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対峙


今回すごい1人対2人の舌戦がざーっと書いてあるので、読むのが大変でしたら最後の20行くらいで何で合意したのか分かるようになってます!



あれから2日が経過した。



ルーカスとフィストリアは、西の王太子ベリタスが用意した一室に転移魔術でやってきていた。



この会合は本当に密かに行われるものだ。



参加者は、


エル・メディスからベリタス王太子。


グラディアからルーカスとフィストリア。


そのたった3名であった。



ルーカスの心情は渦巻いていた。


ベリタスは1人だが、部屋を用意している。何を仕掛けられていてもおかしくない。


そう心の中で分析する。



フィストリアには何かがあった時に対応するために来てもらっていた。


一応この日のために、彼に提示できる資料は集めてきたのだが、それで納得してくれるかどうかは分からなかった。



同年代の2人、しかし、面識はない。



会合が始まる———



ベリタスが口を開く。


「まず言っておく。わが国の国宝———『盤外の書』が、北の大国…シルヴァリオンへと送付されるはずであったところ、途中にて奪われた。民衆のグラディアがやったとする声は日を追うごとに大きくなっている。民の血が沸き立つのも当然だ。貴公の側に説明を求める。貴国は何をしていたのか。」



それに、ルーカスが応える。


「ベリタス殿の痛感するところは俺も理解している。だが事実から目を逸らしてはいけない。まず、グラディアはこの数ヶ月、アルカノスとの同盟に基づき、アルカノス領内の復興に協力していた。ベリタス殿の言う時刻、俺たちの海路は荷物の運搬で断たれ、兵の多くを内陸の復興事業と治安維持へ割いている。グラディアも戴冠が終わってから三ヶ月ほどしか経っていない。まだまだ、新たな国政の立て直し最中だ。グラディアにエル・メディスの護衛艦を撃沈するための余力は、今はない。」



ベリタスは鋭く反論する。


「ならば、証拠を見せてもらいたい。言葉だけでは民は収まないからな。公文書、軍の出動記録、港での荷札———我が国の役人は運送の追跡記録を集めている。貴国が無関係ならば、示すものはあるはずだ。」



勿論ルーカスは持ってきている。


「ここに宰相の遣いが持参した、我が国海軍司令部の出動記録、港湾税関の入出港の印の写し、そして戴冠関連の年布告だ。見ればわかる———当該期間、グラディア船団の多くはアルカノス沿岸に荷物の受け渡しで配置されており、エル・メディス方面へ向かった艦は一隻たりとも記録にない。」



その資料をベリタスは目を細めて確認する。


「ふむ、確かに、貴国の艦隊の配置はここにある。だが、文書は人の手で偽造もできる。貴国が強く否定するならば、なぜ我が民はグラディアの関与を疑うのか。流言には出どころがある。フラクタルの関与も疑っているのだ。貴国はフラクタルと友好国だが、そこが関与していないと断言できるだろうか。」



ルーカスは東の現状を思い出す。


「確かにその疑いは筋は通るが、理由はあるのか?今のフラクタルは北の大国、シルヴァリオンの従属国である北東の小国シルヴォールと小競り合いをしているはずだ。わざわざ対面の、距離も離れたエル・メディス内外を乱しグラディアと争わせる必要などあると思うのか?しかし、まあ、可能性を完全に否定するわけにもいかないがな。」



ベリタスはルーカスの言葉を聞き、自分の調べ通り、筋が通っていることを確認する。ここで仮説を立てる。


「シルヴォールはシルヴァリオンの従属国であり、北の国家利害に沿って行動するだろう。北にとって最も得になるのは、エル・メディスとグラディアが衝突して軍事的疲弊を味わうことだろう。貴国と我が国の関係を裂き、シルヴァリオンは地域での優位を保つ。もし北が直接手を下すには同盟の破綻の危険がある。だが、従属国シルヴォールを用いれば、あたかもグラディアの所業に見せかけることが容易だ———運送路の偽装、流言の拡散、身代金の要求。そうした工作は全て、彼らに利する。」



その仮説にルーカスは驚く。


「ベリタス殿の仮説は確かに筋が通っている。俺たちも同じように考えていた。———民意は刃になるという。君は民の声に煽られているといったが、君らの港での治安と運送の管理にいくつか甘さはなかったのか?シルヴァリオンの役人は荷物の受け渡しをどう手配していたのか?もし護衛が脆弱であったなら、それを突いた者が犯行に及んだ可能性もある。過失と陰謀の区別をつけないといけない。」



ベリタスは顔を曇らせる。


「その点は私も承知している。運送は公的な保護に委ねられていた。だが護衛の縮小が意図的だったなら話は別だ。内通者の存在も否定できない。

だからこれは私の案だ———短期的に全面戦争には踏み切らずとも、互いの軍を大きく衝突させるように見せ、長期にわたって継続させる。

指揮官の腕が試されるがな。

犠牲を最小に抑えつつ、動揺した者や間者をあぶり出す。疲弊の中で必ず見えざる糸が露わになる。これこそ、私が望む"戦"だ。戦火で誤った死を招くより、時間を使って相手方の内部を炙り出す。」



その作戦にルーカスは目を丸くする。


「互いの軍をぶつける、だと? それは君の言う通り“戦ではあるが戦死者を最小化する”ということか?具体的にはどういう戦術を想定している?遠交近攻や封鎖か、それとも小競り合いの継続で補給線を断つ陣形か。俺は不要な犠牲は嫌うぞ。俺の望みは、事を早急に静めることだ——可能ならば外交と諜報で解決したい。」



ルーカスの問いにベリタスは即答する。


「まずは双方が全面衝突に踏み切らない旨を、我々が共に宣言する。

だがその名の下、沿岸の哨戒を厳にし、小、中規模の接触戦を故意に起こす———示威と偵察を兼ねるのだ。

捕虜の取り扱いは厳格に規定し、ただし捕虜を取り情報を精査する。

ある程度膠着した頃に、我々はフラクタル、シルヴァリオン、シルヴォールに対して、合同の調査団結成を要求する。

外交の窓口を開きつつ、現場では"時間をかけて真相を掴む"。

要は、瞬発的な決戦ではなく、持久戦で内部の間者と工作を暴くのだ。」



ベリタスの考えにルーカスは少し考える。


「確かに興味深い。君は果敢にリスクをとっているが、人命を本当に重んじているらしい。"西の国家らしい性格だ。"

だが安全策が必要だ。

こちら側の提案はこうだ———まず公開調査団を提案する。エル・メディス、グラディアの代表に、アルカノスの使節も加え、シルヴァリオンとシルヴォールへの同時に監査を要請する。

並行して、我が海軍は主要航路の封鎖と護衛を厳密に行う。小競り合いは起こり得るが、そのルールと範囲を事前に取り決め、逸脱には双方で制裁を課す。これにより、君の"長期で炙り出す戦術"を支える枠組みになるはずだ。」



ルーカスの案にベリタスも頷く。


「公開調査団か———悪くないな。公平性を担保するため、中立の都市国家の評議団を招くのもよいだろう。だが一つ、付け加えたいことがある。もしアルカノス側の関与が明らかになった場合、我が国はその責任を厳しく問う。私はアルカノスを尊重するが、いかなる者がエル・メディスへ害を為すならば、その者は容赦しない。そう約束していただけるか。」



その言葉にルーカスは勿論頷く。


「同盟国の行為に非があれば、アルカノスに対して厳正に対処する用意はある。だがグラディアもまた、証拠なきままに攻め立てられたくはない。互いに証拠を出し合い、第三者による検証を受けることを第一にしよう。もしその検証でシルヴァリオンの関与が確証されれば、我が国はその事実に基づき行動する。ベリタス殿の望む"容赦なき処断"については、状況を見て相応の手を取ろう。」



ベリタスは少し微笑んで会合のまとめを話し出した。


「わかった。では、まとめよう。


第一に、我らは全面戦争には踏み切らぬ旨を宣言するが、一定の武力衝突を演じる。


第二に、戦後、両国合同の公開調査団を立ち上げ、中立評議団を招聘する。


第三に、沿岸航路の警備を共同で強化する。


第四に、限定的な攻撃行動中は犠牲を出さず行い、捕虜の扱いは厳格に、膠着戦に持ち込み、痺れを切らした内部の間者を炙り出す。


最後に、検証により南派閥、または、シルヴァリオン・シルヴォールの関与が判明すれば、双方が連携して責任を追及する。これが私の提案の骨子だ。」



その内容はルーカスにとっても概ね満足いく結果だ。


「ベリタス殿、その提案は俺が望んだ"不要な犠牲を少なく事態を収める"路線と一致している。グラディアもこれを受け入れよう。ただし俺は一つ条件を付ける———俺が司令官として作戦の計画に具体的に関与し、間者を検出した際の制裁手続を"君と"共同で運用すること。互いに信用が足りない今、監視と手続きは争いを抑えるだろう。」



その条件をベリタスは承諾した。


「条件を承諾する。エル・メディス側も私が司令として共同作戦本部を密かに運用しよう。必ずや間者を暴き、真相を明らかにしてみせる。」



ルーカスは立ち上がり、手を差し出す。


「ああ、ならば盟約としよう。互いに冷静さを失わず、民の命を最優先に守ることを。」



ベリタスも立ち上がる。


「盟約とする。だが忘れないでほしい———僕たちが友であるなら、当然、裏切りを見過ごすことはできない。正義は時間を費やしてでも貫かねばならないからね。」



こうして短くも、綿密な会合は終わった。


互いの真摯な対応は彼らの間に確かな信頼を築いていた。





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