23話 けっこう雑魚い件
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魔法…
この世界では人類が魔物と
同格に行使できる唯一の手段であり、
恐るべき能力である。
魔術を使える才を持つ者は
限られていて、
且つ、長い年月特殊な訓練を
積まなけれならない。
故に、魔術士は人々から
尊敬と畏怖を抱かれる存在なのである。
そんな恐るべき魔法を…
今!
老人が唱え、荒ぶる業火が族共を焼き尽く…
さない!!
「…え?」
老人の手のひらに集まった
魔素は…
小さな小さな火となり…
ひらひらと舞い落ちる
木の葉一枚を…
…焼き尽くした。
「はあぁぁ⁈」
恐らくこの場に居た全員が発しただろう。
あれだけ朗々と
身の毛もよだつ呪文を唱えて…
出てきた炎は
小さなロウソクに灯るような火だった。
四つん這いになりながら逃げる族、
半泣きになりながら逃げる族…
皆一様に静止する。
「ふむ?
おかしいのぅ…
では、風魔法ならどうじゃ!」
老人は首を傾けながらも
気を取り直し、風の呪文を構築する。
固唾を飲んで見守る周囲。
老人の手のひらに
渦巻く気流が発生する。
ーー乱舞嵐龍ーー
手から放出した風は、
リーンのスカートをふわりと捲る!
「⁈ ⁈ ⁈ 」
そして、静寂が周囲を包み込む。
「おいっ!!!」
先ほどまで青ざめていた族共の
顔は真っ赤である。
情け無く半べそをかいていた
族は、今や顔を真っ赤にして地団駄を踏む。
「おいっ!
なんなんだ⁈
ジジイ…よくも虚仮威ししてくれたなぁ⁈」
ろくに魔法の使えない老人なぞ、
もはや、族共の恐怖などではない。
族は持っていた棍棒を振り上げ
老人に襲いかかる。
「爺さん!危ない、逃げて!」
イルが老人に手を伸ばすより早く…
バキィィィ!!
耳を塞ぎたくなるような
強烈な身体を打ちつける殴打音が響く。
「爺さん!!」
あんな、か弱い老人だ。
強かに打ちつけられれば…
無事では済まないだろう。
背後から打ち付けられた
体は、痛みで息も吐けぬまま
崩れるように地面へ倒れていく。
「ひいぃ⁈」
悲鳴が上がる。
しかし、それは…
族共の方からだった。
強かに打ちつけられ、倒れ込んだのは
先ほど棍棒を持って振り上げた族の方だった。
「…まったく、情け無い」
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