29話 フィアロアの大事な杖【挿絵付き】
◇◇◇◇◇
四人は王都へ向かい歩き出す。
深く鬱蒼としていた森は
心なしか、軽やかに明るくなり
地面に溢れる木漏れ日も
頻繁に見かけるようになった。
ふと、歩きながらイルは気付く。
「ねえ、老フィアロア?
さっきの族が持ってた棍棒なら
あるんだけど…今使ってる木の枝より
杖として使い易いんじゃない?」
イルは交換しようか?と、
持ち掛けるが…
「…"老"は付けるな!
儂はそんな、歳いってないのじゃ!
…それに、
友が探してくれた
この木の枝で…充分、良いのじゃ」
不貞腐れたように
しわがれた声で言う老…もとい、
フィアロアを見て、イルは笑う。
照れ隠しのように。
「分かった、じゃあ、フィアロア…な!」
リーンも二人を見て
微かに口元に笑みをたたえる。
…この二人、
昔から戯れ合うような悪友だったな…と。
そうこう歩いているうちに、
先に見える道が明るくなっていた。
もうすぐ森を抜ける。
森を抜ければ王都がすぐだ。
◇◇◇
一行が森を抜けた先に、
見渡すほど広大な盆地が広がっていた。
眼の前に聳え、
旅人を圧倒するのは…
石造りの、丈夫で華やかな街並みだった。
そして、何より
他の国の都市と異なり、
また、その独特の存在感をもって圧倒するのが…
石造りの街壁を突き破るように
せり出た…
王都の四方に鎮座する
四体の巨大な石像だった。
石像は今にも動き出さんと
ばかりに迫力のある悪魔の造形をしていた。
「うわぁ!
ここがフィアロ魔導王国の王都か…
古臭い陰気な街だと思ってたけど
けっこう綺麗な街なんだな!」
イルは目を輝かせ、
純粋に感動しているが…
どうも無自覚に余計なことを
言ってしまうようで…
フィアロアに木の枝の杖で
強かに尻を叩かれる。
「なにが古臭くて陰気じゃ!
始祖を目の前にして
無礼なことを言でない」
「痛ぁ!
ああ…ごめん!
そういえば、フィアロアが
この国の開祖だったんだっけ?」
リーン達と出会う前には
既にフィアロアは王位に就ていた。
元々…
この国の前にあった国の
王族であったフィアロアだったが…
国の滅亡や、魔物の大襲来などを経て…
自身の絶対的魔法力をもって
敵対勢力を悉く討ち破り、
国家を再建国…
初代国王となったのだという。
「ま、儂はあまり国政には
興味が無かったからのぅ…
リーン様と出会い、
冒険の旅に出ることにしたのじゃ」
次の王位は執政官として
才覚のあった実の弟に譲ったのだという。
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