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小夜曲はこの世が王のために  作者: 南空葵
間章「国を治める者たち」
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剣王




ルーカスはこの日グラディア王都の広場で演説をしていた。



その演説は新たな戦いに皆を投じる出立の言葉であった———



もう数ヶ月前になる、エル・メディスでのベリタスの戴冠。



その日彼はシルヴァリオンとの明確な敵対を宣言した。


数日後にはグラディアと本格的な同盟を組み、北に対する戦争の準備を進めていった。



そんなエル・メディスから、北が東西の国境に対して大量の兵を動かし出したという連絡が届いていた。


ルーカスは今、国民を前にもう目前に迫った大戦に向け、士気を上げるために言葉を紡いでいた。




 ◇   ◇   ◇




「今の我がグラディアには心強い盟友がいる。」



その言葉から始める。彼はこの二年以上の時間で育んできた各国との信頼は強固なものになっていると信じている。



「一つ、東のフラクタル…清廉潔白を身に宿した彼等はその流麗な戦いを見せてくれることだろう。」


南派閥の古株は契約魔術と水魔術を用いて人の権利を保障している。厳格な制約の元で人々は自由に生き、その人生を謳歌している。



「二つ、南西のアルカノス…実力主義の彼等はその強力な魔術で皆を援護してくれることだろう。」


元は領空侵犯から始まった関係だったが、その国はかつての疲弊を過去のものとし繁栄を極めている。魔術師たちの理想郷として魔術の発展も著しい。



「三つ、西のエル・メディス…大胆不敵な彼等は我らに治癒を施し戦意を奮い立たせるだろう。」


南派閥の新参者は今や新王の元、北へ怒りの炎を滾らせ戦意を燃え上がらせている。その国は人々の命と自由を守るために戦う。



———そう今の南派閥はかつてないほどに強大になっている。

各国の戦力をシルヴァリオンに対して注ぎ込む戦いになろうとしている。


ルーカスはアルカディアを高く、高く掲げる。



「そして、我らグラディアは己の信念を貫き、最前線で敵を薙ぎ倒し、理想を掴み取るために戦おう……!」





「俺たちは北との大戦、負けることは許され無い。」



ルーカスはそう言葉にする。

北の暴挙は、大陸に混沌を齎すものだ。


「北の暴挙はすでに皆の耳にも入っているだろう。」


南東の小国崩壊の斡旋から始まり、最近では各国で要人の殺害が目立ってきている。



「確かに帝国は魔族の力を振るい、大陸最強の国として君臨している。」


「しかし、あの国に大陸を支配させるわけにはいかない。」



北の皇族は人を信じていない。

それは彼等の支配体制から如実に現れている。


シルヴァリオン帝国は人口のとても多い国だ。

それは現皇帝が幼年にして即位した際に人口増加を命じたからだと言われている。


急死した前皇帝は現皇帝よりも宥和的な人柄であったはずにも関わらず、それが息子に受け継がれることはなかったようだ。


支配魔術で国民を支配していき、交わらせ人口を増やし、育成する。


とても人のする事には思えないが、ベリタスによるとそれが事実らしい。



「我ら連合軍はシルヴァリオン軍に対して徹底抗戦する。それが大陸の人々を守るために必要なことだからだ!」



フラクタル、アルカノス、エル・メディス———東と南西と西はすでに南派閥として北に対抗する用意が完成しつつある。


西方戦線と東方戦線は互いに酷い総力戦となるだろう。


それでも、犠牲を厭わず戦わなければならない。


北の支配を止めるために、人々が自由であるために———



今のルーカスには2つの大きな願いがある。


『大陸に平穏を、そして手の届く範囲の人々を救うこと』


ルーカスが今世で王として戴冠した時に抱いた夢だ。

今の人々は常に争いを恐れている。

それは人々にとって争いが身近すぎるからだろう。


北との大戦が終わり、黄金の果実を手にしたら、大陸には再び束の間の平穏が生まれる。

今、ルーカスは王としてそれを願っていた。


そして2つ目


『大切な人を失うことの無いように』


ルーカスが前世で剣士として抱いた願いだ。

レオを失い、傷心した自分はただそれだけを願っていた。

だがしかし今世でも願っていることだ。


これはフィストリアに対するルーカスの歪んだ愛でもある。


彼女を一瞬で失うくらいなら彼女を失わない永遠を選ぶ。


ルーカスは彼女と永遠をも生きれると確信している。

ただの自己修復…死が無いわけではないが、彼女を失うことは常人より遥かに難しい。

ルーカスは彼女と永遠を生きたいわけではない、ただ彼女を永遠に失うことを恐れているのだ。



「俺たちはシルヴァリオンを下し、果実を手にする。」


「そして大陸に平穏を齎そう———」



「そのための障壁となる存在は……」



ルーカスは自身の手を臨む。

そこにはかつて己が望んだ剣が煌めいている。


光を集め、闇夜に紛れ、万物を切り裂く剣。


自分がそれに誓った願いを思い起こす。



「このアルカディアで…俺の剣で切り裂いて見せよう!」



ルーカスは願いを叶えるために、北との大戦に向けて準備を進める。


かつてのように一介の剣士としてではなく、一国の王として。



そう、全ては自身の願い(よくぼう)のために———





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