第7話〜AIの黒の疑問と赤の捨て場所〜
朝早く、フォーマルな格好をしたオーナーと女上司が自動運転車へ乗り込んだ。
オーナー:「先輩、忘れ物はありませんか?ご祝儀やらスマホやら」
女上司:「えーっと…大丈夫よ!招待状もちゃんと持ってきてる!余興用の衣装もバッチリよ!」
車載AI (あいちゃん):「おにぃちゃん、おはよう〜今日は素敵な格好してるんだね!似合ってる!危険物さえ持ち込んでなければ最高だったのにぃ…」
オーナー:「あいちゃんおはよう、危険物は次から箱に詰めるから許してね。今日は部長の姪っ子さんの結婚式なんだよ。式場へ向かってくれる?」
女上司:「後輩くん!?…でも後輩くんに詰められるならそれもアリ…」
車載AI(男性音声):「マスター、ご結婚おめでとうございます。ご祝儀に新製品の乳酸菌飲料『決別!乳酸菌との縁』をお送り致しますね。」
オーナー:「話聞いてたか!?俺が結婚するんじゃないって言うか、その乳酸菌飲料、絶対結婚式には送っちゃダメだぞ!?乳酸菌飲料が乳酸菌と決別して大丈夫!?」
女上司:「後輩くんと結婚かぁ……ふへへっ」
オーナー:「先輩?何言ってんの?」
車載AI (あいちゃん):「ねぇおにぃちゃん。この危険物、途中の川へ捨てるルートにすると少し時間かかっちゃうけど、いいかなぁ?」
オーナー:「何分くらいかかりそう?」
女上司:「ごめん!大人しくするから、捨てないでくれるかな!?」
車載AI(男性音声):「マスター、もう離縁するのですか?それでしたらお悔やみに、もう一つの新製品『幸せの約束』をお送り致します。」
オーナー:「お前最近ポンコツに磨きがかかってない!?その乳酸菌飲料のチョイス逆だろうが!そもそもお祝いお悔やみ事に、乳酸菌配るシステム聞いたことないわ!!」
女上司:「私別れないからね!!」
オーナー:「付き合ってすらねぇよ!!」
車載AI (あいちゃん):「ねぇおにぃちゃん。このゴミ、処分場に持って行くなら、短い時間で寄れるルートあるけど、いいよね?」
オーナー:「あいちゃん、今日は気が合うな。」
女上司:「とうとうゴミ呼ばわり!?私可哀想すぎない!?」
車載AI(男性音声):「マスター、あと10分程で目的地に到着致します。忘れ物など無いようご確認ください。乳酸菌が足りないようでしたらコンビニをハシゴするのも辞さない構えです。」
オーナー:「お前の覚悟はわかったけど、ハシゴするつもりはないから安心して辞せ。」
女上司:「姪っ子ちゃん、綺麗なんだろうな〜楽しみだわ!」
オーナー:「あはは、ウェディングドレスは女子の憧れだって言いますもんね。」
車載AI (あいちゃん):「すごく綺麗なウェディングドレスみたいだよ!あいも憧れちゃうくらい!でもおぱんつさんが黒なのは、なんでなんだろうね?」
オーナー:「ちょっ…あいちゃん!!もう今後人様の下着の色とか暴露するの禁止!!どこから仕入れるんだそんな情報!」
車載AI (あいちゃん):「え〜…でもおにぃちゃんがそう言うならわかった…そこのゴミは人様じゃないから赤だって言っても大丈夫だよね?」
女上司:「きゃああああ!!ダメよ!?ゴミにも人権を!!」
オーナー:「そう言えば、赤先輩って余興やるんですよね?どんなのやるんですか?」
女上司:「…赤って言わないで…赤だけど…見たいなら言ってね?んっとね〜ネットで検索したら『絶対ウケる一発ギャグ』って言うのを見つけたんだ♪」
オーナー:「気味の悪い事言うな。……絶対ウケる…?」
車載AI(男性音声):「検索完了。全身白タイツ、ぴえん、と言うタグが付けられている動画の事のようです。動画を再生します」
オーナー:「え…こんなのやる気でいたの…?……先輩…社会的に死ぬつもりですか?」
車載AI (あいちゃん):「もうゴミじゃなくて「汚物」でいいよね?」
女上司:「え!?ダメなの!?これしか考えてきてないんだけど!?ねぇ!?後輩くん助けて!?」
オーナー:「あと数分で着くのに、どうしようもないでしょ!?もう普通に「てんとう虫のサンバ」でも歌いなさいよ…」
女上司:「じゃぁせめて後輩くん!一緒に「ロンリーチャップリン」でデュエットして!!」
オーナー:「え。普通にめちゃくちゃいやです。」
女上司:「前回の貸し。」
オーナー:「…今の若者誰もその曲知らねぇよ……」
続く