104話 助けを求める声とは?
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風に乗って、微かに声が聞こえた。
オセの、魔獣である耳が故の聴力の恩恵だったが…
「皆さま!人間の声が聞こえます!
助けを求めているようです!」
オセの発言に、一行の顔つきが変わった。
人間の…女の声だ。
いや、息づく人数は一人ではないようだ!
「旅人か?…荒野の魔物に襲われているのか?」
「僕にはまだ声が聞こえないな…
でも急がなきゃいけないよね〜?」
「オセ、先行して行けるか?」
一行は即座に決断する。
もしも、それが…野盗の部類の罠だったとしても…間に合わないよりはいい。
そして声は人間には聞き取れない程
か細く遠いらしい。
オセが聞いた声を頼りに先行して貰うしかないようだ。
ダルムへの道は更に遠のくだろう。
陽も落ち、現在地も更に分からなくなりそうだ。
しかし、人々を救うことが勇者の使命。
助けを求める存在を前に躊躇うようでは、
それこそ勇者失格だ。
「では、行って参ります!」
「うむ!我も走る、イルとフィアロアも
できるだけ遅れぬように」
「了解!フィアロア背負ってるから
ちょっと、しんどいけどね〜」
「うるさい!さっさと走れ」
「ちょっ…杖の先にニンジン吊るすのやめてくれる?僕、豚じゃないから!」
ポンコツコンビの掛け合いに、ほんの少し口角を上げるオセ。
そして次の瞬間、人型の姿から全身漆黒の魔獣の姿へと変わり、高らかと跳躍しながら身を翻す。
その黒き獣は、そのまま黒き風と化するように、黄昏が岩棚を染める大地へ飲み込まれていく。
リーンもまた、遅れじと走り出す。
オセの通った道を間違えなければ、
問題なく到達するはずだ。
華奢な聖女と侮るなかれ!
二万年間、肉体鍛錬した聖女を舐めるな!
本気逃げする鹿を脚力で追いつき捕食するくらいの豪速にはなっているのだ。
軽やかに走って行くオセと違い、
リーンは砂煙りを上げながら力強く走る。
「…相変わらずリーン様…凄いよなぁ」
「うむ…知らぬ者が見たら、闘牛かと間違われるのではないかのぅ?」
イルの走りは遅い。
小太りで運動音痴の肉体に、ヨボヨボ老人を背負っての移動だ。
しかし二人が遅れたとて、迷うことはない。
…何故なら、リーンが剛速で立てた砂煙りが充分目印になるからだ。
二人はただ…
自分達が到着した頃には、
事件?は、解決してるのでは無いかと、
自らの活躍の場が無くなることを心配するのだった。
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