〜ん!
ち、ちょっと待ってよ〜!二人共」
小柄で小太りなイルと、
小児の上背ほどの老人フィアロアは
スラリとした足で歩く女性陣二人の歩幅に
追いつこうと、小走りで
続いて行くのだった。
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