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信頼



ルーカスは女王の救援という言葉だけでは相手の現状を把握できなかった。


アルカノスの現状というのも最近は大人しくしていたというものとフィストリアからの情報程度しかグラディアには入っていないのだ。



「救援と言うがアルカノスで何が起こったのか、俺たちは何も知らない。そちらで何があったのか教えてもらえないと判断しかねる。」



ルーカスがそう言うとアメリアは順を追って話し出した。



「アルカノスの王城はかつてのアンバラシア帝国の帝都に近くてな。我が国では彼の地の遺物がいくつか見つかることがある。余が女王となったのはちょうど新しい遺物が見つかった頃だった。」



フィストリアは自分の生家である帝国の名を聞いてやはり思うところがあるようだが、アメリアは関係なしに続ける。



「前王は病で亡くなった。残された王族は余と兄だけだったのだ。兄は魔術師の力に頼った領土の拡大主義的考え方をしていた者でな……」


アメリアは少し遠くを見るような目をしていた。それほど兄はどうしようもなかったのだろう。


「前王はそんな兄には任せられないと思ったのだろう。遺言による継承順位は余の方が上であった。それで余は女でありながら王となったのだ。」



兄の危険な思想は国を滅ぼすと前王は考えたのだろう。確かに魔術師の力は強大だが、それでも小国が大国に敵うほどの人員がアルカノスに居るわけではない。


そういったことから考えるとおそらく妹であるアメリアの方は宥和的な考え方なのだろう。



「先ほど遺物が見つかったと言ったな。その遺物は我が国の歴史の中でもおそらく最も強力な代物であった。それをアルカノスの城内の研究所にて解析しようとしたところ、物品の力が暴走してしまってな。それによってこの城、アルカノスの王城は浮き上がってしまったというわけなのだ。」



そう言って話に一段落つけた女王はルーカスに再び話す。


「先ほど見せてもらった魔術の腕、貴殿たちに物品を解析してもらってこの城を地上に降ろしてもらいたいのだ。」



ルーカスとフィストリアは話を聞いて理解する。救援というのは物品の暴走で浮き上がってしまった城を何とか下ろして欲しいということだったのだ。


しかし、2人には未だ気になることがあった。



「救援の理由は理解したが、アルカノスの軍がなぜグラディアに侵略に来ているんだ。」



そう、浮き上がった城が存在する理由は一旦分かったがバルトを攻め入ったことは説明がなかったのだ。



「それについては、余の兄が関係しているのだろう。兄は拡大主義的思想を持っていると言ったな。おそらく、兄がこの浮かんだ城を追うことに軍を率いて王都を飛び出し、グラディアに入ってしまった城を見て、これ幸いと侵略の建前にしているのだろう。」



侵略をしたい兄にとって今の状況はちょうど良かったと言うことだ。

他国の政治的な利権も関わった厄介な話になってきた。


女王の説明に納得することのできたルーカスは交渉の条件を呈する。


「分かった。だが、俺たちも慈善で国を助ける人間ではない。その話が本当ならばお前の兄には責任をとってもらう。そしてお前たちを助ける術もあるにはあるが、無条件で助けることはできない。今のお前たちには一体何が出せる?」



アメリアはルーカスの言葉に少しの間思案する。



「私は転移魔術を使えるので人だけ脱出させて、人のいないところで物品を破壊、城を落とすということもできます。出来れば物品の制御を取り戻してアルカノスに戻ろうと思っていますけれど…」



フィストリアの技術的には可能という物言いを聞き、アメリアは覚悟を決めたようだ。




「———分かった。余はお主の国に降ろう。」




その言葉に周囲では護衛たちの悲鳴が聞こえる。

だが、女王の瞳に諦めは宿っていなかった。


ルーカスもフィストリアも彼女の気概に瞠目した。



「このまま余の兄がお主の国を攻撃するならば、お主は結局これを皮切りに戦争に赴くだろう。アルカノスにはグラディアに対抗できるほどの国力はない。せいぜいが国を留めておくことぐらいだったのだ。」



「それが愚兄のせいで崩れるくらいならば、民たちに危害が出る前に国を明け渡してしまった方がいいと言うものだろう。」



女王の言葉にルーカスは答える。



「分かった。お前がそこまで言うのならばお前のところの民には一切の危害を与えない。それと———」




「———俺の国に降ると言うがアルカノスの領土は引き続きお前に任せる事にする。つまり、降る必要はない。同盟を結ぼう、アメリア女王。」



彼女はルーカスの言葉に目を見開く。



ルーカスは彼女の気概を見せられ、ここまで民を思う王の器があるならば、今のまま領土を任せる方が互いに恨みもないというものだと結論づけたのだ。



「それでお主は良いのか?アルカノスとして、それは願ってもないことなのだが。」



「ああ、構わない。グラディア王太子としての決定だ。」




女王はルーカスの言葉を聞いて玉座の上で頭を深く下げ、「———助かる。」と短く答えた。




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