28話 も、も、毛根が…
◇◇◇◇◇
オセが二人へ深々と
頭を下げ、協力を感謝する。
と、イルは思い出したかのように
不意に振り返り…
「ねえ?
そういえば…
老フィアロアって、本人のコピー体
なんだよね?最初の時、
魔法発動しなかったのは何故?」
しかも、何故歳を取っているのか?
屈託ないキョトンとした顔で
イルは老フィアロアに聞けば…
老フィアロアは深い皺で表情こそ
伺えないものの…
明らかに憤然とした様で答える。
「儂は、オセの毛一本分の能力しかないのじゃ、
さらにその上…この毛……」
老フィアロアは肩を震わせる。
「…毛?」
皆も固唾を飲む。
「毛根が死んでおったのじゃ!!」
「…⁈ 」
オセはハッとし…
みるみる顔が蒸気し赤みを帯びる。
「す、すみません!」
…なるほど、
だから、フィアロアの姿は
ヨボヨボ老人で…魔法も使えぬほど
魔素(MP)が枯渇していたのか…
「でも、グリフォンの時は使えてたよね?」
イルの更なる質問にはオセが答えた。
「…多分ですが…
私と触れる事で…私の生体エネルギーを
吸収したのかと」
オセの毛から
生成されたフィアロアのコピー体…
オセの生体エネルギーを得れば
コピー体も本体と同じ力を
再現できると言う訳か…
少なくとも魔法は
そのエネルギーで発動できる…と。
リーンは聞きながら納得するが…
「ですが、
私程度の存在エネルギーでは
本来のフィアロア様のエネルギー量の
十分の一にも及びません
私のエネルギーを全て提供しても…
恐らく一時的な効果しかないかと…」
オセは苦笑いするが、
フィアロアは…苦い表情になる。
「オセの生体エネルギーを
引き出し過ぎれば…
オセの存在が保つまい…」
「え⁉︎ オセちゃんが消えるって事?
そんな…
危険なことだったの?」
イルも青ざめるが…
オセは微笑む。
「フィアロア様の御為なら…
私の存在など、いくらでも
消費下さって良いのです」
「オセちゃん…」
「さぁ、先を急ぎましょう!」
そう言って、オセは少し
よろめきながら立ち上がる。
下級魔法分程度のエネルギー消費とて、
かなりな負担はあると言うことか…
フィアロアは歯痒く感じ
拳に力を込める。
大切な部下を危険に晒さねば、
自身の魔法がまともに使えぬ体たらく…
こんな事で、
リーン様のお役に立てるのか…と。
フィアロアの重い空気を壊すように、
イルが飄々と呟く。
「それにしても…
周囲の木が酷いことになってるよ〜!
これで下級魔法なんだから、
上級魔法なんて使ったら…」
周りの木、複数本は
フィアロアの魔法により薙ぎ倒されていた。
もし…
フィアロアが上級魔法を
使っていたならこの周辺の森は全滅して
いただろう。
「縛っていた族らも吹き飛ばされたみたいだな」
「あっ…」
リーンの言葉にイルは青くなる。
女性陣に打ちのめされた上に…
フィアロアの風で飛ばされたか…
きっと彼らは、その痛みと恐怖で
…二度と悪さはしないだろう。
「い、一応…族達が生きてるか…
探しに行こう?ね?」
イルが苦笑いで皆を促す。
「そうだな、
身包みまだ剥してないしな!」
うん、絶対もう懲りたと思う。
情け容赦ないリーンの言葉を
聞きながしながら、イルは歩く。
そうして、ある意味、
見晴らしもよくなった林道を一行は進む。
王都も間近だ。
◇◇◇◇◇




