25話 また襲来!今日はなんて日だ!
◇◇◇◇◇
戦闘を終え、
皆が一旦、弛緩した空気になっていた。
「あの…」
オセは老人の気配が気になったのか
かがみ込んで顔を見ようと
老人に触れていた刹那…
上空から殺気を感じた。
殺気の存在はかなりの速さだ!
今日は本当に、本当に!忙しい!
迎え撃つ体制も、ままならない…
それは、上空から猛烈な速さで
直下降してくる。
「グリフォンだ!血の匂いに
引き寄せられたか⁈…皆、退避しろ!」
リーンが素早く察知し、警告する。
オセも常なら身軽に容易く
退避できた筈だった。
しかし…
何故かこの老人を守らなければ
ならないと、
無意識下の本能が行動させ、老人を掻き抱く。
グリフォンはオセ達に狙いを定め
急降下する。
その間、一秒か…二秒か?
「オセちゃん、危ない!」
イルの叫び声も響く…
グリフォンは鋭い爪を突き立て
そして…
ーー風塵ーー
しわがれた低い呪文が聞こえた。
これは、詠唱を必要としない最下級呪文だ。
魔術を習いたての子供が
旗を靡かせる程度の威力しかないが、
しかし、最も速く発動する
魔法でもあった。
呪文と同時に
何故かオセの体もごく淡くだが
発光したようだった。
刹那…
自称フィアロアと名乗る
老人の手のひらから、
竜巻ほどの威力の暴風が巻き起こる。
一瞬の静寂、
全てが時を止めたかのような
無音の直後
地響きと共に爆速の風が暴れ出す。
周囲の木々は風の強さに
耐えられず、薙ぎ倒されていく。
「む?これはいかんな!」
リーンは咄嗟に走り、イルを掴む。
いくら小太りでも、この風の
威力では飛ばされていまうだろう。
飛ばされかけたイルを掴みながら
リーンも風の威力に耐える。
グリフォン目掛けて放たれた
魔法は、周囲をも巻き込む
威力だったが…
それ以上に
グリフォンに大ダメージを与えていた。
風に切り刻まれ、
血は蒸発し、肉は千々に飛び散る。
細かな羽の破片が上空から舞ってくる。
風塵…
あくまで言うが、
この呪文は最下級魔法だ。
この下級魔法を、このような
威力で発動できる潜在魔力値が
超高度値である者は…
現在、この世にいるのだろうか?
魔法発動が収束後
リーンは老人に向き直りため息
混じりに言う。
「やはり、フィアロアか?」
老人は自身の手と、
オセを交互に見ながら
やがて、リーンに向けて肯首する。
「ええ〜⁈
この爺さんが?フィアロア?本当に?」
「誰が爺さんじゃ!!」
イルが老人の肩に手を伸ばすが、
老人は持っていた木の枝で
イルの手を打つ。
「イル!
貴様こそ、そんな…
デブでブスでグズで小太りな白豚に
なりおって!
人の事言んじゃろうが!」
「ええ…」
老人から、めちゃくちゃなことを
言われたイルだったが…
ふと、懐かしさを感じた。
かつての仲間、
フィアロアも…こんな喋り方と、
こんな風に、とにかく口が悪かった。
それに、初対面から
この老人は自分の名を知っていた…
確信を持つ訳ではなかったが…
イルは、怪訝そうに
眉を顰めながらも、
強引に老人の顔を引き寄せ
白髪の長い眉と、
垂れ下がった瞼を指で
押し上げ…老人の瞳を覗き込む。
「あーーーっ!!」
イルは顰めていた眉を更に
吊り上げ、不快感を露わにするのだった。
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