119話 リーンvs女処刑人
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低級小悪魔は、必死な形相だった。
リーンの目を見、手を伸ばしていた。
「…口を縫われているのか?」
「そうですね…召喚された悪魔なのでしょう」
オセが一般的な事だ…と言うも、
既にリーンは、胡乱気な表情から悪魔を見つめる表情は、真摯な顔に変わっていた。
リーンが人垣を掻き分け、前へ出る。
「そこの処刑人…いや、冒険者か?
…少し聞きたい。
この悪魔は何の罪を犯した?」
目元を覆うようにレースの頭巾を目深に被り、
頭部とは逆に煽欲的な際どい衣装を着た…
処刑を実行しようとしていた女…処刑人は、
不意に現れた者に怪訝な顔をする。
「え?なによぉ?
悪魔を処刑するのに理由なんて無いわよぉ? だって悪魔ってだけで死に値するじゃない?」
口調は甘やかだが、女処刑人の態度は険しく、
リーンにも武器である鞭を向ける。
「邪魔だてするなら…アンタにも痛い思いさせてあげるわ?
鞭でじわじわ皮膚を裂かれたら…痛いわよぉ?」
「…脅しには乗れんな?
我はただ…罪状不明の者を例え悪魔だとしても、民衆の前で徒に処する行為は、残酷であり…民衆の精神衛生にもよろしく無いのでは?
…と、疑問に思っただけなのだが?」
「は?回りくどいわね?
ギルドで決められた事よ!邪魔すんな!」
「ほぅ?我は少しギルドにも顔が効く…
責任者を連れてきて貰おうか?」
処刑人とリーンは一歩も引かない。
そして…
それを見守る当の悪魔は…泣いて、いた。
次第に民衆の中にも、悪魔に対して憐れむ者がでてきた。
「そう言えば、この悪魔何かしたっけ?」
「子供の前で残酷な事は見せたくないわね」
「何も見せ物にしなくてもねぇ?」
そんな声がチラホラ聞こえてきた時である…
ーー万物に宿し怒り 魔を糧に
奮い立ち其の敵に 紅蓮の業火を
吐き出せーー
経緯を見ていたイルの背にいたフィアロアは
小さく呟くように詠唱をした。
超最上級呪文だ…
とはいえ、姿は老人のまま詠唱する。
「おいおい…フィアロア…?」
イルは呆れたように声を掛ける。
…だが、止めはしない。
ー業火爆嵐ー
呪文は成り、フィアロアの指先から
小さな蝋燭の火程の炎が宿り…
ふわふわと移動する。
行き先は悪魔を囲む木の柵…
炎が柵の一本に着火する…
木の柵の一本が焼けていき、それに気付いた
低級小悪魔は焼け焦げ、脆くなった柵の一本を揺さぶり…ついに壊すことに成功する。
痩せ細り、小柄な低級小悪魔は、何とかそこから抜け出し…
者凄い速さで…逃亡した。
「あ!!!
くそっ…アンタのせいで悪魔が逃げたじゃないかぁ!!」
「いや…我は何もして無いが?」
…と、言うものの…リーンの目は少し泳ぎ、
胡乱気にイルとフィアロアを見る。
「あ〜あ、フィアロア?
逃しちゃって…責任重大だぞ〜?」
「ふん…あの悪魔…何か悪さをしたのなら、
今度こそ儂が魂ごと消滅させてやるから
良いのじゃ!」
「まあ、責任なら僕も一緒に取るけどね〜」
「悪魔にも二種類いて…魔王に心酔している者と、野心なく魔界で暮らしている者がいて…
後者なら…まだ救いがあるのですがね」
オセは苦笑いしながら話す。
逃げたあの低級小悪魔と…嫌な形で…
再会しない事を願って…
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