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異質


『その側に立てるなら他に何も要らなかった』


その者は光の側で安息を得た。

確かな幸福をその身に感じながら。



 ◇   ◇   ◇



バルトでの戦闘から1ヶ月が経過した頃



2人はアメリアと話していた同盟の締結のためにアルカノス城を訪れていた。



ルーカスとフィストリアは女王アメリアのところを訪れていた。


「おお、よく来てくれた。」



そう言って2人を歓迎したアメリアは護衛を下がらせると話し出した。


「ようやく、同盟の調印か。ずいぶん長かったように感じるな…アルカノスの王城周辺の整備が終わり、グラディアのバルトの方もどうにか復興できたらしいな。」



アメリアの言葉にルーカスが答える。


「ああ、どうにか元の様子を取り戻すことができた。」


ふいに女王は思い出したように話を始める。


「お主も戴冠が近いらしいな。忙しいだろうによく来てくれた。遺物の方はうまく使えているか?」



アメリアの言うようにルーカスは浮遊石を貰った。


ルーカスはふと浮遊石を使ってみた時のことを思い出していた。




 ◇  ◇  ◇




それはフィストリアが珍しくルーカスに甘えてきた夜から2日が経った頃のことだった。



朝から執務室でアルカノスとの同盟の件や戴冠式の件の仕事をして、ある程度終わりが見えてきた頃。


フィストリアが執務室に入ってきた。



「ルーカス、浮遊石の方はもう試してみましたか?」


そう言うフィストリアの目は輝いており、ここ最近はルーカスに浮遊石を試すように促していた。


彼女はやはり魔術系の物に目がないらしい。



ルーカスがフィストリア自身が試せば良いと言ったときには「私は自分で飛べるから違うんです。それにあなたが空を飛べるようになったら戦略の幅も増えますよ」と言っていた。



彼の机の上でぼんやりとした光を放ちながら浮遊しているガラスのような石を見つめながらルーカスは答える。


「すまない、まだ試せていないんだ。———いや、今から試しに行こうか。」



そう言ったルーカスにフィストリアは喜び、ルーカスの手を取った。


「良いですね。私が側にいるなら、もし事故があってもどうにかなりますよ。」



「事故がある前提のような言い方ははやめてくれ。」


ルーカスは強大な力を秘めている浮遊石に戦々恐々としながらも、そうして2人は城の中庭まで歩いて行った。



 ◇   ◇   ◇



ルーカスが浮遊石を使用した時感じたのはアルカディアと似た感覚がするというものだった。


これは最初に浮遊石に触れた時に感じたものだったが、使用してみるとその感覚は少し離れたように思う。



アルカディアはどうにも彼の手に馴染むのだ。


何年も握っていたような、自分の物のような感覚がするのだが、この浮遊石には厳密には感じない。



フィストリアはルーカスを見ている。


「ほんのり浮き上がりましたね。私と浮かんでいるときと同じ感じですか?」


「そうだな、確かに浮遊魔術のような感覚もあるな。足元から持ち上げられているような感じだ。」



「そうなんですね。やっぱり魔道具だっていうことが裏付けられそうです。周囲の物体を持ち上げることはできますか?」


ルーカスはフィストリアの問いに応えるように持っていたアルカディアを地面に置き、持ち上げようと意識しながら手をクイッと上げた。


するとアルカディアはぐんと空中に上がる。



ルーカスは指先で浮いたアルカディアを操作する。回したり振り下ろしたり、なかなか自由に動かせるようだ。



「これはすごいな。もう少し練習すれば手を動かさずにでも操作できそうだ。」


「良いですね。魔術を自分で構築しているわけではないので魔術に意識が削がれることはないですし、何十本もの剣を操って戦うこととか出来そうですね。夢が広がりますね。」



そう言ったフィストリアは次は質量と範囲の実験をするようだ。

そのために2人はまた別の場所に転移した。



 ◇   ◇   ◇



2人は王都から離れた荒地まで転移した。



最初にフィストリアの風魔術を見た場所だ。


「さあ、ルーカス。この辺りは誰の手も付いていない荒地です。最大限出力してみましょう。安心してください、もし暴走しても私が護ります。」



ルーカスは彼女の言葉に安心してしかし、無理のない範囲で試す。



円形に広がるようにすると半径300mぐらい離れた物までは浮かせることができた。


次に質量を試そうと正面の岩を持ち上げたとき、フィストリアは何かに気付いたようだ。



「あれ?今半径縮まりました?」



ルーカスは視線を外の方に向ける。先ほど持ち上げていた石が落ちている。


岩を持ち上げたままでは石を持ち上げれない。



「そうかもしれないな。質量を増やすと半径が短くなるのか。上手くできているな。」



フィストリアもそれを肯定する。



「どれくらいの質量と半径がどれくらい関係しているのかは要確認ですねー。」



ルーカスは正面の岩を持ち上げる。

先ほどのアルカディアのように動かしてみる。



ほとんど同じ速度で動かすことができるのを見てルーカスは驚く。


岩は直径4m程度のものだ。これをこの速度で移動させられるのはとんでもないことだ。



いわばルーカス自身が投石器のように岩を飛ばすこともできるのだ。



ルーカスはさらに動かしてみる。

岩自体に干渉できないか試してみると、砕けろと意識しながら体の前で手に力を入れて握ると確かに岩は砕けてしまった。


どうやら元に戻すことはできないようだが、こんな大質量の物体を自在に分解することができるのはフィストリアにも驚きのことだったらしい。



「え、そんなこともできるんですか。もうそれ浮遊魔術の域じゃないですよね。…もしかして、私が読めなかった文章の中に知らない魔術の構築も含まれているのかも…」


「まだまだ要解析ですね……」と考えだしてしまったフィストリアをよそにルーカスはさらに試してみる。


先ほどは円形に広げて半径300mだったのだが、長方形状に前に伸ばしてみる。


そうするとルーカスの眼でも見えないくらい遠くの物まで動かせる感覚がある。


ルーカスが試している横でフィストリアが顔を上げた。



「ルーカス、その遺物には多分、空間系の魔術が込められているのだと思います。」



「空間系と言うと転移魔術で使っている空間の圧縮などか?」


ルーカスがフィストリアに聞くと彼女は続けて話し出した。



「そうです。空間を圧縮することで岩を砕いたりしたのだと思います。なので転移魔術と同じ仕組みで遠くのものを引き寄せたり自分から移動することもできると思います。自分で試すのは失敗したとき大変なので物を引き寄せてみてください。試してもらえますか?」


ルーカスはフィストリアの言うことを聞き、先ほどの150m先の石を浮かせ、彼女が言うように間の空間を圧縮する想像を意識する。


すると、石は確かに目の前で現れた。



それを確認するとフィストリアは絶句してしまう。



「ま、まさか、本当に出来るとは…この遺物、本当にとんでもない力を秘めてますよ。私にも出来ない大量の物質の浮遊に、私にも出来ますけど、物質を引き寄せ、おそらく自分も移動することができる。こんなのを魔道具に収めるなんてどんな言語でどんな技量をしているのか分かったものじゃないですよ。」



魔術関係の物に目がない彼女が恐怖を感じるのも無理はない。


この魔道具は誰にでも扱えるし、やろうと思えば半径300mの人間を一瞬にして殺害することも可能なのだ。


「ルーカス、この魔道具は慎重に扱ってくださいね。特に空間魔術の方は…」



フィストリアの念押しにルーカスは了承する。

ルーカスも理解したのだ、この魔道具の恐ろしさを。




 ◇  ◇  ◇




アメリアの前でしばらく前のことを思い出していたルーカスは微苦笑しつつ彼女に答える。


「ええ、うまく扱っていますよ。」



アメリアはそれに満足して、調印のため場所を移動し始めた。


同盟の調印は滞りなく進んだ。


それはこのひと月の間アメリア女王が国内の意見をまとめ上げた手腕によるものでもあるのだろう。


パレドの凶行とグラディアへの恩。



何かとあったが、晴れてグラディアとアルカノスは同盟国だ。



いつか来るであろう西の大国との戦争。


そして続く北の大国との戦争。


それら大戦がどうなるかは分からないが、味方が多いにこしたことはない。



魔術師を多く抱えているアルカノスと手を組めたのは剣士が多いグラディアにとって喜ばしいことであった。



 ◇  ◇  ◇



調印が終わりルーカスたちはアメリアの祝宴に招かれていた。


アメリアは見た目は20歳だが、これは魔術の暴発の結果起こってしまったことだと聞いた。


彼女に女王としての威厳に溢れていたのにも納得だ。


威厳は普段の口調からも分かることだ。



今回の祝宴、グラディアからの使者はルーカスとフィストリアだけとなっている。



食事や酒をフィストリアと共に楽しんだルーカスの元をアメリアが訪れていた。


「楽しんでくれているようだな、2人とも。」



ルーカスはアメリアに言おうと思っていたことを伝える。


「アメリア女王、もう時期、俺の即位があるのだがその時に来賓としてグラディアを訪れてくれないか?転移魔術を使うため2日あれば足りるはずだ。」



「ああ、構わないぞ。お主の晴れ姿を見られることを今から楽しみにしておる。」



そうアメリアが返したところフィストリアが話出す。


「うふふ、そうですかあ、ルーカスも王様ですかあ…」



顔を赤くして酔った様子のフィストリアを見てアメリアは苦笑しながら話す。



「ルーカス殿、お主の妻はなかなか酒に弱いようだな。転移魔術で帰ることが出来なさそうなら部屋を用意するぞ?」



ルーカスも微苦笑しながらアメリアに頼みこむ。


「ああ、すまない、用意をお願いしても良いか?」



こうして2人はこの日の夜をアルカノスの城で過ごした。





翌日、アルカノスから帰った2人は戴冠のために準備を進めていった。


これはルーカスが王として即位する2ヶ月前のことだった。





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