第6話〜AIの提案が時速30kmと2mm〜
取引先との待ち合わせまであと30分と言うところで渋滞に捕まってしまったオーナー。
オーナー:「うわー…待ち合わせに間に合うかなぁ…AI、目的地まで何分かかりそうだ?」
車載AI(男性音声):「マスター、今のままで行くと途中のコンビニで乳酸菌飲料の新製品『乳酸菌の策略失敗』を買いに寄って45分かかります。」
オーナー:「あの子達最近何か企んでんの?、って言うか寄り道しないからな?直行で行ったらどれくらいかかるのか聞いてるんだよ」
車載AI:「それでしたら少し遠回りになりますが別会社の乳酸菌飲料『秘め事だらけの乳酸菌』が売っているコンビニへ寄って50分かかります。」
オーナー:「いやだから寄り道しないって言ってんだろ!?乳酸菌より待ち合わせ優先!!その秘め事は今度暴くとして今は乳酸菌飲料はいらないの!!直行で!!」
車載AI(男性音声):「マスター、そんな斬新なルート検索なんてした事ないのでわかりかねますが…時間に間に合うようルートを進む提案はありますが、どういたしますか?」
オーナー:「お前の方が斬新だわ!!なんで乳酸菌飲料ありきのルートなんだよ!!そんな提案を待ってたんだよ!!で、どんな提案なんだよ?」
車載AI(男性音声):「はい、マスター。まずはこの四方を別車両に囲まれている状況を打破すべく『飛んで抜ける』と言うのはどうでしょうか?」
オーナー:「え!?何!?この車飛べるの!?すごくない!?そんな機能あったならもっと早く言ってくれたらよかったのに!!」
車載AI(男性音声):「もちろんですマスター。飛翔する場合加速して約200km/h、800mの距離が…」
オーナー:「今の状況でどうやってそんな速度と距離を確保するんだよ!!停止中に飛ぶんじゃねぇのかよ!!」
車載AI(男性音声):「では、全力で飛び上がり、別車を超えていくと言うのはどうでしょうか?」
オーナー:「なんか嫌な予感しかしないけど、どんだけ飛べるんだよ。」
車載AI(男性音声):「2mmほど」
オーナー:「それはそれですごいけどどうやって車飛び超えるんだよ!お前の中ではみんな1mm程度なのか!?直行で行ったら何分かかるのかを言えよ!」
車載AI:「乳酸菌飲料を買いに寄って…」
オーナー:「寄り道するなって言ってんだろ!!どこにも寄らずに目的地へ行けって言ってんだろうが!!もう時間がないんだよ!!」
車載AI(男性音声):「そこまで仰るなら…仮に普通に考えたらあり得ませんが乳酸菌飲料を買いに寄らず、目的地まで行った場合到着まで28分かかります。」
オーナー:「くっそ!待ち合わせまであと22分なのに…なんとか間に合う方法はないか!?」
車載AI(男性音声):「このままオーナーが降りて走れば20分で到着致します。」
オーナー:「それならギリか…仕方ない!行ってくる!」
車を降り走り出したオーナー。
車載AI(男性音声):「ですがマスターが時速30kmで走り続けた場合ですので非推奨です。一番現実的な対応は……マスターの生体反応消失。自動対応モードに切り替えます」
〜50分後〜
オーナー:「ハァ…ハァ……死にそっ……何が…20分で着く……だ…」
女上司:「後輩くん!何してんのよ!」
オーナー:「ハァ…ハァ…せ、先輩…なんでここ…カハッ…」
女上司:「車載AIから電話があって、あなたが間に合いそうにないから近くにいた私に対応求めてきたのよ!なんでちゃんと連絡しないの!取引先とのお話は無事済んだわよ!」
オーナー:「マジ…ですか…たすかりました……」
イヤホンAI(男性音声):「マスター、わたしの話を最後まで聞かないからです。」
オーナー:「すまん…今回ばかりは助けられたな……先輩もありがとうございました…」
女上司「貸し。だからね?」
オーナー:「お手柔らかにお願いします…」
イヤホンAI(男性音声):「わたしにもですよ?乳酸菌飲料1年分で良いです。」
オーナー:「ったく………ん?…なぁ。なんで俺が出て行ったあとすぐにこのイヤホンで経緯を説明しなかった?」
イヤホンAI(男性音声):「……その手があっ…ゴホン。乳酸菌飲料1日分で手を打ちましょう。」
オーナー:「……ポンコツAIめ…」
続く