贈り物
午後、城都に散策に出ていた2人は周囲の視線を我が物としていた。
色の薄い髪に透き通った白皙の肌、絶世の美貌をそなえたフィストリア
黒色の髪に端正な顔立ち、腰にはアルカディアを携えたルーカス
外見的には対照となっている2人だが、並んでいる様子はまさしく絵画のようで周囲の人間は息を呑んだ。
美女のほうは最近王太子が連れてきたという情報しか出て来ず、彼女の存在を不安視する者もいたが、この場を見た者は皆が思った。
まさにこの2人は比翼の鳥、その仲睦まじい間に入れる者はいないと———
2人は屋台の食べ物を食べ、城都の雰囲気を楽しんでいた。
ルーカスはフィストリアと共に居るだけで普段よりも城都を散策することが楽しく感じられた。
旅人にしては珍しくフィストリアも城下町の様々な物を見て楽しそうにしていた。
◇ ◇ ◇
日も少し傾き城に帰る道中、ルーカスは足を止める。
「やあ、店主。ここの装飾品はいい物が多いな。」
ルーカスはふいに目に留まった、装飾品店の店主に声をかける。
「はは、ルーカス殿下の目に留まるとはこれ以上ない幸運ですね。うちの装飾品は手作業で丁寧に作っているんです。お一つお隣の美人さんにどうですか?」
店主の女はそう言った。
ルーカスは店主の言葉に促されルーカスは一つ手に取る。
ほんのりと青みがかった薔薇の装飾のなされた銀の髪飾り。
フィストリアの白い髪でも目立ちすぎない、彼女の瞳と似た青色のそれは確かな存在感を兼ね備えていた。
「そうだな。それじゃあ、これをいただこうかな。」
ルーカスはそう言って代金を払いフィストリアの方を向く。
「フィストリア、良かったらこれをつけてみて欲しいんだが。」
フィストリアの意思をなにも聞いていなかったことを思い出し、ルーカスはおそるおそる聞く。
「ええ、もちろん。せっかくあなたが選んでくれたので。」
そう首肯するフィストリアの髪にルーカスは触れ、先ほど選んだ髪飾りを付ける。
髪飾りを付けられたフィストリアはルーカスに問いかける。
「どうですか?似合っていますか。」
ルーカスに感想を求めるフィストリアはいじらしくて可憐だった。
「ああ、よく似合っている。今まで君ほど可憐な女を見たことがない。綺麗だ、フィストリア。」
ルーカスは自分の感じたことを率直に伝える。
フィストリア自身にここまで率直な感想を口にしたことが初めてだったためか、フィストリアは紅潮する。
そんな彼女の動揺にルーカスの心も揺れる。
ルーカスはそんな様子のフィストリアを愛おしいと思いながら、店主に礼を言う。
「店主、いい買い物ができた。感謝する。」
そう言うとルーカスは、顔を赤くして黙ってしまったフィストリアを連れて出店を後にした。
◇ ◇ ◇
城に帰った2人はルーカスの執務室に戻ってきていた。
少し落ち着いた様子のフィストリアがルーカスに抗議する。
「ふぅ、あなたは羞恥心とかないんですか?大衆の面前であんなことを恥ずかしげもなくを言うなんて。あなたはお世辞とか言い慣れているのかもしれませんが、私はあまり言われ慣れていないんですよ。」
そう言うフィストリアにルーカスはすこし驚く。
「べつに、言ったことはお世辞なんかじゃなかったんだが…それより、お世辞を言われ慣れてないは嘘だろう。てっきり、君はある程度格の高い家の出身だと思っていたんだが、それほどの美貌なら普通に褒められることも多かったんじゃないのか?」
フィストリアは実際、ルーカスの執務を手伝ってくれている。
王太子であるルーカスの仕事の補佐ができるほどの教養があるとしたら、ある程度格の高い家出身だと思っていたのだ。
「……まあ、格が高いっていうのは、否定はしませんけど……昔は病弱で、体調が良くなってからも箱入りで、その後はすぐに旅に出ちゃったんですよ。それに、そこまで率直な感想を行ってくる人なんて久しぶりだったんですよ。」
そう言うフィストリアの瞳は昼に見た過日を思う目をしていた。
「まあ、いいさ。フィストリアが俺に話してくれるなら聞くが、俺から聞きに行くことはない。それにその方が気が楽だろう。」
「……ありがとうございます。いつか、あなたには話したいと思っているんですけど…もう少し、待ってください。」
「構わないさ、まだ時間はあるんだ。ゆっくりしていくといい。」
ルーカスは彼女が話したいと言う話に興味が惹かれたが、彼女が話すと言った以上、いつか本当に話してくれるのだろう。
これまでの信頼か、彼女は嘘をつかないという確信があった。
「それよりも、今日はありがとうございました。髪飾りも…大切にしますね。」
そうはにかむ彼女にルーカスは頷く。
彼女の空色の髪で青薔薇の装飾が煌めいていた。
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