116話 廃墟に巣食う闇
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ダルムの町の北…
町の外れ、荒くれ者達が住み着くスラム集落を少し抜けた先に、古びた建物があった。
数年前迄は、ドワーフ族の町長が住んでいた
建物だと言うが…今は廃墟となっている…
スラムの外れ者とて、決して近寄らぬそこは
曰くつき…と町民から忌避されていた。
度胸試しと廃墟に近づく者らは、皆帰って来ぬのだ。本当に。
この町の正当な町長も、数年前から突如として行方をくらませており、
冒険者ギルドの職員が、町長代理として務めているが…北の廃墟の件は未だ手を焼いていた。
そんな廃墟に女の声がする…
「まだアーティファクトは見つからないのか?」
苛立ちを抑えようともせず、女は部下を叱りつけていた。
「全く…この数年間…ドワーフには逃げられるわ、町中を探させてもアーティファクトの手掛かりは無いわ……あぁ、もういい!
いっそ、この町の人間を皆殺しにしちゃおうじゃないか!」
女は、そんな恐ろしい事を軽々しく口にする。
…いや、女は本気のようだ。
「しかしながら、主様…町民の抵抗も考えられますが…」
平伏しながら、部下は恐る恐る問う。
「ああ、ギルドってのが厄介か?
…ふん、私に考えがあるんだよ。
一夜にして、一瞬で皆殺しにできる…ね?」
女主の冷酷さに、周囲の部下達は固唾を飲む。
カタリ…
そんな静まり返った場に、小さな物音がした…
女主は鋭く目を向ければ、部下の一人が
廃墟から離れていくのが見えた。
「…は?…逃亡か⁈
…ったく、ふざけるんじゃないわよ!
おい!お前達…奴を追え!
…裏切り者は許さないよ!」
女主の命令は絶対だ。
この部下は…なぜ逃げたのか分からないが
…捕まればどうなるかは、明白だった。
他の部下達は、多少不憫に思いながらも容赦はしない。
裏切り者を捕らえれば褒賞もあるだろう。
「逃すな!追え…!」
一斉に廃墟は騒然とする。
怒号、足音…逃げた者を追跡する騒音…
数十の足音がバタバタと通り過ぎる…
再び、廃墟が静寂を取り戻したところで…
廃墟隅で隠れていた者、
裏切り者…と、呼ばれたその部下は動きだす。
廃墟をスルリと抜け出し、町中へ…!
その者が目指すのは…目指すのは!
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