12話 勇者パーティ再始動
◇◇◇◇◇
「ブレイブダンジョンの
浅層大破壊と…近隣山脈の粉砕破壊
…あなた方のした事は大問題ですよ」
後日…
リーンとイルは、
ギルド建物奥の部屋で
ギルド職員に事情聴取されていた。
その凄まじい破壊力で…
ダンジョンには大穴が開き、
山脈は平地となり…
すっかりダンジョン近郊の
地形は変わってしまっていた。
「す、すみません…つい」
反省するイルだったが…
ギルド職員はニッコリと笑い、
容赦なく二人に町からの追放処分を下した。
「はぁ…町追放かぁ…これから僕ら…
どこに行けば…」
項垂れるイルだったが、リーンは冷静だった。
「いや、むしろギルド職員には感謝だな。
我らの正体を周囲から隠す為に
敢えて追放してくれたのだ」
「え?そうなんですか?」
「表向き…我の魔法が暴走して破壊を…
という事になってしまったがな?」
勿論、それは虚偽の話である。
しかし、魔法の暴走が
一番有り得る現象で、
虚偽の言い訳としては無難なのだ。
ギルド本部が、二人の正体に
勘付き、配慮してくれたのだろう。
「リーン様にも迷惑かけて…すみません」
「まぁ、気にするな。
それに次へ行く先も決まったしな」
次の目的地決定の背景には、
意外な人物からの密告があったからだ。
ブレイブダンジョン、その攻略を目論み、
ラスボス戦で
大怪我を負った宮廷魔術士…
その者から情報が入ったのだ。
『我が国で魔王らしき存在が暗躍している』と。
情報が真実なら追わねばならない。
隣国、魔導王国フィアロへ…
真相を確かめる為、
リーンは向かう事を決意する。
「当然、僕も行きますけどね!
魔導王国フィアロ…かぁ」
イルは若干、眉を顰める。
その国は…
リーンとイルの
仲間の一人だった人物の出身地だ。
「アイツ…まだ封印されてるんだよな?
そっちのが平和でいいけど!」
「何を言うか?
奴とキサマ、一番仲が良かったではないか!」
リーンが意地悪そうに口角を上げる。
「仲良くなんて…!」
イルは憤然とした顔でそっぽを向く。
その横顔に朱色に染まった陽が差し込み
イルの頬を赤く滲ませる。
『素直じゃないな』
そんな幼さの残るイルを見て
笑いが込み上げる。
かつての大事な仲間…
今は失われた仲間…
リーンとイルは、
仲間を取り戻す為に旅をする…
八百年前…
魔王による姑息な手でリーン以外の仲間は
皆…闇に堕ち、狂わされた。
暴走した彼らをリーンは苦肉の策として…
聖女が使える、封印の能力で
彼ら…仲間の時を止めるしか手段が無かった。
イルもまた、本体は今も封印されている。
ブレイブダンジョンのラスボスと謂れる形で…
けれど、イルは特殊な方法で蘇った…
転生という手段を使い、
魂だけは封印から解放され…
新しい、今の肉体に宿ったのだ。
こうして、
復活したイルは、リーンと合流した。
「リーン様って…少し変わりましたよね?
八百年前と比べて…」
「そうか?余り自覚は無いが…」
「なんか…表情が柔らかくなりました!
人間らしいって言うか…」
リーンはそんなイルの言葉を聞いて
キョトンとしながら
イルの瞳をじっと見る。
"人間らしい"…そんな言葉が
リーンには酷く嬉しく感じた。
殺戮を繰り返す奴隷兵だった前世の自分だが…
もう一度、やり直せるのだろうか?
我が変われたのは、きっと
目の前にいる無垢な瞳のバカのお陰かも
しれないとリーンは僅かに微笑む。
失った仲間が…こんな形とはいえ
戻って来てくれた事に…
感謝して…
「さぁ、出発するか!隣国フィアロへ」
魔王を倒す為に、
仲間を呪縛から解放する為に
世界に真の平和を齎す為に…
リーンとイル…
そんな二人と…仲間達はかつて
勇者と呼ばれていた。
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