109話 黒髪の魔導士
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ーー乱舞嵐龍ーー
八頭の龍が荒れ狂うような威力の魔法が、
大気を轟かせ、大地から土を巻き上げ…
翼の悪魔を、貪り喰うように襲いかかる。
「…え?…」
悠長に構えていた悪魔は、自身の置かれている状況を飲み込めないでいた。
自身の自慢の高次魔法防御力で…
人間如きの、柔な魔法攻撃なぞ、簡単に耐えてみよう、なんて…
余りに…傲慢で愚かで無知であった?
「いやいや!ワタシは強いのだ!
人間なぞ、敵では…無い…筈なのだ…?
あり得ない!あり得ない事だよ!」
この者は人間では無い?
…では、何なのだ???
己に敵の力量を詮索する慎重さがあれば…
一目散に退避したであろうか?
いや、逃げたとて…逃げ切れたかどうか。
それ程までに、この黒髪の魔導士は、常識を逸脱する強さだった。
「ワタシを…召喚した我が主より…更に強い
存在がいる…など…?」
翼の生えた悪魔は、風に千々に身体を切り裂かれながら、恐怖を超えて感嘆する。
ーーこの強さは、まるで…数百年前…
魔王様を酷く苦しめた、
…かの勇者に匹敵する強さではないか?ーー
薄れゆく意識の中、翼の生えた悪魔は
更に驚愕する会話を、耳にする事になる。
「あー!!フィアロア!
手加減してって言っただろ?
僕にも獲物のトドメ刺させてって〜」
小太りな少年は地団駄を踏んでいた。
それを見た黒髪の魔導士は…
「じゃから?手加減して風魔法を使ったのじゃ
…せっかく手加減したのにのぅ…根性が無い」
「あ〜…じゃあ仕方ないかぁ」
手加減…?あれが⁈
悪魔は泣いている場合ではないが、泣きたくなった。
「…手加減…あ…ああ…大公…様ぁぁ…」
最期まで驚愕しながら翼の悪魔は消えた。
この者達が、かの勇者だと知れば…
更に驚愕し、心臓に悪かっただろう。
消滅したのだから、心臓も何もないのだが。
「うう…せめて雑魚悪魔だけでも!」
イルは慌てて周囲を見渡すが…
「もう、我が全部殲滅させておいたぞ?」
リーンはそう言い、念入りに杖に付いた汚れを拭き取っていた。
「全く…
ウチのパーティの火力共は戦闘狂で困るな…」
脳筋肉体派聖女もどうかとは思うが…
「僕の出番がぁぁ…
可愛い女の子にモテるチャンスがぁ…」
女の子に良い所を見せられなかったと…
ガックリと項垂れたイルの頭上から、
エネルギーの切れた、老フィアロアが上空より落ちてくる。
ドガッ!
「痛あぁ⁈フィアロア!上から落ちてくるな!
その禿げ頭にチューしてやろうか⁈」
「やめろ!この汚物め!」
二人の漫才が始まった横を過ぎ、
主へ注いだエネルギーで体が縮み、幼女の姿になったオセが、三人の少女冒険者らの元へ行く。
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